第26話 狙われた水源と命を懸けた3匹

  ――世の中そんなに甘くない。

 と、言うのを今感じている。そう、第5層にきたら、もう何と言うか凄かった。

 魔力だまりが。



「確かにこれだけ溜まっていると……」

「獣人達も来なくなりますね……」

「既に第4層で来ないと思うけど、綺麗にしておこう」



 光魔法を何度も展開させながら、通り道を作り魔力溜まりの元凶に向かう。

 すると――1匹のドラゴンの遺体から発せられているのが解り、それを浄化することが出来た。

 ドラゴンは歳を取っていたのか、それとも病気で死んだのかまでは分からないが、元凶は元凶。でもご遺体であることには間違いはいないので、光魔法で祈りを捧げてあげると、魂だけが話しかけてきた。



『おお、我を助けてくれる冒険者がいるとは思わなんだ……』

「貴方の死因は病気? それとも寿命?」

『我はこの地の水源、シュベールの森の泉を守る者。どこぞの馬鹿が毒を入れたことで獣人達に害が来ぬようにわが身を捧げた者』

「「「「毒……」」」」

『今や、あの水源は狙われている。それも人間に脅された獣人が、人間が用意した毒を盛ろうとしている。それを阻止する為、我々最下層のボスは【とある者】に救援を出した……。獣人が意味嫌う蜘蛛だ』

「じゃあ、蜘蛛の討伐を言われてきたけど、蜘蛛を倒しちゃいけないのね?」



 そう私が問いかけると、中の魂は小さく頷いた。



「だが、毒を流す元凶を叩き潰さないとどうにもならない問題でもある」

『それなら、我ら3つのダンジョンボスから呪われし獣人を探すがいい』

「でもどうやって……」

『獣人にも馴染めず、国にも戻れず、身体が徐々に腐る呪いを掛けさせて貰った。奴は何とかして水源に毒を入れようと必死になっているが、蜘蛛が邪魔して最早どうする事も出来ぬ。奴はシュベールの森の泉近くの小屋に潜んでおるぞ』

「その人を捕まえる討伐隊が必要ね」

「その様だな」

『その前に、出来れば我ら3匹を浄化して欲しい……長年苦しめられてきた。そろそろ安息の地へと旅立ちたいのだ』

「分かりました!」

『その代わり、我を浄化した其方に加護とレアスキルを与えよう。其方の本来の魂が求めるモノを……』

「加護とレアスキルですか……有難く頂きます!」



 光りは分裂して私の額に入ってくると【黄昏のドラゴンの加護を受け取りました。光魔法が強くなります。レアスキル【ネットスーパー】を手に入れました】



「むはっ!」

「一体どんなレアスキルが!?」

『存分に使うといい。最大限の礼だ。どうかイエスタを守ってくれ』



 そう言うとドラゴンの魂は空に消えていき、周囲の魔力溜まりは消え失せ、殆どの敵は屍になって動いておらず……魔力だまりが毒になってスタンピードを起こさない様にもしていた事が分かった。



 しかし、卵には魔力だまりがあたらない様になっていたようで、此れからモンスターが増えるのだろう。



「取り敢えず外に出て、次のダンジョンを目指した方が良さそうだね」

「一体どんなスキルを手に入れたんだ?」

「ん――っとね、ヴィーザルには嬉しいスキルかも」

「本当か? 一緒に食事が出来るとかか?」

「人間に戻ればね」

「よし、食事の時だけ人間に戻ろう! いい加減天界の食事は飽きていた所だ」

「私の料理もそんなに美味しくはないけどね」

「「「何を仰る」」」



 こうして兄の居住空間から拠点に戻り、冒険者ギルドで羊の肉と毛皮だけ欲しいというと泣きながら「半分だけ卸して欲しい、書いとるから!」と言われたので渋々半分渡すことになった。


 そしてその日の夜はヴィーザルも食べられるように唐揚げを沢山作り、ヴィーザル用にサラダとご飯も炊いた。

 ご飯は土鍋でだけど、美味しく出来たと思う。

 それをおにぎりにして手づかみで食べて貰う事にしたのだが――。



「お米じゃないか! 俺も食べたい!」

「カルシフォン様がそこまで言うなんて……私も食べたいです!」

「ワシも食べたいのう!」

「あーんー。肉、ご飯は力の元だもんね」



 夜は皆で肉、おにぎり! と言う形で食べつつ、ヴィーザルは「これがカオルの作った晩御飯……」とネットスーパーで取り寄せたドレッシングをかけてあげると野菜もモリモリ食べていた。

 男性って食べる量が凄いのね。

 姉しかいなかったから分からなかったわ。


 シッカリ食べた後の後片付けはサトリちゃんとラテちゃんに任せ、暫しの牛乳タイム。

 洋服類はアクセサリーで出している為、汚れても直ぐ浄化されたり乾いたりする為問題はないけど、やはり風呂は別格である。



「しかし、人間に脅されて毒を……か」

「理由が知りたいですね。場合によっては助けられるかもしれませんし」

「それでも大罪だ。死刑は免れん」

「そう、ですよね……。イエスタの人々全員を殺そうとしてるんですもん……」

「うむ、死刑は免れんし、した罪はとても重い。情状酌量の余地はなしじゃ」

「そっか……」



 全員を助けるなんて烏滸がましいけど、気にはなるんだよね。

 もし捕えられた場合、理由を後で聞こう。

 そしたら何か出来る事もあるかも知れないし。

 報われないなんて事は一番辛いし起きてはならない事だとは思うしなぁ。

 偽善……って思われても仕方ないけど、私の性格上放っておけないのだ。



「まぁ、ドルマさんに伝えてから後で事情を聞こう。まずはドルマさんに連絡をしておくので、明日の朝直ぐ向かい事情説明だな」

「そうだね」

「後2か所の 魔力溜まり 綺麗に しちゃおう」

「まだまだ やる事は いっぱいだよ」

「うん……。よし、気持ちを切り替えて明日の朝に挑もう!」



 こうしてお風呂に入り、嫌な気持ちを洗い流してぐっすり眠り、兄が遠隔用の魔導具をドルマさんから貰っていたらしく、手紙を書いてから送ったようで、返事は直ぐいきて朝一番に冒険者ギルドのマドンさんも踏まえての話し合いが行われる事となった。


 本当に……なんでこんな事になっているのか……何故イエスタの人々の命を奪おうとするのか、理解に苦しむ日だった。




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