最終日

 同じ電車、変わらぬ風景。当たり前の様にEの隣の席に座る。

「数学のテストヤバかった!」

「今日の予習範囲ってここよな!」

 私はうんとしか言わなかった。そのうちEも黙ってしまった。

 電車は何も知らずに運んでいく。私から言うことは沢山あった。それでも気の小さい私は、再度Eから始まる会話を待ち望んだ。


「疲れたね、」


違う。


「最終日だね、」


そうじゃないんだ。


「もう、来週から学校?私はまだなんだけれど、」

「あぁ、そうだな、月曜日からかな。」


 沈黙。私の事をどう思っているか聞くよりも、聞いた後のEの滑稽な目で私を見られる事を想像してしまい、声が出ない。


 ここまで女性と話せたのは、小学生以来である。私は自惚れているんだ、きっと何かの勘違いをしているんだとも思っている。


 これ以降Eと出会う事もないだろう。言ってしまおうか。


「あのさ、」

「どうしたの?」


「あ、駅に着いちゃった。ほら、行こう?」

「あぁ」


 電車を降りた。もう日差しはそこまで強くない。


 甲子園も優勝校が決まった様だ。私の夏が終わる。


 彼女は最後に、私に夏の終わりの風景を見せてくれた。

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恋は病なりや? 石ころ @deep-osakana

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