第14話 これからの旅は、兄妹プラス?
「お祝いだー!」といっても、ご馳走は私が狩ってきたモンスターの亡骸ばかり。
駄女神は「うっぷ」と口にして去っていったし、私たち親子は各々好きな魔物を母や兄から聞いて取り出し、私も適当に取りだして食べた。
無論、私は【食】の魔法を使って霞を食べるという、なんともいつも通りの料理だったけれど、生前母が誕生日にと色々用意してくれたものを想像しながら霞を味わった。
「それでお母さん、ヴィーザルはその後どうなったの?」
「そうね……城では陛下が殺されて、第二継承者である陛下の兄が王を務めるそうよ。母親も殺したそうね」
「そう……」
「神でも親殺しはとても罪が重いの。今回どういう結果だとしてもだけど……。そうね……ヴィーザルは親から放置されて育った子でもあるから、情状酌量はあると思うわ」
「そうだったのね」
「それでも親殺しは許されませんよ」
「それはそうだけど……何処に世界にも【毒親】っているじゃない?」
「まぁ……確かに」
そう言うと母は興味を示したようで、毒親とはどんなものか説明すると烈火の如くキレた。
「我が子に対して何たる! 許せません!」
「お母さん落ち着いて」
「そうですよ母上。今日はお祝いです、カオルが獣人化したのですから今日は落ち着きましょう」
「もう、あなた達は呑気すぎます!」
「でも、実際ヴィーザルはそんな親元で生活してたから、私に執着したのかしら? それともフェンリルに執着しないと自分を保てなかったのかしら?」
「さて、どうだろうね。どちらにせよ執着する理由は『強い』という理由が殆どだろう。本気で恋する男ならば兄である俺から奪ってみろと言いたい」
「きゃあ! お兄ちゃん素敵!」
「カルシフォンは昔からカオルにだけは甘かったものね」
クスクス笑う母に私も照れつつ、私だけが獣人の姿だったけれど兄にすり寄ると、モフモフが最高で、モフモフが気持ちよすぎて蕩けそうだった。
あかん、この兄モフ最強や。
「はぁ……霞を食べるのも良いけど、兄を吸うのもまた良し……」
「ふふ、君は昔から俺の匂いが大好きだな」
「お兄ちゃんの香りだーい好き。お母さんの香りとまた違うけどすーごくいい香り」
「それはとても光栄だな」
そう言って尻尾をフリフリさせるお兄ちゃん素敵です。その尻尾にしがみ付いていいですか? え? ダメ? 残念です。
「そう言えばお兄ちゃんはどこでレベル上げたの?」
「ああ、女神様が別のダンジョンにな。そこで一気に上げていった感じかな」
「なるほど」
じゃあ最初に消えていた点はお兄ちゃんだったのね。
それで見つからなかったのか。
でも無事で良かった……。他の兄弟姉妹は残念だけど……仕方ないからね。
「裁判はもっと長くかかると思うから、今のうちにやる事やって獣人の国まで行く準備をしましょう。フェンリルの姿になれば数日走れば到着する筈です」
「後は仲間になるモンスター次第だね」
「なら、二層の隠し部屋にいるフェアリードラゴン、一層の隠し部屋にいるホワイトタイガーを仲間にして出ようか」
「そうだね」
「それに、モンスターばかりではお金にならない可能性もあるから、金銀財宝も貰って行こう」
「それがいいわね。ただ、お母さん神様に呼ばれていて暫く戻ってこれそうにないのよ。後の事はカルシフォンとカオルで決めて行ってくれる?」
「分かりました」
「はーい」
こうして食事を終えると母は神の国へと戻り、私と兄は今後の事を考え、余ったスキルで【彫金師】【付与師】【錬金術師】【木工職人】などを選んでいく事にする。
兄は前にレベルを上げに行ったところが鉱石や宝石が大量にある場所だったらしく、【彫金師】を選んでいる様だ。
「カオルは魔法が得意だから、【付与師】がお勧めだね」
「そうだね、お兄ちゃんの作ったアクセサリーに付与するっていうのもありだし」
「そうすれば、路銀に苦労することも少ないと思う」
「ふんふん」
それなら、余ったポイントは【付与師】に振って置けば、前回取らなかった【薬草の知識】と合わせて丁度良かった。
後はお風呂にもゆったり入って兄も私の部屋の隣を自分の部屋とした為、すっかり癖になったフェンリルの姿になりベッドで眠りつつ幸せな睡眠時間を過ごした。
翌朝、いざ私と兄、そしてプリシアちゃんとでフェンリル姿に戻り第三層を駆け抜け、溶岩地帯を抜けつつ鉱石を集めながら進み、草原地区にでた。
この一帯が第二層となるらしい。
「わ――……広いね」
「広いが故に隠し部屋も分かりにくい。けど、慣れてる人には直ぐ解るらしいんだ」
「へぇ」
「大体木々の多い水場にあるらしい。そこを目指してみよう」
「はーい」
こうして一目散に走り出すと、オークやオーガの姿も見る事が出来た。
確かに第二層って感じ。彼らは私たちを見ると一瞬ビックリするが、攻撃しない事を知るとどこかホッとしながら去っていった。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「もしかして、私たちオークに怯えられている?」
「オークやオーガたちには恐れられるだろうね。神格持ちとはそれだけで意味がある」
「なるほど、それで神格持ちになって欲しかったのね」
「そういう事だな。おっと、見えてきたぞ」
お兄ちゃんの言葉に、森の中にフェアリー族がフワフワとんでいるエリアに到着した。
何でもこの辺りのダンジョンにフェアリードラゴンがいるらしい。
倒せるのかと言えばお兄ちゃんはYESと答えた。
「相手がレジェンドの場合は苦戦するけど、レジェンドのフェアリードラゴンなんて早々お目に掛かれないよ」
「でも、時間が経ちすぎていたりすると魔力溜まりが出来てレジェンドになるのよね」
「そうだね。そうなっていたらレジェンドだ」
「大丈夫かしら? あまり人もいなさそうだけど」
「魔力溜まりは何処にでもできるからな。魔物がスタンピードを起こすのも魔力溜まりが原因とされているんだ」
「それを払うのも冒険者の役目……だけど」
「実際は魔力溜まりが出来たら冒険者じゃ対応できない場合が多い。母上レベルの冒険者が必要になってくる」
「ですよねー」
そうなると、冒険者としての依頼は魔力溜まりの駆除がメインになりそうな気がする。
母もそれをメインにしていたようだし、子である私たちもそうなる可能性が高い。
「と、あったぞ。ダンジョンだ」
「どこどこ」
「この水溜まりに見えるのをよく見てごらん?」
そう言われてジッと見つめていると階段が出てきた。
なるほど、慣れている人じゃないと分からないとはそういう事か。
木の根元にある水たまりが幾つもあるけれど、それのどれかが階段になってるのね。
「では、第一仲間モンスターを目指して」
「テイムします!」
「援護 するよー」
こうして私たちは階段を降りて行ったのであった――。
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