第27話 許されざる人間たちの所業

 早朝ドルマ様の御屋敷に集まった私たちと、冒険者ギルドマスターのマドンさん。

 ドラゴンから聞いた話を伝えると、すぐに討伐隊が編成されることになった。

 無論、私からのお願いで「直ぐに命を奪うのではなく、何故そうなったのかを聞いておいて欲しい」と伝えるえ、了承して貰えた。


 何か理由がある筈なのだと思う。

 イエスタ住民全員を殺して迄の理由が。

 執着ぶりをみるに、何かしら問題がある筈なんだけど……。


 取り取り敢えず討伐隊ならぬ捕縛隊が出るとの事でホッとしつつ、私たちは次なるダンジョンへと旅立った。

 一番近いダンジョンであの魔力溜まり……他のダンジョンは少し遠い為、どうなっているか分からない。

 少しだけスピードを出して走り、サトリちゃんが夜はグッタリする程走った。

 無論食欲は凄かったので作る側も大変だったけれど……。


 それでも1週間走り切って到着したダンジョンは、風の強いダンジョンだった。



「なるほど、風ダンジョンかのう。瘴気や毒が蔓延している場所でもある。冒険者は護符を付けてきておるが、我らの場合は……」

「カオル、結界を頼む」

「はーい」



 無属性魔法の結界を全員に張ってからのダンジョン突入となった。

 こちらも5層仕立ての3層までは冒険者が多く、4層からは毒蛇だの毒オンパレードの敵だらけではあったものの、薬にもなる毒持ちは多く、氷魔法に弱い敵が多かった為、氷魔法や氷の技、後はいつもの斬鉄剣で仕留めて進んだ。

 無論倒した敵はアイテムボックスに入れていく。

 薬用に買い取って貰うのだ。


 第5層は相変わらずの魔力溜まりが濃すぎて前が見えない程。それでも黄昏のドラゴンから貰った光魔法の強化により、魔力溜まりは少しずつではあるが消しながら亡骸を探す。

 すると――こちらもドラゴンが死んでいて、魔力溜まりの元凶となっていた為浄化。

 魂を癒すべく光魔法で祈りを捧げると声が響いた。



『嗚呼、黄昏のドラゴンが言っていた通りですね……。貴女がカオルですね?』

「はい」

『なるほど……捕縛隊がでましたか。それならば脅威に晒される事も少なくなるでしょう。ですが忘れてはなりません。人間たちは刻一刻と獣人国を手に入れようと企んでいます。その為にイエスタの砦を落とすのは必要不可欠なのです。イエスタには獣人になる為のアクセサリーを付けた者達が数名入ってきています。彼らは冒険者として、【暁の流星】と名乗っている事を教えておきましょう』

「暁の流星ですね。直ぐに捕えます」

『彼らが何故、あの青年を陥れてこうなっていしまったのか語るでしょう。急ぎ国へと帰り、素早く彼らを捕縛するのです。暁の流星たちや、イエスタを狙う者達には皆、首から下が真っ黒になる呪いを掛けています。逃れられないでしょう』



 それなら誰が誰か分かりそうだ。



「住民や獣人にも仲間がいるのか?」

『誇り高き獣人は人間には本来屈しません。カオル、貴方には【仲間以外の】人間たちのアクセサリーを壊す力を授けましょう』



 すると、哀愁のドラゴンから加護と魔法を授かる。

 途端【哀愁のドラゴンから加護を貰いました。加護により魔力とMPが大幅にアップします。これにより新たな無属性魔法を覚えました。『星泣きの雫』を得ました】と出てきた。



『人間は欲深い……どうか獣人国を頼みます……』



 そう言うと骨は消え去り、周囲の魔力溜まりも消え失せると、黄昏のドラゴンがいた状態の他のモンスターの骨だらけが残っていて、卵は守られていたようだ。



「卵だけ守られても、親がいなければ大変じゃないのかな……」

「本来卵がある状態ならば、ワシらのような獣は直ぐに生きる術を覚えて動き出す。親は必要じゃないんじゃよ」

「そうなのね」

「獣人国で動き回る【暁の流星】か……。直ぐにドルマ様とマドンに連絡してから戻るとしよう。俺の方の居住空間に入ってくれ」



 こうして兄の居住空間に入ると、兄は二人に手紙を書いて今回の内容を伝え、その足で直ぐに孤児院の拠点からイエスタに戻り、街は物々しい空気になっていた。

 門は閉ざされ、獣人や獣人の行商人達も外に出られなくしているのだ。


 急ぎ獣の姿になってドルマ様の屋敷へと向かうと、通信用魔道具を使いながら対策室が作られていた。



「一体全体どれだけの人間が入ってきていやがる……」

「マドンさん!」

「おう! カオル待ってたぞ! 住民は住民で、商人は商人で、冒険者は冒険者で分けて集まって貰っている。直ぐに人間だと解る~~何かしてくれるか!?」

「分かりました!」



 そう言うと室内では使用できない魔法の様で、テラスに出て魔法を発動させる。

 どうやら星の力が必要らしい。星は昼夜出ているが、雨や曇っていたら使えない所だった……。



「『星泣きの雫』」



 大きな魔法陣が3つ私の身体を中心に展開され、空から小さな星が複数落ちてきては何かに当たって光った。

 耳を澄ませていると宝石が割れるような、パリーンと言う音が聞こえる為、獣人化の宝石なりが割れた音だろうと思う。


 そこまでやれば、後は私の仕事は終わり。

 結構なMPを使う『星泣きの雫』は早々使いたくないなと思いつつ、2つのダンジョンは無事浄化が終わったことになる。


 残るは1つ……。



「今までのドラゴンは心根の優しいものが多かったが故にこれで良かったやもしれんが、暴れ狂うドラゴンもおるかも知れんのう……」

「お爺ちゃん怖い事言わないでよ……」

「哀愁、黄昏ときたら……後は憤怒かのう」

「憤怒!?」

「覚悟が必要じゃて」

「「「……」」」



 こうして1日バタバタとイエスタはしたが、結果として10人の人間が捕まった。

 商人にも化けていた事もあり、荷物は押収され、中身は香辛料だったという。

 人間の国では香辛料はとても貴重で、こうやって長年獣人国から香辛料を買い取っては運んでいた事も判明した。


 それは両国の規約にも違反する事で、「王命でやった」と口にする人間たちは処刑されても文句は言えず……。

 拷問の末に色々吐き出させてから断頭台に消えるのだと教えてくれた。



「それで、獣人の青年はどうなったんです?」

「ああ、婚約者を暁の流星に囚われていたらしい。だがその婚約者もまた、ボロボロにされて自害した後だったようだ」

「酷い……」

「暁の流星たちは麻酔無しの去勢の後、そのまま数日過ごさせ、断頭台行きが決定した。これで彼も報われるだろう……。獣人の青年は婚約者がそんな目に遭ったことを知った翌日自ら命を絶ったよ」

「「「「……」」」」

「人間はむごい事を平気でする……。獣人にとって番がそのような事をされるなど耐えられる筈が無いのだ」



 そう語ったドルマ様に私たちは祈りを捧げ、少しでもその青年と婚約者の傷が癒えて天に昇る事を祈ったのだった――。




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