第31話 さぁ命を捧げよ! 肉を捧げよ!

 そうと決まれば、まずは手始めに拠点が3か所欲しい。

 イエスタから近い領地で、問題のない領主がいる所となると……ウエスタン領、オスタニア領、カスタニア領の3つだ。

 ウエスタン領、オスタニア領、カスタニア領の孤児院で契約を結び、賃貸として間借りする事をまずは優先して、それからの台車を使った料理提供をコツコツしていこう。

 領で何が売れるのかもリサーチしたいしね!


 無論冒険者生活も辞めない。

 お肉調達には欠かせないのだ!

 だがまずは――イエスタ領にあるオーガ集落の襲撃と、オーク集落の襲撃からね!


 思い立ったが吉日って言葉は本来違う意味らしいけれど、思い立ったが早いのよ。

 その足で冒険者ギルドに向かい、マドンさんに「オーク集落とオーガ集落の討伐依頼ありませんか?」と聞きに行ったら、難攻している場所が2つあるとの事で受けた。



「やけに勢力的だな! 俺としては嬉しいが」

「これから暫く違う領に行く準備をするので、その間にお肉の調達を」

「あ――、なるほど」

「ドンドン欲しいんで!」

「分かった! その代わりドラゴンの解体はなしだぞ」

「ケチ。1体くらいいいじゃない」

「この1体捌いただろう」

「しょうがないなぁ。じゃあオークとオーガはしっかりと量を取ってもお願いしますね?」

「こええな……」



 こうして兄たち全員と難攻しているというオーク集落とオーガ集落へと向かう。

 何でも砦を作って落ちにくいんだとか。

 それなら私の文字魔法で何とかなりそうだし、後は叩き潰すのみよ!

 オーク集落とオーガ集落はイエスタから5日の距離にあり、そう遠くはないそうなので、全速力で走りつつ居住空間で夜は休みご飯で力をつけて更に進む。

 全速力で走れば3日で到着! 確かに難攻不落の砦のようなモノを作っていたので、文字魔法でぶっ潰すことにした。



「【火炎爆発】」



 途端砦はドガ――ン! と言う音と共に燃え上がり、オークたちが慌てて出てきたところでバフをかけていた私たちが突っ込む。

 オークやオーガくらいならなんてことは無い。

 そう、ドラゴンエリアやキメラと戦った私の敵では無いのだ!



「あまり傷を付けたくないから首・ちょん・パーで行こう!」

「オークの頭を後で集めるのも大変そうだが仕方ないな」

「オークとオーガの牙はそれなりに売れるからな」

「首拾いは 任せて」

「僕も 首・ちょん・パー しちゃうぞー! オーリハールコーン!」

「ワシは隠密で奥の方を探してくるわい」

「お願いね~」



 と、ワラワラでてきたオークたちをたちまち首・ちょん・パーしていく私たち一行。

 余りにもすんなり首を刎ねていく為、オークたちは大混乱。

 オークジェネラルとか色々出てきたけど関係ない。

 全員もれなく、首・ちょん・パーなのである。


 私は空中飛行しながら【周囲首狩】と文字を書いてバッシュバッシュぶっ飛ばしていく。

 此れではどっちが敵か分からない状態である。



「ふははは! 君たちは美味しいお肉になるのだ! さぁ命を捧げよ! 肉を捧げよ!」

「どっちが 悪魔か 分かったもんじゃない」

「カオル楽しそうだな」

「エキサイティングですね!」

「首だけを狙う斬鉄剣は難しいな」

「おーい、奥からオークキングがおでましじゃぞー」

「「「はーい」」」



 そう語ってたらズドンズドンと今までのオークの3倍はありそうなオークキングが洗われ、雄叫びを上げてやってきたけど――。



「首・ちょん・パー!」



 と、ラテちゃんのオリハルコンでザシュっと一発。

 オークキングはなすすべなく倒れた……。

 最高級のお肉、有難うございます!



「大収穫よ~!」

「さて、首はスライム2匹に任せてワシらは」

「大量にあるオークをまずはアイテムボックスだな」

「50体はあるぞ」

「オークキング入れたら51体ね。ドンドン入れてこう」



 こうしてアイテムボックスを開きオークの首は兄のアイテムボックスへ、身体は私のアイテムボックスに投げ込んでいく。

 一時間半もすれば後は撤収。

 一端イエスタに戻り、お肉とクエスト完了を言いに行くのだ。

 兄の居住空間から孤児院に飛び、そこから冒険者ギルドに到着すると「早かったな」と言われたが、解体エリアにドドン! と51体のオークキング入りの首と体を出すと、解体作業の人員が「今日は徹夜だな……」と呟いていたのは聞かなかったことにしよう。



「お肉だけ欲しいんで、後は買い取ってください」

「は――……。オークなら牙と玉くらいしか価値が無いが……まぁ、良いだろう」

「解体料金足りないならお渡ししますよ」

「そうしてくれると助かる……」

「じゃあその分後で教えてください。なんだったら銀銅プラチナで支払っても良いですよ」

「そっちの方が……ありがてぇな」



 こうして倉庫に移動して、少し色を付けて鉱石を出すと、「これだけあれば多少冒険者ギルドの出費も落ち着くだろう」と言われたのでホッとする。



「明日まで解体には時間が掛かる。明日の朝取りにこい」

「はーい。時にマドンさんはオーデンのお肉なら何がお勧めですか?」

「そりゃオークかオーガ肉だろう」

「納得です」

「まさか、その為に?」

「んふふ、まだ予定ですけど期間限定のお店を開きたくて!」

「なるほどな」

「カオルの作るオーデンは美味しいですよ」

「移動中に食べたけど美味しかったねぇ~!」

「そのオーデンを出す予定なので、頑張ります!」

「おう、頑張れ!」



 後はクエスト完了の料金を貰い、居住空間に戻って身ぎれいにしてから、今日はゆっくりと各自部屋で過ごすことになった。

 おでんはまだあるし、蒸し料理も作りたいな。

 となると……肉まん。

 でも2つ同時は難しいから、期間限定で交互に出すのも良いかもしれないけど……。



「大鍋で作れるってなると、簡単なのはおでんなのよねぇ」

「朝のイエスタの食事は萎えるのう……」

「体を温める料理が欲しいですよね~」

「お肉も野菜も入ったスープ系とか作れんもんかのう?」

「作れますよ? 寧ろ簡単に」

「朝はスープ系を出しても良いかもしれんな」

「となると、ポトフか?」

「そうなりますね」

「「「ポトフ?」」」

「今度作りますね」



 こうしてマッタリ過ごしながら、兄は彫金を、私は付与を行いつつ生産もする。

 商業ギルドに卸す為だ。

 寒さ厳しくなる時期だし、兄が作ったブレスレットに【温熱付与】をすると、ジンワリと体が温かくなる。

 これは成功では?

 こう、身体が程よいホッカイロで温められているみたいな。



「【温熱付与】は寒さ厳しいイエスタには良いかもしれないな」

「確かに武器を持つ手も寒くなってきたな」

「なら最初の1個はヴィーザルにあげるよ」

「いいのか?」

「ドンドン狩りつくして欲しいからね!」

「肉の為か……」



 ガックリと肩を落とすヴィーザルには悪いが、私の頭は今肉で一杯なのだ!

 お肉こそ正義! スープでも肉は使うしね!

 あ、でもポトフにはソーセージが欲しい! こればかりは【ネットスーパー】で買うしかないか……。

 業務用買っておけばいいでしょう。


 ネットスーパーはこちらのお金でチャリンとチャージすれば使えるので、欲しい調味料がある時とかとても重宝している。


 うん、やはり調味料は前世の世界のモノに限りますよ。

 化学調味料は癖になる……ふっふっふ。


 そんな事を考えながら【温熱付与】をしていき、それなりに溜まったところで商業ギルドに持って行って、【温熱付与】の特許を取らせて貰い、アイテムも高値で売れた志幸せな時間を過ごした翌日――。



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