第19話 ――ヴィーザル―― 俺もアクセサリーで獣人へ

 ――ヴィーザルside――



 キュティーが俺の一時的な保護者として預かり人となった……までは良かった。

 なんと、俺が殺したフェンリルについて彼女の母親が激怒しているらしく、期間を設けるが3年間『奴隷』とするのなら許すという横暴な事を言ってきたのだ。


 だが、子の殆どを殺された女神からの言い分も、当たり前だった。

 ムシャクシャしてやったと言えばウソになるが、確かにフェンリルの子供を殺したのは事実だ。

 その上で奴隷になれと言うのなら、【あの事】が無ければ心から喜んで贖罪の為に動こうと思っていた。



「だが俺にも心残りがある……。あのシルバーウルフを是が日でも」

「ネタバレしちゃいますけどー。あの子シルバーウルフじゃないんですよ」

「なに?」

「貴方が斬鉄剣で殺したフェンリルです」



 その言葉に目を見開いた。

 俺が……殺した……?



「私の本来の保護対象でもあり、加護を与えた子なですよ。早い話が死亡保障を付けてたので生きてはいますが……貴方への心情はマイナスだと思いますよ」

「……」

「そのお母さまから提案が奴隷なんです。そりゃそうですよね、6匹いたうちのフェンリルは女神の加護がある2匹以外は全員貴方が殺したんですから」



 鈍器で頭を殴られた気分だ……。

 俺が、俺が殺した?

 確かにあの場所にいるには珍しいフェンリルだとは思ったが、俺が殺したのか……。



「是が日でも……贖罪したい」

「主はカオルちゃんじゃなくて、兄のカルシフォン様になりますけどいいです?」

「構わない。俺の所為で苦しい思いをしたのなら、俺自身が贖罪の為に誠心誠意尽くすのが礼儀でもあるだろう」

「獣人への差別が無かったのは救いですね~。良いですよ、伝えておきます」

「助かる……」

「もう人間の国にも入れませんから、獣人国に行くのは決定事項みたいなものでしたしね~」



 そうなのだ。

 現王である王弟は、俺を「神だとしても許し難し」と言う理由で人間国を追い出された。元々居場所の無かったのだから気にはしてないが、獣人国で生活するしかないのだ

 だが、神がいるだけで恩恵を受けていた人間国がその後どうなるのかは知らないが。

 それに……今まで居場所が無かった俺の居場所になってくれるかもしれないという淡い期待もある。


 嗚呼そうか、俺は居場所が欲しかったんだな……。

 例え奴隷に堕ちてでも……居場所が欲しいんだ。



「納得されました?」

「納得した。こんなにも俺の心は単純だったんだな」

「神様も人間も難しく考えすぎなんですよ。獣人の皆さんは余りアレコレ考えてないように見えますよ」

「それは、俺が今度行くところだろうか?」

「そうですね」

「……気が楽そうだ」

「では、奴隷堕ちするという事で宜しいですね」

「ああ」



 こうして数日後、俺はダンジョンの外に連れて行かされ、そこで奴隷の首輪をフェンリルの少年だろうか? 主となるカルシフォンにつけられ――神でありながら奴隷となった。



「貴方に命令することはいくつかありるが、最も守って貰いたいことがある」

「なんだろうか」

「俺の妹、カオルに必要以上近寄らないでくれ」

「……出来る限りは」



 そのカオルと言うのが、シルバーウルフに見えるようしていたフェンリルだという。

 一体どんな娘かと思いつつ、カルシフォンが仲間たちを呼ぶと、異空間からホワイトタイガーの獣人が出てきて、次にフェアリードラゴン、最後に……パール色の綺麗な髪を赤いリボンでポニーテールにして真っ黒な大きな目の神秘的な幼女……少女か? が出てきた。



「初めましてではないですね、一度殺されてますしシルバーウルフの時に会ってます。カオルです」

「あ……」



 声すら可愛らしい……。

 少し緊張した感じの喋り方がまた堪らない。

 嗚呼、やはりこの子だ。

 この子こそが俺の伴侶。

 何としてでも、この3年の間に絆を結ばねば!


 その後、ホワイトタイガーの獣人がサトリ。

 フェアリードラゴンがアーバント爺、通称:お爺ちゃんと呼ばれていることを知った。



「基本的に全員モフモフなんですよ。獣人にはなれますが」

「もふもふもふりんPTなの!」

「そこで、貴方にも獣人になって貰うべく、私にの宝箱にあった獣人化のアクセサリーを付けて貰いますね!」

「獣人化か……俺は何になるだろうな」

「絆のあった動物の姿になる……とワシの持っている知識ではなっておるが、お主と絆のあった動物はなんじゃ」



 そうアーバント爺に言われ、父の乗っていた馬であることを告げると、「ならウマ男になる可能性が高いのう」と口にしていて、受け取ったアクセサリーを首にかけると淡く光って耳と毛艶のいい尻尾が生えてきた。

 確かに……馬になっている。

 父の馬は黒い馬だった為、俺の黒髪にも耳は黒く生えていて確かに……何処からどう見てもウマ獣人にしか見えない。

 しかも、父の亡き馬の力を感じる……守ろうとしているんだろう。



「これでモフモフPTは出来あがったけど……駄女神」

「はいい?」

「ヴィーザルのご飯の用意お願いできる? 草食獣のご飯は用意してないのよ」

「はい、お任せくださいませ! ヴィーザル様が食事の際は獣人国に到着するまでは神々の世界での食事で許してくださいね」

「「はーい」」

「草食が俺だけなら仕方ないだろうな」



 こうして、俺達は一路獣姿になって……俺は馬の姿になって獣人国へと皆と一緒に走り出す。

 新たな旅の門出のような気がして――ワクワクしたのは言う迄も無い。



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