最終日
同じ電車、変わらぬ風景。当たり前の様にEの隣の席に座る。
「数学のテストヤバかった!」
「今日の予習範囲ってここよな!」
私はうんとしか言わなかった。そのうちEも黙ってしまった。
電車は何も知らずに運んでいく。私から言うことは沢山あった。それでも気の小さい私は、再度Eから始まる会話を待ち望んだ。
「疲れたね、」
違う。
「最終日だね、」
そうじゃないんだ。
「もう、来週から学校?私はまだなんだけれど、」
「あぁ、そうだな、月曜日からかな。」
沈黙。私の事をどう思っているか聞くよりも、聞いた後のEの滑稽な目で私を見られる事を想像してしまい、声が出ない。
ここまで女性と話せたのは、小学生以来である。私は自惚れているんだ、きっと何かの勘違いをしているんだとも思っている。
これ以降Eと出会う事もないだろう。言ってしまおうか。
「あのさ、」
「どうしたの?」
「あ、駅に着いちゃった。ほら、行こう?」
「あぁ」
電車を降りた。もう日差しはそこまで強くない。
甲子園も優勝校が決まった様だ。私の夏が終わる。
彼女は最後に、私に夏の終わりの風景を見せてくれた。
恋は病なりや? 石ころ @deep-osakana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
家族/石ころ
★6 エッセイ・ノンフィクション 完結済 7話
私感/石ころ
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 5話
無題/石ころ
★4 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
幼馴染/緋雪
★39 エッセイ・ノンフィクション 完結済 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます