第13話 最終試験! キメラを倒せ!

 ちなみにだが、魔法を使う上で凄く便利な言葉を思いついたので、魔法攻撃する際には必ず使っている魔法がある。

 それは【暴走魔法】と言う、必ず魔法がクリティカルヒットするチートな言葉だ。

 ちなみに無属性は魔法の重ね掛けが出来る為、本当にヤバイ時は【暴走魔法】を二重にして挑む事にしている。


 ただし、重ね掛けが出るのは2つまでと言う制約がある為、暴走魔法+速度アップまでは可能でも、暴走魔法+速度アップ+魔力アップなんてことは出来ない。

 なので、普通の敵なら【暴走魔法】+【魔力増量】とかで一撃を重くしてクリティカル! と言うのが普通なのだ。


 普通なのだが――。



「ゴギャアアアアアアアアアアアアア!」

「「ひいいいいいいいいいい!」」



 絶賛キメラ退治中、一匹だけ倒していた筈なのに、雄叫び1つで仲間を呼び寄せて3匹のキメラと戦闘中である。

 兄は高みの見物。私が倒せると信じているのである。

 プリシアの【束縛】も直ぐ弾いてくるし、とてもじゃないけど命カラガラ戦ってる感じで……。



「も――いやぁあああああ!」

「プリシア 生存保証 ならない 不甲斐なし これでは ただの スライム」

「プリシアちゃんシッカリしてー!」



 そう叫びながら移動に移動を重ね、3匹だけを何とかキメラエリアから引っ張ってくると、いざ勝負……と言いたいけど怖い。

 いいえ、お兄ちゃんが戦えると思ってるんだもの、頑張らないと!

【即死魔法】は敵のHPがかなり減らないと発動しない。

 ジリ貧との戦いになりそうだけれど、只管攻撃魔法をクリティカルで入れていく。

 運よく3匹共に目が暗闇で見えていないから明後日の方角に攻撃してたり、仲間同士で切り合いや噛みつき合いもしてるので、きっと混乱しているんだろうとは思うけど、お陰でキメラのHPがドンドン削れて行くので助かっている。

 そこに攻撃魔法をクリティカルでぶつけていくのだ。


 プリシアは敵のHPが残り幾つか、デバフとバフは何がついているのか見えるらしく、逐一教えてくれる為助かっている!



「全部のHP が そろそろ 残り3割 だよ!」

「ならいっちょやってみますか!」

「やったれー!」

「【範囲即死】!」



 闇魔法で最もたる攻撃魔法、範囲即死。

 無論攻撃魔法もあるけれど、攻撃魔法は余り聞かないモンスターが多かった。

 そこで範囲即死を聞きづらくとも使う用にしていたのが功を奏したのか、2匹はそれで倒す事が出来た。

 後一匹はミスしたようだ、ちくしょう!


 凄い勢いで経験値が入ってレベルが上がったけれど行き成り出てきたソレに驚いた。

【レベル上限を解放しました。神格が上がります。全てのステータスに神格化が上乗せされます。上乗せを随時しますか?】

 勿論はい! はいですよ! 今聞いてこないで! 命の危険!

【全ての魔法に神格化を乗せました。最初の神格化な為、ダメージは2倍からスタートです】

 それで構いません!!



「もうこれで死んじゃって! お願いします! 【暴走魔法】に【魔力増量】! これでお終い! 【即死魔法】!」



 そう叫んだ瞬間、真っ黒な球体がフワフワ浮いて出てきたな……って思った途端シュッと消えてキメラの中に入っていった。

 ズズズ………ッと入る途中「ギャヒイイイイイイイ!」と叫んでいたけれど、球体が入った途端キメラの首に巨大な両手鎌が出てきて、シュッとそれが動いた途端キメラはドサリと倒れて……死んだ。



「……怖かった、怖かった、怖かった! 3匹相手とか無理!」

「やった 勝った 生きてるって 素晴らしい!」

「おめでとう。まずはキメラをアイテムボックスに入れてからこっちにおいで」



 こうしてガクガク震えながらキメラ3匹をアイテムボックスに入れ込み悲鳴を上げつつ兄の待つ居住空間に駆け込むと、ヒンヒン言いつつ兄にしがみ付いた。



「よく頑張ったな」

「もう二度としたくないよぅ」

「ごめん、でも最終試験だから。神格上がっただろう?」

「うん」

「それをさせないと、どうしても強くなれなかったからスパルタで行ったんだ。もう暫くは無いと思うから安心していいぞ」

「一生無くていいですぅ」

「ははは! まぁ、後は自然と神格が上がるだけになるから気にしなくていい」

「はぁい……」

「いきた ここち しなかったです……」

「プリシアも付き合わせて悪かったね。君のサポートのお陰で妹は強くなれたよ」



 ヒンヒン言いつつ未だに兄に甘える私と、頭に乗っているプリシアを撫でつつ口にする兄から落ち着くように言われ、深呼吸を繰り返して落ち着くと、いざスキルボードを開く。

 お陰で欲しかった【世界の料理】と【料理スキル】は手に入れられそうでホッとするが、料理スキルはちまちま上げていくしかないだろう。


 こうなると、犠牲者が必要である。

 やはり度にヴィーザルを連れて行って毒見させるか?

 美味しく出来たらお兄ちゃんに……ふふふ。



「料理スキル低くても俺は食べるよ?」

「へ?」

「ヴィーザルを餌食にする必要はない」

「餌食」

「寧ろ、奴がカオルを嫁だというのが我慢ならんと言うかそういう感じなんだ」

「お兄ちゃん……っ!」

「こんな可愛い妹に恋をするのは解るけど、ロリコンのサイコパスにやる妹何ていないからな、はははははははは!」



 お兄ちゃんが静かに怒ってらっしゃる。

 私が斬鉄剣で殺されたって聞いた時も怒ってたものね。

 そりゃ兄弟がドンドン死ぬ中で、私まで死亡保障はあっても死んだとあれば、ヴィーザルを嫌いになるのは道理か。



「カオルは嫁に行かず、お兄ちゃんの傍に居ればいいんだ」

「でも、お兄ちゃんはそのうちお嫁さんを貰うでしょう?」

「どうだろうなぁ? 今のところ考えてはいないな」

「そうなのね」

「兄妹仲良くしていこう」

「そうだね!」



 こうして尻尾をブンブン回しつつ兄にすり寄って甘えていると、バリバリっと音が聞こえて母と駄女神が入ってきた。

 どうやら様子を見に来たらしい。



「やはり気になっちゃって。キメラ1匹でも倒せたかしらぁ?」

「はい! 3匹倒せました! 神格も上がるようになりました!」

「まぁ! 凄いわカオル! ではこれはそのお祝いね」



 そう言って大粒のオパールの付いたネックレスを私の首にかけたお母さん。

 これはお母さんが言っていたアクセサリーだろうか?



「それがあれば獣人化した時に、裸にならない筈よ。使ってみなさいな」

「はい!」

「初めての獣人化だね」

「うん! では行きます!」



 こうして初めて【獣人化】を使ってみたのだけれど、光に包まれて現れたのは――小さい手に小さい足……フリフリのスカートにぺったんこな胸……純白と言うか、パール色の長い髪はポニーテールで赤いリボンがついた目の黒い女の子がそこには立っていた。



「美少女……わぁ……」

「可愛いわぁ……」

「天使だな……」

「流石リルフィル様のお子様ですねぇ……」

「カオル 美少女? 美幼女?」

「お兄ちゃんと同じ年だから12歳の筈だよぅ」



 と言いつつも、身体が小さく生まれたこともあり12歳よりは幼くみえる。

 これが獣人の姿……フェンリルの耳は可愛いし、尻尾もふわふわだ。



「えへへ……獣人化ゲットだぞ――!」

「おめでとう!」



 最終目標だった獣人化!

 やっとゲットしました!

 後の目標をゲットするべく動かないと、そろそろヴィーザルもどうなるか分からないし……お母さんにそこは聞いてみてから明日から動こうと決意したのだが――。



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