第45話 囮調査で分かった事と、その後の処遇

 数名の騎士は私たちについてきて、隠し扉を開けて中に入り地下へと駆けおりていくと鉄格子が!

 カギが無いと開けられないかと思ったら、サトリちゃんが力任せにドアを引っ張って壊してくれた。

 これにはドン引きする兵士達だったが、中に入ると子供3人が蹲っている。



「大丈夫ですか!?」

「「「!」」」

「助けに来ましたよ~」

「たす……け?」

「助けてくれるの!?」

「勿論ですよ!」

「後で何があったのか教えてくれると助かる」



 そう口にすると兵士の一人が笛を吹き、その音は外まで響いたようだ。

 兵士が1人ずつ子供を抱えると外に出て怪我がないかの確認を急ぐ。どうやら目立った外傷はないようだ。

 先程の部屋に戻ると、床に押さえつけられているオッサンがいて……。



「嗚呼! 商品が……」

「ブルースター伯爵が人身売買に関与していたことはこれで判明したな」

「よし、牢屋用の馬車に入れてこい! ブルースター伯爵の子供と逃げようとした妻もだ。後は別室に居た商業ギルドの奴らも連れていけ! 後は屋敷の調査だ!」

「はい!」

「カルシフォン様とカオル様、そしてサトリ様はこの後、カドミル様のお屋敷までご同行願います」

「分かりました」



 そう会話をしてからやっと自分が嵌められていることに気づいたんだろう。

 オッサンは「貴様ら囮だったのか!?」と驚いていて、子供二人は大きく溜息を吐いた。



「囮も何もないでしょう? 神格持ちに手を出した時点で我が家は終わりです」

「神の采配を待つしかないな……」

「神格……持ち?」

「それすらも父上には見えなく、感じなくなったのですか? どこまで悪行を積み重ねたのです?」

「……」



 義理とは言え子供たちにそう言われて呆然とするオッサンには悪いけれど、私たちは兵士に案内されるがまま外に出てヴィーザルとお爺ちゃんと合流してからカドミル様の屋敷に向かった。

 兵士が大きな娼館に突撃して行ったので、恐らくそちらも捕まるだろうし、娼婦にされた子供たちも助かると良いんだけど……。


 カドミル様のお屋敷にて待つこと1時間程、その間サトリちゃんの怒りは収まらなかった。

 自分を娼婦にしようとしたことに対してもだが、私に対しても娼婦にしようなんて言っていたのだから、そりゃもう怒り爆発ですよ。

 それに連鎖して周囲も怒りが絶賛爆発中です!



「私とカオルちゃんを何だと思ってるんですか! 本当厭らしい!」

「全くじゃな!」

「でも おっぱいは 至高」

「アンタ 黙って」

「ハイ スミマセン」

「そもそもカオルより美人なフェンリルがいるのかと思っていたが……やっぱりいないな。あの程度のフェンリルが美人だと? 鼻で笑ってしまう」

「やはり神々の子供出ないと美男美女にならないんですかねぇ?」

「母上が極上の美人だからなぁ……」

「美人さんだからこそ娼婦にっていわれたんですよ~!?」

「サトリちゃんも美人だもんね!」

「嬉しいです! けどそれとこれとは話が別ですー!」



 こうして盛り上がる事1時間が過ぎてそろそろ1時間半になろうかという頃、ドアが開きカドミル様が入ってきた。

 姿勢を正し話を聞くことになったのだが――。



「現在、縛り上げて自白剤を飲ませ、どこの貴族に誰を売ったのかを吐かせている。一人ずつ分かった時点で兵を送り助けている最中だ。ケガをしている子供も多いと連絡が来ている……。誰か回復魔法を使えないだろか?」

「私が使えます」

「おお、助かる! 直ぐに屋敷にて治療を行う予定だ。治療をお願いしたい」

「だが、回復魔法で身体の傷は癒せても、心の傷までは癒せないぞ」

「ええ、存じております。それでも綺麗な身体に戻れば、少しは心が軽くなるでしょう」



 確かに誰かに傷つけられた皮膚を見て悲しむよりは、綺麗に治ってしまった方が良いのは確かだ。心情が悪化する傷を何時までもつけていることはないしね。

 問題は娼婦になった子供たちだが……こちらはどうすればいいのだろうか。

 そう問いかけると、子供たち全員にカウンセラーを付ける事になっていることを教えて貰い、ホッと安堵した。

 カドミル様は子供たちの味方なんだね。



「それで、名前も知らないブルースターのオッサンや他の人達は?」

「人身売買をしていた事は知っていたらしいが、義父に口止めされていたらしい。学校が始まっているのに子供たちが家に居るから近所では可笑しいと思われていたようだ。恐らく子供達が外で話さないように隔離していたんだろう」

「なるほど」

「子供二人は悪には染まってなかったのね」

「問題は妻の方でな……。娼館の話に乗り気で契約をしていたのも母親の方だった」

「最悪ババア」

「全くだな」

「今回の処置で随分と貴族たちが捕まりそうだ。爵位を取り上げか、降格か……。貴族でいても男爵止まりになるのが精々だろうが、庶民になる者も多く出るだろう」



 それでも、伯爵から男爵まで落とされれば、今まで通りの生活なんて出来ない。

 いい案だとは思うけどな。



「ブルースター伯爵はどうなりますか?」

「爵位を男爵迄爵位を下げて、まだ幼いがフェンリル兄妹が跡を継ぐ。元伯爵とその妻は断頭台だな」

「なるほど、それでいいかと思います」

「商業ギルドはなんと?」

「商業ギルドマスターはいたくお怒りでね。既に5人の関与が解って既に解雇済みだ。彼らは鉱山労働に一生尽くして貰おうと思っている。罪人としてだがね」



 色々どうやら進んでいる様だ。

 幸い人間の国に売られた子供がいなかったのは助かったが、そこまでのパイプは持っていなかったのだろう。

 このままいけば、もしかしたらあったかも知れないけれど、そこを潰せたのは良かった。


 ――その後。

 子供たちが次から次運び込まれ、私は回復魔法で子供たちを回復していった。

 それでも精神的ショックから寝込んだり熱を出したりする子供が多く、回復魔法では治せない所だったので、そこはカドミル様に話して街医者を連れてきて貰いカウンセラーもついでに来て貰ったようだ。



「まだまだ混乱は続くだろうが、君たちに感謝している。ありがとう」

「どういたしまして!」

「また進展がありましたらご連絡を」

「ああ、有難う。一応この際だ。膿はすべて出し切って居たいので、カオルよ、すまないが人間が紛れ込んでいないかどうか……」

「畏まりました、テラスお借りします」



 こうして、最期の仕事にと『星泣きの雫』を使い、後の事はこの国の兵士が何とかしてくれるだろう。



「では我々は一旦孤児院に戻ります」

「ああ、報酬は後日連絡して届けさせよう」

「ありがとうございます。でも、報酬は出来れば孤児院に俺達からという事で渡してあげてください。現在フェンリル教会を俺が運営している状態なのですが、代理としてシスターマーガレットにもお願いしているので」

「おお、そうでしたか! 分かりました、必ずお渡しいたします」



 これにて問題は解決!

 残るはお爺ちゃんとサトリちゃんのストレス発散ね!



「問題が片付いたら~! ダンジョンに行くって約束でしたよねー!」

「うん、明日丁度休み取ってるし、行こうか!」

「はい!」

「楽しみじゃのう!」



 ――さて、明日はうちのレジェンドたちに暴れて貰いましょうか!

 どれだけドラゴンの肉が溜まるか、楽しみです!

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