第24話 兄の持つ【拠点】スキルで賃貸を借りよう!

 解体は明日までかかると連絡がきて、その足で一端居住空間に戻ると、兄は暫く考え込んでいた。

 そして、意を決したかのように――。



「俺のスキルで、【拠点】と言うものがある。各国で土地を購入して所謂チームアジドみたいなモノを置くものなんだが、それがあると扉を使って違う場所にいても、扉1つで移動可能なんだ」

「おおお、凄い!」

「幸い金はある。拠点を作っておいて良いだろうか?」

「構わんぞ。移動の手間が省ける」

「あらぁ? そう言えばダンジョンにも何か作ってませんでした?」

「ああ、ダンジョンにも何度か行きそうだから、最後の小部屋に小さい拠点を用意したんだ」

「ああ、あの掘っ立て小屋みたいな」

「あれなら場の雰囲気に合っているだろう?」



 確かに、兄が何かコソコソしてるなーとは思っていたが、拠点を作っていたのか。

 そう言えば兄のスキルボードは見せて貰ったことが無い。

 ヴィーザルもだが。



「ねぇ、お兄ちゃんとヴィーザルのスキルボードって秘密にしてるの?」

「女神が強力な加護をつけてしまったお陰で、人には見せられないんだ。【拠点】だって強力過ぎるだろう?」



 確かに。

 兄は強力な力が多いんだろうなというのは理解出来ていたが、実際凄いらしく、人には中々言えるものではないらしい。


「俺の加護も似たようなものだな。寧ろ神格が上がったくらのカルシフォンやカオルのスキルツリーは見ても問題はないが、俺のような神のスキルツリーをみれば呪われるとされている」

「あ、そうなんだ。ごめんね」

「以後、気を付けるように」

「了解です」



 確かに神々の事についてはスキルツリーに知識として無かったので分からなったけど、そうか呪われるの……それは怖いな。

 キューティクルの毛が禿げるとか言う呪いとかだと人生終了だしね。

 気を付けよう……。



「じゃあ、時間もう少しあるし商業ギルドに行って土地を買いに行こうか」

「それもそうだな。安い土地でいい。安価で貸してくれるならそれもまた良しだ」

「ああ、賃貸?」

「そうだな」

「なるほど……賃貸はありかも」



 この世界でも賃貸があるのならありがたい。

 それならば――1ついい案がある。



「ねぇ? 賃貸するなら孤児院を賃貸させて貰わない?」

「孤児院を?」

「そう、ついでに食べ切れない肉も時々下ろしに来るの。どの道皆と食べるには量がね……食べ切れないから」

「ふむ、確かに……。毎月1回は寄付するという手もあるな」

「うん、それで行こう」

「それならますます商業ギルドで仲介して貰おう」

「うん!」



 こうしてこの世界にはないであろう【賃貸契約】と言う事で一室間借りすることを提案し、商業ギルドにてその手順や方法を兄が報告すると「新しい商売の形ですね」と頷き、明日の早朝孤児院にて契約をさせて貰えることになった。

 そんなに早く大丈夫かと思ったが、サルの肉は孤児院にも寄付することになっていたそうで、そのついでについて行くのが一番いいという事だった。

 後は、賃貸方法などはシスターと話し合って決めて欲しいとの事。


 また、朝シスターからOKが出てから領主であるドルマ様に生憎事にもなっている為、今日は早めに寝た方が良さそうだ。

 そうと決まれば……と居住空間に戻り、各自お風呂に入ったりゆったり過ごしながら早めの睡眠となった。


 翌朝ある意味24時間オープンな冒険者ギルドに向かい、事情を説明するとサルの肉を数日分持っていく事が決まった。

 シスターはアイテムボクス(小)があるらしく、肉がギリギリ入る量を寄付させて貰う事に。


 入りきらかなった肉は貰ったものの、恐らく私たちが食べない事を見越してマドンさんは「追加料金を支払ってくれるなら、サル肉が無くなるまで孤児院に肉を届けるが?」と言ってきた為、「是非に」と追加料金を支払い、毎日ステーキが出たとしても3ヶ月は食べられるだけの量を支払った。

 野菜は自分たちの庭で育てているそうなので問題は無さそうである。



「で、ドラゴンの肉がこっちだ」

「貰って行きまーす」

「全く豪勢だねぇ……肉以外は本当に要らないのか?」

「あっても使い道が無くて」

「なら買い取らせて貰うぜ。こういう大物は1ヶ月に2体くらいに抑えて貰いたいもんだな」

「大量にあるんで!」

「ギルドの金がスッカラカンになっちまう……。肉もそれだけあれば1か月は持つだろう?」

「むうう……そうですね」



 1か月に2回しかドラゴン肉を2体のみしか捌けないと……。

 まだまだあるドラゴンを捌くには更なる街が必要! 王都に行くまでに街や町、村は幾つかあるので気長に行こう。



「クエストの途中にもう1回解体お願いしますね」

「あいよ」



 約束を取り付け、支払われたお金は兄が管理し、その足で孤児院へと向かう。

 子供たちはチラホラすでに起きてきて、私たちが来たことにちょっと驚いている様だ。ちゃんと獣人の姿で行ったよ!

 そこでシスターに肉の話と部屋の間借りを出来ないかと聞くと、「使ってない部屋があるのでどうぞ」と言う事だったので「賃貸としてお借りしたい」と、月幾ら支払うか兄が伝 え、シスターは驚きつつも「そんなに頂けるのでしたら是非」と喜んで貰えた。


 その足で間借りする賃貸の部屋に案内され、1つの広い部屋に到着すると廃坑と、もう1つの扉を付ける兄。

 ほうほう、これが兄のいう拠点の扉ですか。



「この拠点の扉は、俺が入っていいという者しか入れないので、子供たちが入る事はない。安全面もバッチリだ」

「それは助かります」

「お兄ちゃん、こっちの扉は廃坑って書いてあるから解るけど、もう1つは?」

「生まれ故郷のダンジョンだな。3層エリアに繋がって居る」

「おお、お肉部屋」

「早々行くことは無いとは思うが、一応な」



 そう言うと、兄の居住空間には既に扉の追加されたのが分かったそうなので、何時でも兄の居住空間からここに戻れるようだ。

 うーん、便利。

 流石神に愛されし兄!

 どこぞの駄女神とは違う!

 私あるの、女神の加護=死亡保障だからね!



 こうしてシスターに1か月の間借り代金を支払った兄。

 それだけで寄付金の3倍はあるらしく、子供たちの服や施設の老朽化にあてられると喜ばれた。

 しかも毎月入る訳ですからね! デカいです!



「さて、領主様に挨拶へ行かねば。挨拶用の贈り物はドラゴン肉でいいか」

「そうだね」

「では行くとするか?」

「ああ、出発しよう」



 こうして朝の諸々を片づけてから領主の館へと獣の姿で移動しながら進み、領主の館に到着した頃だと朝ご飯を食べ終えた頃だろうか?

 うう、私たちも朝ご飯食べたいぞ。後でお店に言って食べてからクエストに行こう。



「リルフェルが息子、カルシフォンとその娘、カオルが来たと伝えて欲しい」

「リルフェル様の!? 直ぐにドルマ様に伝えてきます!」



 おやおや? 母は何をしでかしていたんでしょう?

 ちょっと気になりますね!

 母の武勇伝楽しみです!




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 異世界うどん屋老夫婦の領地改革~亡き妻がうどんスライムになったので、店をしながら現地の生活を改善して住みやすくすることにしました~

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