第47話 乾燥ペットのおやつは、獣人にも美味しいんです!
風呂上り、兄の居住空間に行く前に牛乳を飲みながら【ネットスーパー】で当時買っていたお店を探すと直ぐ見つかった。
それなりにお安い値段であらゆる犬のおやつや猫のおやつが売っている。
そこで目に着いた【超徳用バリューパック! 大型犬、多頭飼いにぴったり!】と言う文字に反応した私は、それを1つポチった。
すると段ボールが届き、中を開けると『ささみ・豚耳・すなぎも・牛肉・骨・七面鳥・馬・牛皮ガム・とさか・ササミ・魚』が入った、如何にも大型犬とかが好きそうなのが大量に!
「お試しにしては良いかも知れにあわね」
「凄い香りですね、食べたことない香りです」
「乾燥したお肉食べるのは、初めて?」
「はい!」
「旅の間も食べて無いものね……」
普通の人間の冒険者なら、干し肉とかそういうのがあるんだろうが、獣人の場合は余り塩分を取れない為干し肉なんかは食べられないという知識はある。
これは無添加だし、多分塩はそう使っていない筈。
ならば、皆さんで食べて貰うしかあるまい!
「大丈夫だと……思う! これを食べて美味しければ、売ってみない?」
「え! 乾燥したお肉をですか!?」
「携帯お肉にピッタリじゃない?」
「確かにそうですが……」
「物は試しよ、お兄ちゃんたちの所で食べ比べしましょう?」
「はい~!」
こうして段ボールをサトリちゃんが持って行ってくれて、兄の居住空間に入ると、やはり嗅ぎなれない匂いがしているようで、お爺ちゃんがいち早く反応してやってきた。
「なんじゃ? 匂ったことのない肉の香りが……」
「美味しそうな香り?」
「そうじゃな、旨そうな香りじゃ」
「ふむ、お爺ちゃんには旨そうに感じるのね。サトリちゃん的には不思議?」
「いえ、旨いかどうかは食べてみないと分からないですが、かなり興味を引かれる匂いです」
こちらも良好。
机の上にドサッと中身をだすと『ささみ・豚耳・すなぎも・牛肉・ウナギ骨・七面鳥・馬・牛皮ガム・とさか・ササミ・魚』の入った袋があり、それを1つずつ開けていく。
すると――涎が出て思わずじゅるりと音を立てるサトリちゃんとお爺ちゃん。
これは期待出来そうである!
「どれでも気になったのから食べてみて?」
「いいい、いいんですか~?」
「ワシはこれじゃ――!」
「ああん! 全部食べないで下さいよう~!」
と、食べ始めた2匹。
姿は既に保っていられなくなったらしく獣人から獣の姿に変わっているサトリちゃん。
ガリガリと食べ始めた姿を、私と兄、ヴィーザルは無言で見つめる。
何というか無我夢中、魔獣まっしぐら。
「硬いですけど、噛めば噛むほど味わいが……」
「噛むほど旨味があふれ出すのう!」
「……カオル、此れは?」
「ネットスーパーでゲットした、あちらの世界のペット用のおやつです」
「なるほど」
「不思議なものが売ってあるんだな……」
「馬の干し肉も売ってました」
「……俺への当てつけか?」
「流石に買いませんでしたよ」
「買わないでくれ。こいつらに狙われたくない」
切実な声に私も頷きつつ、私と兄とヴィーザルの3人はクッキーと牛乳でおやつタイムを味わいつつ、サトリちゃんとお爺ちゃんがウットリした表情で、美味しそうに食べている姿を見ながらおやつタイムを楽しんだ。
「は~~……。干したお肉なんて、乾燥したお肉なんて……って思ってましたけど」
「旨いのう……」
「俺も食べてみよう」
「え、お兄ちゃん大丈夫?」
「俺の味覚は獣人と同じだからな」
「そ、そうか」
そう言って遠慮なく口にした兄は、暫く目を閉じてカジカジしていたけれど……。
「……うん、悪くない」
「悪くないんだ」
「寧ろ、冒険者ギルドに卸していいかも知れない」
「そこまで!?」
「数量限定で卸してみたらどうだ? 納品は月に1,2回にすればいいだろう?」
「でも、それだと何処かをホームにしないと」
「それならウエスタン領だろうな。フェンリル教会の事もあるし」
「なるほど。ならヴェンさんに売り込みますか」
「ああ、定期収入があれば孤児院も助かる」
「……女神化しません?」
「商売から得た金と言うのは変わらない」
確かに……。
それに毎回売りに出して置けばそれはそれで……行けるかもしれない。
「分かりました。ヴェンさんに行って卸させて貰えるようにしますね」
「そうしよう。あと、商品だから商業ギルドにも通そう。両方通さないとダメな話だ」
「うう、ややこしい……でも頑張ろう」
こうして、私の僅かな好奇心により1つの商売が決まった。
ついでだしサッサとしてしまおうという事で、先ほどの段ボールを50箱程用意して向かうと、商業ギルドでは自分たちの所で犯罪者を出したことで挽回したいらしく、直ぐに許可が下りた。
そして冒険者ギルドのヴェンさんはと言うと――。
「干し肉……というか、乾燥した肉なぁ」
「お試しで食べてみてくれません? 無論職員の方もどうぞ」
「では1つ」
「僕も」
遠慮が無い冒険者ギルドの職員さん。
慌てたヴェンさんも乾燥肉を口にし「ん?」と眉を寄せると、噛んでいる間に旨味が出たことに驚き、浸しらガジガジしている。
「……どうです?」
「旨いな……。いや、普通に旨いな……」
「これ、冒険者に売れると思いません?」
「良いだろう。定期的に卸してくれれば助かる」
「分かりました。用意が出来次第卸すように持って来ますね」
「おう」
そう、直ぐ売りたいけど売れない事情があるのだ。
それが――【乾燥剤問題】である。
付与魔法で袋に【乾燥付与】しないと入れても使えないのだ。
安い布は何とかなりそうだが、乾燥付与の数となると面倒である。
「まぁ、明日50個用意しますね」
「早めに頼むぜ」
「了解です。出来上がり次第持って来ます」
こうして定期的に収入を得る事が出来るようになり、乾燥付与つきの乾燥お肉や魚、骨と言う事もあり、少しだけお高い値段だが売れる事を祈る。
その後居住空間に戻って袋に【乾燥付与】して貰ってる間に、ミラーちゃんに晩御飯の準備をして貰い、黙々と作ってアイテムを入れる作業を繰り返した。
翌日から冒険者ギルドにてペットのおやつ……ではなく、携帯用食事販売が始まった訳だけど、結果は良好!
口伝てで冒険者のみならず、一般獣人にまで広がるのにそう時間は掛からなかった。
結果どうなるかというと――。
「カオル! 乾燥フードとかやらを100個用意してくれ! 毎日100個!」
「無理ですよ!」
大盛況しまくって販売に「数量限定早い者勝ち! 次の入荷は〇日です!」と言う注意書きを書かねばならない状態になるのだった――。
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