第23話 獣人は蜘蛛モンスターが苦手

 後から知ったのだけど、蜘蛛は獣人にとっての鬼門らしい。

 獣人を食べてしまう象徴だとかで、忌み嫌われていることを思い出したのは、倒れたマドンさんを見てからである。

 それからは阿鼻叫喚地獄絵図。

 ギルドマスターが倒れたこともだが、周囲は生きてる蜘蛛と死んでる蜘蛛の見分けがつかない。



「殺されるうううううう!」

「ひいいいいいいいい!」

「悪夢じゃ! 悪夢じゃああ!」

「もうイエスタは終わりだ……あんな大量の蜘蛛を相手にどう戦えと……」



 絶望する者、発狂する者、もう何が何やらどうしたらいいやら……。

 すると、兄が両手を広げてパ――ン! と鳴らしたことで、全員の発狂が一瞬止まった。



「落ち着いてくれ。蜘蛛は死んでいる」

「し、死んでるのか?」

「本当に?」

「ああ、しっかりトドメを刺しているから安心して欲しい」

「お、お前達蜘蛛と戦っても平気なのか?」

「平気だったね。気持ち悪いけど」

「まぁ、あの手のモンスターは人間国にはそれなりにいるからな」



 そう和やかに会話していると、マドンさんは起き上がりズカズカと私たちに歩み寄ると兄の手を握りしめた。



「なら、1つ頼まれてはくれないだろうか? あの手の魔物を獣人達は忌み嫌うのだ。素材が欲しいがゆえに無茶をする冒険者も多い。先ほど頼んだシュベールの森の泉付近を縄張りとしているんだ。間引くなりなんなりしてきてくれないか? 素材は無論買い取ろう」

「いいですよ」

「蜘蛛くらいならまぁ……」

「あまり得意じゃないですが~」

「ワシも得意じゃないのう……頑張るか」

「蜘蛛退治なら得意だ。任せてくれ」

「助かる!」



 つまり、糸をまきまきしながら倒せばいいと言う事だろう。

 蜘蛛で採れる部位って魔石と糸くらいしかいいのないんだよね。

 それなりに間引いても増えるモンスターだし、ガッツリ糸取って倒そう。



「それで、さっきの蜘蛛は」

「イエスタでは買取は無理だ。王都まで行けば買い取ってくれるだろうが」

「えええ……」

「そ、その代わりサルの魔物は全部買い取ろう。安値ではあるが少しだけ色を付ける」

「やった!」



 こうして大量にあるサルの亡骸は全て買い取って貰い、お金も入ってホクホクだ。

 クエストは受けたし、挨拶を済ませると次は商業ギルドへと向かう。

 私と兄でセットで付与アクセサリーが作れるのと、サトリちゃんが以外にも【祈りのミサンガ】を作れる事が分かったので向かったのだ。


 母の子供と言う事もあり難なくこちらも登録できたが、売ったアイテムについては道具屋で既に売っていると伝えると職員が駆け出していった。



「今後、宝石や貴金属等、ダンジョンでドロップした場合は是非、商業ギルドを通して頂けると助かります」

「安価で買い叩かないというのでしたらお出ししますよ」

「おや、手厳しい。我が商業ギルドはそのような真似は致しません」

「では、こちらの宝石をおいくらで買いとてくれます?」



 そう言うと兄は大粒のルビーをアイテムボックスから取り出し、商業ギルドマスターであるロスマンは一瞬メガネがずれていたが、クイッとメガネを元に戻すと鑑定を開始。



「不純物の無い、高品質の大粒ルビーですね。こちらはダンジョンで?」

「ええ。その他、ダイヤやサファイヤ等大量に」

「それはそれは、そんな夢のようなダンジョンがあるとは驚きです」



 そこのボスが出す宝石も中々のモノですよ。ラテちゃんって言うんですけど。

 とは言わず様子を伺っていると、かなりの高額で買い取ってくれた。

 今後とも宜しくの金額も加わっているのだろうと思うが、スッと張り紙の方に手を剥けると「あちらに高額買取中の貴金属や宝石類が書いてありますので、一度チェックをお願いします」とメガネを光らせて口にしていて、ヴィーザルがツカツカと足音を立てつつ見に行くと「ほう?」と興味深そうにしていた。



「商業ギルドでも、金銀銅プラチナの買取はしているのか」

「ええ、彫金師等に卸す為の道具ですからね、品質は良いものが無論喜びますが」

「今度延べ棒で持ってこれたら持って来ますね」

「延べ棒……ンン! もし今お持ちなら、毎回枯渇気味のプラチナと金は高価買取しますよ」

「では、これくらいの量でまずは勘弁してください」



 そう言うと兄は用意してあった台の上に金とプラチナをドサリと置くと、ロスマンさんは鼻息荒く「品質も素晴らしい!」とこちらも買いっとってくれた。

 ダンジョンで適当に放り込んだ貴金属だが、高価買取と言うだけ大変いいお金になった。

 ラテちゃんがいる限りお金には絶対困らなそうである。


 こうして暫くの路銀を稼いだ私たちは、いざ、最も楽しみにしている食事を摂るべく向かった。

 お腹は空いていたし空腹は何よりも料理を食べるスパイスってね!



「丁度お昼時だから串焼き屋が沢山出てるな」

「美味しそうな匂いです……」

「腹が減るな」

「串焼き食べながら、どこかのお店でシッカリ食べるのはどうでしょう?」

「それで行くか」

「ならそこの串焼き屋さんで買ってから買い食いしつつ」

「ワシとサトリが食べられそうなのもあればええんじゃがのう」

「一度試してみてよ」

「はーい」



 と近くの美味しそうな串焼き屋さんで人数分1人5本ずつ頼み、出来立てほやほやの串焼きを口にする。

 あつっ……あ、タレが効いていて美味い!

 この世に生まれて初めて食べたファースト食事!



「これは旨いな」

「ああ、人間国では買い食いなんて出来なかったから新鮮だ」

「ジュワっとしてるのに柔らかいです!」

「ほほう……これが獣人の食べるご飯という奴か。これはええのう」



 一頻りお肉を食べ終わった私たち、感想は?



「生肉より断線コッチ派だが、皆はどうだ?」

「俺は生肉を食えないからコッチ派だが」

「サトリちゃんは言う迄も無くって感じかな?」

「はい! 獣人の食べ物美味しいです!」

「人間族の間では香辛料は高いそうじゃが、獣人国では鼻の良い者達が多いから香辛料は比較的手に入りやすく食べやすい……と言う知識があるからのう。ワシも料理をした肉が好きじゃわい」



 満場一致!

 これはお店の料理も気になりますねぇ!

 こうして入ったステーキハウスは、目の前で料理してくれるタイプのちょっといいお店で、目を輝かせながら出来上がるステーキを大量に食べて満足!

 やはり食文化は生より火を通した肉ですよ!

 1人涙を流しつつ「美味しいよう……っ!」と味を噛みしめ、お腹いっぱいになったところで道具屋のお兄ちゃんに聞いた鍋や調理料が売っている店に向かい、必要な物を買いそろえるとアイテムボックスに入れ込む。



「もしお嬢ちゃんがモンスターをアイテムボックスに入れてるなら、冒険者ギルドでお肉だけ貰って後は売りはらうっていうのも手だよ」

「それもそうですね、そうしてみます」



 どうせ今から水質調査とか諸々で遠征があるんだしともう一度冒険者ギルドに向かい、ドラゴンを2匹程卸すので他部位は買い取って貰ってっ結構なのでお肉だけ下さいと言うと、ギルドマスターから話を聞いていた受付のお姉さんは解体場所に連れて行ってくれて、そこで最初の倒していた黒豹を出した。



「これはまた……死神と恐れられている奴じゃないか」

「此奴大量にあるんですよ。いくつか渡すのでお肉に出来ません?」

「ドラゴンが出てくるかと思って冷や冷やしたが」

「あ、ドラゴンも卸していいんですか?」

「……一匹だけにしてくれ」

「はーい」



 こうしてドラゴンも一匹丸ごと出して、後は解体待ちだ。

 暫くここを拠点にするのもありだなーと思っていると――。





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