第30話 阻止しろ女神化! 商売の為の第一歩!

 夜から皆で街に繰り出し、美味しそうな店を2軒回った。

 これから寒くなるというイエスタでは煮込み料理が多く、オーデンと言うおでんのようなモノが各店には置いてあって、味の違いを楽しんだし、肉筋を煮込んだモノも柔らかくとてもおいしかった。

 その3つを食べたらお腹いっぱいになってしまったけれど、兄たちはそれに串焼きを頼んで食べていて、それも美味しそうだった。



「どれもこれも旨いには旨いが」

「ですねー」

「イマイチじゃな」

「嘘でしょ!? あんなに美味しいのに!」

「高級なドラゴン肉で舌が慣れ切ってしまっているのかもしれないですねぇ」

「何よりカオルのご飯は」

「旨い」

「旨いんですよねぇ」

「うむ、ウマウマじゃな」



 どうやら皆さん、高級なドラゴン肉で舌が慣れ切ってしまっている様子。

 むむむ……こんな所で弊害が!



「なら、ドラゴン肉は減らさないとですね……」

「いやいや! カオルが食べ歩きしたいというのは前々からの希望だったからな。付き合うよ」

「うんうん! それに新しい味とあって、また料理の幅が広がるかも……」

「それはいいな……」

「カオルの料理の幅が広がるなら、いくらでも付き合うぞい!」



 解せぬ。

 やはり店で食べた料理の方が断然美味しいだろうに。

 家庭料理しか作れない私とは違って、美味しいのに!

 とは言え、付き合ってくれるなら付き合って貰おうと気持ちを切り替えた。


 今の所イエスタでしか食事をしていないが、朝はとても軽めで、大体どこの店も同じものを出す。

 それだけが私には納得いかなかったのだ。

 せめてフィッシュアンドチップスくらいの者が出ればいいのだが、毎回決まって肉を食べる獣人には厚切りハムのようなステーキ、草食獣ならサラダのみ……と言うのがなぁ。


 日本人だからだろか。

 納得がいかない!


 昼は露店の串焼きが主流の食事の様で、沢山の露店が並ぶ。

 草食獣人たちはそこでスムージーなんかを飲んで過ごすのだ。

 肉が食べられないのだから仕方ないが……何と言うか、力出る? と聞きたくなる。

 実際ヴィーザルに聞いたところ、それだけでも物足りるらしく、草食獣人の凄さを改めて感じた。



「ただ、肉を食べる獣人とは違い、草食獣人の食事の回数は多いんだ」

「でしょうね!」

「だから、元々が人間である俺にとっては、食事は外で食べるよりはカオルの料理を食べていた方が腹に溜まる……」

「ああ……」



 ここでも弊害が!

 確かにあの事件があってから獣人達は人間たちをとても恨んでいる。

 そこに例え神であってもヴィーザルが人間の姿をするのは危険極まりないのだ。



「でもオーデンなんかは、おでんそっくりだったし、カオルも作ろうと思えば作れるんじゃないか?」

「そうですね、串焼きは勘弁願いますけど」

「オーデンは良かったのう……熱燗が染みるんじゃァ」



 一度お爺ちゃんに日本酒の熱燗を作ってあげたらハマってしまった。

 その為、夜だけなら毎日は無理でも出しますよ? と言う約束を取り付けて居るのである。

 とは言え、1週間は食べ歩きさせて貰ったので多少外食は満足した感じはある。

 いざ、次の街に行きたいのだが――そんなある日、駄女神と母が帰ってきた。



「私以外の神から加護を貰っていますね?」

「貰いました」

「神格が上がっていますよ」

「そうなんですね!」

「はぁ……よりによって哀愁のドラゴンに黄昏のドラゴンに憤怒のドラゴンですか。彼らは身を挺して人々を救ったとして神々のトップから褒章を貰いましてね」

「ええ」

「加護を与えている貴方にもそれは影響するんです。神格化が進みすぎると神に変化しちゃいますよ」

「そうなるとどうなるんですか? 女神になるんですか?」



 そう私が問いかけると、母が苦笑いしながら口を開いた。



「私と同じ女神にはなると思うけれど、そうなると見合いの話がドンドン舞い込むわよ?」

「うえ……」

「見合いなんてさせませんよ!」

「そうだとも! 見合いなどカオルには早すぎる!」

「だまらっしゃい。カルシフォンがいながら神格化を止められないのは、些かあなたの怠慢でもありますよ」

「しかし光魔法が使えるのはカオルしかいなかったからな」

「神格化が進むと、カオルのテイムしているあなた方にも影響します。元々レジェンドモンスターであるアーバント爺様にはそう影響は無いでしょうが、サトリ?」

「はい!」

「貴方もレジェンドの仲間入りしてますよ」

「ええええええ!?」



 そうなのである。

 何時言おうかと悩んだけれど、サトリちゃんもレジェンドホワイトタイガーに変化していたのだ。

 むう、此れ以上神格が上がるのは不味いなぁ……。



「どうすればいいでしょうか?」

「そうね……冒険は一旦ドラゴ肉を取りに行く時くらいにして、店でもしたらどうかしら?」

「店……」

「期間限定のお店でもいいわ。人々に幸せのお裾分けをするの。ふふ、私はそのまま女神になってしまったけれど、神格化を遅くする為には俗物な事をするのが一番よ」

「「「俗物」」」

「女神や神は、俗物的な事を嫌いますからね。それはいいかもですよ!」



 なるほど?

 つまり期間限定のお店を出しつつ、冒険もしつつ、各場所に拠点を移動しつつ、そこでも露店と言うか商売をするというやつかな?

 だとしたらこれからの季節ならオーデン一択!

 昼間でもオーデンは出している店は多いし、野菜も多いので草食獣人さんも買っていく。



「期間限定で出すなら、屋台がいりますよねぇ」

「そうね、屋台はいるわね」

「売ってあったかなぁ」



 そう、【ネットスーパー】は何でも売っている。

 売っているが、屋台までは売ってない気がする……。

 そんな事を思いつつ【ネットスーパー】で調べていくと、売ってあったんですよ此れが。驚きですね!!



「これでやるべきことは決まったな」

「オーデン屋台じゃな」

「でも、寒い地方でしか親しまれないのでは?」

「それは、行く先々で料理をかえて行けばいいのよ~」

「そうそう、行く先々や、領地に合わせた気候とかあるから、それでね」

「むう……」

「たまったお金は好きに使っても神格には影響はないわ。孤児院に寄付するもよし、何か別の商売をするもよし」

「なるほど」

「問題はお肉だけど……ドラゴン肉を出すのは辞めた方が良いわ……」

「獣人達が争って血をみるからね」

「気を付けます!」



 となると、肉の調達も必要になる?

 ネットスーパーに頼りすぎるのは良くないだろうし、肉と言えば牛の仲間や豚と言った感じになるけど……。



「オーク肉が必要になりますね」

「オークは直ぐ集落を作るからのう。討伐ついでに肉を全部貰ってくるのもありじゃな」

「肉調達は私とお爺ちゃんと、アイテムボックス係のカルシフォン様がいれば!」

「私も行くよ!?」

「では皆で行きましょう! 私たちは冒険者でもありますし!」

「そうだね!」



 こうして、冒険者らしくオーク集落を潰していきつつ、オーガの集落も潰していきつつと言う事になったが、一度集落を潰すと暫く出てこないのが奴らである。



「となると、先に拠点を増やすのが先決だな」

「ドルマから危険な地域は聞いている。そこを避けて行こう」

「了解です!」



 こうしてやる事は決まった!

 拠点を増やしつつ、肉を調達しつつ、オーデン屋やその土地に合った料理を作って少しでも女神化を阻止する!


 こうなったら商売よ!

 頑張るんだから!




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 異世界うどん屋老夫婦の領地改革~亡き妻がうどんスライムになったので、店をしながら現地の生活を改善して住みやすくすることにしました~

 https://kakuyomu.jp/works/16818093087212803570


【完結保障!】閉じ込められたVRMMO世界の中で、 狙われているリーダーを全力で守り抜き……全ての事は、副リーダーの俺がやる。

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