4日目
4日目
またEと同じ電車だった。今日の私は余裕を持って会話できた。
学校の話になった。
「学校は体育祭とか文化祭終わったん?」
「体育祭は終わったよ。俺の学校は文化祭は高3生は参加できないね」
「え!高3生参加できないの?文化祭のキラキラした感じは楽しめた?」
「いや全く、出会いも何もなく終わったね」
「共学でしょ?クラスに好きな女子とかおらんの?」
「学年には女子は相当数いるけど、俺のクラスにはほとんどいないね」
「学年には?なんか面識のある女子とか廊下で会ったりしないの?」
「居らんなぁ」
「ふーん」
面白くない話をしてしまった様だ。
沈黙。気まずい雰囲気にしたのは私ではあるが、この何とも言えない空気感が一番嫌いである。かと言って私から話を振るような気の利いた男でも無かった。そうして電車を降りて、予備校へ向かう。
再度Eから会話が振られる。ありがたい事だ。
「こんだけ日差しが強いと日焼けしちゃう。日焼け止めとか塗ってる?」
「いや、全く。日焼けは気にしないからね」
「え、日焼けしてたらさ、くっきり二の腕が真っ白でなんかさ面白くない?」
「そうか?日焼けしてても何も思わないけどな」
「普通は肌を真っ白に保つように努力するもんだよ!」
「そうか。高校野球とかよく見てて、選手が日焼けしてるのを見て、よう頑張ってんなと思うからかなぁ」
「それは高校野球の話でしょ!」
「それはそうだな」
「日焼けしてるのが好きなの?」
「まぁ、気にならないって感じかな」
「ふーん」
それきりで今日の予備校までの会話は終わった。やはり今日も胸が異常に脈打つことはなかった。
なぜ好きな女子がいるかと聞いてくるのだろうか。そんな事をGoogleに聞いたとて何も無いだろうと思ったが、意外とこの世には同じ疑問を抱く男性がいるんだなと思った。
"女性から好きな人がいるかを聞かれたら脈アリ?女性心理を紹介"の記事が飛び込んできた。おもむろに記事を開く。
女性心理を解説してくれていた。全く手掛かりのない私にとってありがたいものだった。好意のアピール、何となく気になっている、単なる世間話等書かれてあった。
締めの言葉には"女性が男性に対して好きな人がいるのかどうかを質問するときは、恋愛対象かどうかは別として少なくとも相手の男性に興味があるというサインです。"と綴られていた。
なるほど。私は反応に困ってしまった。予想外の記事だった。1つの記事だけで判断するのは良く無いと考えた。他の記事も当たると、女性100人に聞いた記事が出てきた。書いている内容は全く一緒だった。前の記事の信憑性が増してしまった。
こう言うのは大体、自惚れるなとかが書かれているものだろう。どうすれば良いのかわからない。
女性とは分からないものだと改めて認識した。シュルレアリスムの様に、一般人の私からすればどこら辺がよろしいのか全く分からない。
好きな女子とかおらんの?と言う日本語に深い意味を込め過ぎである。世は令和だ。平安の様な、17文字や33文字にありとあらゆる意味を込める時代では無いのである。それよりも少ない文字数で正確に相手の気持ちを読み取る事など出来やしない。どの赤本よりも難しい。
だが、私からEの話ぶりを見るに、ただEも沈黙を嫌う様な感じがした。Eにその気が全く無いのに、私が勝手に自惚れているというのは一番滑稽で醜悪である。
明日で予備校のタームは終わる。明日で決着がつく。Eは最後にどの様な画を見せてくれるのだろうか。
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