第33話 オーガのお肉も捨てがたいが、魚も食べたい

 オーガのお肉……じゃない、オーガの巣くう場所はオークの場所より少し西へ行った場所にあった。

 オーガは攻撃力が高く防御力も高いとされていて、戦うのには中々苦労する敵でもあり、Bランクからの依頼となる。

 私たちはまだFランクの駆け出しだけが、その強さを良く知るマドナさんは最早諦めきって「肉が欲しいなら倒してこい」と言ってくれたのだ。

 私たちなら問題ないと思ってくれたんだろう。


 何せ私たちモフモフPTですし!

 獣人にはなれるけど、全員モフモフですし!

 お爺ちゃんとスライム2匹はモフモフじゃないけど!

 馬は……モフに入る?

 ちょっと謎だけど、まぁモフよね!


 集落まで到着すると、いる。お肉が。



「ああ、こんなにお肉が一杯!」

「これだけあれば、どれくらいの肉が手に入るかのう?」

「実は昨日試作した肉まんのお肉、オーガのお肉買ってきて作ったんですよ」

「「「倒そう」」」

「食べ物が絡むと 欲深くなる わね」

「僕は そんな カオルが 大好きだ」

「うふふ、ありがと!」

「じゃあいつも通りの戦法で行こう」

「「「首・ちょん・パー!」」」



 そう言って駆けおりる私たち一行。

 敵襲を知らせる音が鳴るがそんな事は知ったこっちゃない。

 私たちが求めるのは今そこにいるお前たちの体と言うお肉だ!



「斬鉄剣!」

「風きりの刃!」

「風神の爪!」

「オーリハールコーン!」



 相変わらずえげつない戦力。

 そりゃヴィーザルと兄妹以外はレジェンドモンスター。

 オークもオーガも格下の相手なのよね。

 そう思っていると魔法を使えるオーガもいるらしく、お爺ちゃんに一発当たったが無傷だ。



「ほう、魔法が使えるのか。ほう、ワシを狙うか。ほう?」

「お爺ちゃんお手柔らかに」

「お肉は焦がさないで」

「切り刻む、のは、ええんじゃな?」

「そうね」

「サイクロンじゃあああああああ!」



 途端竜巻が一気に集落を襲い、巨体のオーガも木造の家も何もかも吹き飛ばしていく。



「「「お――……」」」

「魔法っちゅーのはこういうのを言うんじゃ。よーく覚えておくがええ」



 巻きあがった竜巻が消えて地面に叩きつけられていくオーガたち。

 最早生きている者はいないだろう。

 その時オーガキングが現れ、雄叫びを上げつつこっちに来たが――。



「オーリハー、」

「斬鉄剣!」

「あ! 僕 倒したかった」



 オリハルコンで倒そうとしていたラテだったが、いち早く動いたのはヴィーザルで、オーガキングの首を吹き飛ばすと、此れにて私たちの仕事は一先ずは終了。

 首は兄のアイテムボックスに、胴体は私のアイテムボックスに入れ込み、取り敢えず全ての作業が終わったところで兄の居住空間からイエスタへと帰る。



「なんかこう……流れ作業というか」

「ワシらが強すぎるんじゃ」

「これだと、各自にアイテムボックスを買って倒して貰いつつ、カオルは料理をしていた方が早いな」

「そうかも。いや、食べ歩きはしたいけどね!?」

「でも、肉ばかりも飽きるのう」

「お爺ちゃん贅沢ねぇ」

「そうですよ! お肉こそ至高です~!」



 でも、お爺ちゃんの気持ちもわかる。

 お肉ばかりだと飽きる。

 違うたんぱく質……魚が欲しい。



「刺身」

「さしみ?」

「食べたいなー。フェンリルでも食べられるのかなぁ」

「ワサビを抜ければ食べられるんじゃないか?」

「なるほど」



 食べたいのは色々ある。

 ホッケの一夜干し。焼いて食べたい。

 いや、これはもう作るしかない。

 私の胃は正に、今、魚を求めている!

 オーガ倒したばかりだけど!



「魚の魔物っているのかな」

「クラーケンとかか?」

「うーん、それも一応魚ではあるんだけど」

「カオルは魚介類が食べたいって言ってるんだろう? 今度行こうとしているカスタニア領は海に面しているぞ」

「行きたい!」



 海の恵みを堪能したい!

 絶対食べ歩きしよう!



「猫獣人が沢山住んで居る場所らしい。流石海のエリアだなと思うぞ」

「へぇ~!」

「自由気ままな住民が多いからのう。それが苦手じゃと言うものも多い」

「なるほど」

「それに奴らは群れる生き物を馬鹿にする性質がある。今でこそだいぶ落ち着いているとは聞くがのう……。特にヴィーザルは恰好の餌食じゃろうな」

「え?」

「馬は群れを作って生きるからのう」

「ああ……なるほど」



 馬はとても愛情深い生き物だと聞いている。

 例え足が折れても、落馬した騎手の元へと這いずっていこうとした馬もいると聞いたことがあった。

 愛情深い……か。



「ヴィーザルも愛情深いの?」

「え!」

「いや、馬獣人だからそうなのかなって?」

「どうだろうな……。俺は親の愛情も家族の愛情も貰ったことが無い」

「でも、馬獣人と言う事は、愛情深いんだろうな。そこは妥協点か」

「カルシフォンにそう言って貰えるなら有難いがな」

「ははは、だがカオルを任せるにはまだまだだな」



 バチバチバチ! と二人の間で火花が散っているように見える……。

 言うて、私まだ10歳に見えるか見えないかくらいの幼子ですよ。

 ヴィーザルは17歳くらいに見えるけど、兄と私は10歳くらいの子供にしか見えませんよ。

 まぁ、リアルでも7歳差くらいならまぁ……よく聞いたかな?

 あちらの世界では……だけど。

 神々からすれば数百年単位で年が離れていても微々たる問題らしいけど、どうなんだろうなぁ。


 そんな事を考えながら冒険者ギルドに到着すると、直ぐに解体場所に連行……ではなく連れて行かれ、ドサッとオーガを出した。

「今日も徹夜だな」とぼやく解体の人には申し訳ないけど、頑張って貰いたい!

 倒したのはお爺ちゃんだけみたいな形に今回なったけど!



「なんか酷くズタズタなオーガばっかりだな」

「ええ、オーガの一匹がお爺ちゃんに魔法をぶつけまして」

「ほう? 爺さん大丈夫かよ」

「ワシャ無傷じゃ。中途半端な魔法だったものでな。魔法たるやこういうものじゃと教えてやっただけじゃ」

「そうだね。オーガもオーガの集落も全部巻き込んだ凄いサイクロンだった」

「……首と胴体が繋がってるのは、その時死んだオーガ達か」

「そうなります~。お爺ちゃんって凄かったんですよ~? うふふ~」



 嬉しそうに語るサトリちゃん、顔面ヒクヒクさせているマドンさん。

 気持ち解らなくはないけど、まぁ、そういうもんだよね。



「解体に1日は掛かる。明日の朝来てくれ」

「はーい」

「それと、冒険者ランクをSランクにもうお前等上げておくから……」

「やったー!」

「でも、急に上げていいものだろうか?」

「神格持ち、神、レジェンドモンスター4匹。これでSじゃなかったらなんだ?」

「それもそうだな」

「確かにな」



 こうして私たちは輝かしいSランク冒険者にもなったし、「試験は?」と聞くと「試験官を殺す気か?」と言われた為、試験は無いらしい。

 解せない気持ちにはなったけれど、ラテちゃんが「オーリハールコーン」したら不味いので頷いておいた。

 さて、明日まで時間は出来た。

 そろそろ孤児院に1か月分のお金を入れに行かねば。


 その為、身ぎれいにしてから一端孤児院に行ったところ――。


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