いざ獣人国へ! 波乱万丈な冒険者生活と商業者の二足の草鞋!

第22話 獣人国に入国! 

 翌朝、やっとの事でダンジョンから抜け出した私たちは、久しぶりの外で太陽の光を見た。

 随分と長い事廃坑だと思っていたダンジョンに入っていたようだ。



「ここからはまた夜移動?」

「いや、もう獣人国の領土が目の前だ」

「ああ、遠くに関所が見えるね」



 どうやら石壁がずらりと並び、そこに関所が見える。

 本当に人間国はギリギリまで廃坑を伸ばしていたんだなと理解出来た。

 こうして走る事半日、関所にたどり着いた私たちへ獣人達は優しかった。



「モンスターかと思ったらフェンリルだったか」

「神格持ちのフェンリルに神の馬獣人なら文句は何もない。連れている者達は?」

「私がテイムした者達です」

「なら入って宜しい」

「ありがとうございます!」



 こうして中に入り、やっと獣人国の領土に足を踏み入れる。

 国境付近は辺境伯と呼ばれる方が管理しているそうで、毎回人間に睨みを利かせているらしい。

 ただ国境の警備で忙しい為、冒険者を探している様だという話を国境の方から聞くことが出来たので、まずは辺境伯のいるイエスタ領で冒険者になることにした。

 ここから半日も走らずに到着するらしく、一泊してからイエスタ領を目指すことに。

 無理は良くないからね。

 サトリちゃん疲れ果てているからね!



「獣人国に入ったなら、後はゆっくり進もう」

「それもそうだな」



 私と兄の言葉にホッと息を吐くサトリちゃん。無理をさせてごめんね。

 此処迄全速力で走って来たもんね。

 とことこと獣人国を歩いていると「あ、フェンリル」「珍しい」なんて声もチラホラ聴くことが出来たし、何より歓迎ムードが強かった。

 全員がモフモフの獣状態で歩いてることもあり、ケモケモPTである事は解るだろう。

 一人【獣人になれるネックレス】でケモケモになってるけど、そこは置いておく。


 ある程度進んだところで居住空間へ入り、ご飯を食べて一日の疲れを癒し、「フェンリルの毛は金になる」と言う情報を得ている私たちは、プリシアにブラッシングされてツヤツヤだ。

 抜け毛は駄女神に頼んだ袋へ入れてかなり溜め込んでいる。

 中に毛が付きにくい構造らしい。


 ついでにとサトリちゃん用とヴィーザル用の袋も貰っている為、毛のある獣人はブラッシングされている。

 素材になるなら売っても良いしね。抜け毛ならタダだし。



「明日には辺境伯が納めるイエスタ領で冒険者登録だな」

「楽しみだねぇ。その前にお金へ換金できる所探さないと」

「それなら宝石は宝石商に売るのが手っ取り早いが、足しかカルシフォンとカオルは彫金師と付与師だったじゃろ? そっちで売った方が多分買い手は高く買うぞ」

「それもそうか」

「じゃあそっちのスキル上げも今後していこう」



 こうして獣人の姿になった私とお兄ちゃんは、お兄ちゃんがブレスレットを作り、宝石に付与魔法を入れ込むのは私の役目として少しずつではあるが、アクセサリーを作っていく。

 サトリちゃんはミサンガを作っていて、なんでも「腕に着けていると、一度だけ死ぬのを防いでくれるそうなんですよ~?」ととんでもない事をいい出した。

 使っている糸は私とお兄ちゃんからとれた毛を使っているので、大量にあるし問題はない。



「彫金師レベル1だと、殆ど一部に宝石を使ったブレスレットが精々だな」

「でもなかなか綺麗よ。お兄ちゃん器用ね」

「そう言ってくれると助かる」

「私も付与レベルは低いけど、毒無効を作ってみたよ」

「毒無効は一般的には人間族が使う事の多い付与じゃが、このイエスタ領では死活問題かもしれんのう」

「と言うと?」

「毎年、毒を使った攻撃があるらしくてな。それで死亡する兵士も多いらしい」

「それはスキルで得た知識か?」

「うむ」



 だとしたら沢山作っておいた方が良いのかな?

 そんな事を思いつつ、お兄ちゃんの作るアクセサリーに毒無効を付与していき、気が付けばそろそろ寝る時間。

 サトリちゃんもミサンガ作りを辞めて各自眠った翌日、私たちはついにイエスタ領の最も栄えている街に入ることが出来た。


 そこからは獣人の姿で歩き、まずは付与魔法をかけたアクセサリーを売りにアイテム屋へ入り、「付与魔法を付けた悪えさりーを売りたいんですが」と言うと店主が慌てて出てきた。



「付与アクセサリーですか! ものによっては高く買い取りますよ」

「あと、ミサンガもあるんですが」

「ミサンガですか、物に寄りますが」

「フェンリルの毛で作ったミサンガです~。一度だけ死ぬのを防ぎます~!」

「是非、全てか取らせて頂きたい」



 店主マジトーンだ。

 サトリちゃんの言葉でマジトーンになってる。


 こうして作ったアイテムを並べると「毒無効ですか! 領主様から大量受注を受けてたんですよ!」と喜んでいて、ミサンガも今ある奴は全て買い取ってくれた。

 これで冒険者登録が出来る。

 商人としての登録もしておくかな? と兄と語りつつホクホク笑顔で外に出ると、まずは冒険者ギルドへと足を運び、私とお兄ちゃんとヴィーザルが登録を行い、その他のサトリちゃんたちは従魔として登録して登録料も全員分支払った。



「フェンリル……もしかして、リルフィル様とご関係が?」

「リルフィルは母です」

「おおお! やはりお子様でしたか。いやはや、是非領主であるドルマ様にお会いください。かつて懇意にされておられました」

「でも、急に会いに行くのは……」

「冒険者ギルドから手紙を出しておきましょう。明日には返事が来ると思うので、今日やるべきことはしておくといいですよ」

「ありがとうございます」



 こうして母の事を知っていた受付のお姉さんに笑顔で返事を返すと、周囲の冒険者達が「え、リルフィル様の子供?」「マジか」とざわついている。

【悪意察知】には反応しないので、本当に驚いているって感じだった。

 そろそろお暇しようかという時にドタドタと走ってくる音が聞こえ――大きなクマ獣人が現れた。



「リルフィル様の子供ってのは何処だ!」

「はい?」

「私と兄ですが」

「奥の部屋に来てくれ、頼みたいことがある!」



 行き成りクエストですか?

 内容によりますよ?



 そんな事を思いつつ奥の部屋に通されると、イエスタ冒険者ギルドマスターのマドンさんは真剣な表情で頭を下げてきた。



「子供にこんなことを強いるのはダメだとは分かっているが……依頼料は色を付ける。どうか魔力溜まりを消してきてはくれないか?」

「イエスタ領で幾つあるんです?」

「3か所のダンジョンだな……。冒険者達が近寄れない地下付近にあるらしい。魔力だまりは神格化した者や神に属する者しか浄化は出来ない。頼む!」

「まぁ、そういうのが仕事になるかなって思ってたので構いませんが、魔力溜まりがあるのはダンジョンだけですか?」

「いや、シュベールの森の泉近くにもあるらしい。あそこはイエスタ領の水源ともされていて、早急な解決を頼まれていたんだ。頼めるか?」

「地図を下さいな」

「タダで渡そう。宿はどうする?」

「あ、宿は結構です。私たち自分の居住空間持ってるので」

「そうか……流石リルフィル様の子供だな」



 こうしてイエスタ領の地図を貰い、今回行く場所のダンジョン等に赤いバツを付けて貰う。そこがクエスト場所らしい。



「でも、明日にはイエスタ領の領主様に会うかもしれないので、それ以降でいいですか?」

「ああ、構わないが出来るだけ急いで頼む」

「それと、ご飯の美味しい店は何処か知ってますか?」

「この近辺だと何処もうまいぞ!」

「了解です!」



 いい情報も聞けた!

 今夜はお外でご飯だ!



「あ、ついでに料理関係の道具を売ってる店教えてください」

「それなら――」



 と、そっちも押して貰い、調味料なんかも売っている店を教えて貰えることが出来た。

 まずは商業ギルドに行ってからそっちの店に行こう。

 お金はいくらっても良いからね!



「それと、魔物の買い取りお願いしたいんでが、一部でいいので」



 いい加減昔からある魔物……特に虫系を売り払いたくて伝えるとOKを貰えたので、移動して解体エリアに向かい、サルと蜘蛛をどさっと出した。

 途端上がる雄叫びと悲鳴。

 泡を吹いて倒れたマドンさん。

 大丈夫だろうか?





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 異世界うどん屋老夫婦の領地改革~亡き妻がうどんスライムになったので、店をしながら現地の生活を改善して住みやすくすることにしました~

 https://kakuyomu.jp/works/16818093087212803570


【完結保障!】閉じ込められたVRMMO世界の中で、 狙われているリーダーを全力で守り抜き……全ての事は、副リーダーの俺がやる。

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