3日目
やはり寝不足であった。それでも今日の朝食は色づいていた。
昨日と同じく駅まで向かう。予備校に入ってからが本番だ。ギリギリ電車に間に合い、呼吸を整えて、弱冷車に乗った事を後悔しながら、緑色の長椅子の端っこに腰掛ける。
隣に女子高生が座ってきた。私はスマホをいじって予備校の最寄駅に着くまで待っていた。隣から話しかけられた。女子高生はEだった。
意外にも私は胸が高鳴らなかった。慣れたのだろうか。
「今日学校だったの」
「そうか」
「古文難しくない?」
「古文単語覚えたら後は流れだよ」
私は何をらしくない事を言っているんだろうか。落ちこぼれの私が何を語れようか。
「最近英単語帳を買って覚え始めたんだよね」
「いいやん」
「意味書いてある所を折ってやったら良いって友達と話してやってみてる」
「見た所が一目で分かっていいね」
「確かに!」
「講師曰く、まだ英単語に1時間かけてもいいらしいよ」
この時ほど、英語講師に感謝した事はない。分からないなりにも授業を受けて良かったと思う。
「そうなんだ、あ、着いたね」
私にしては上出来なリードだ。会話が出来ていない訳でもない。
「予備校って、なんか胸がドキドキしない?」
「そうか?」
「駅から予備校までの道が特にドキドキする。」
「分からんなぁ」
「講師が威圧的だからかな?」
「そんなに威圧的か?」
「それでもドキドキする。」
予備校慣れ(?)していないらしい。そんな会話をしながら予備校の教室に入る。席は遠いので、会話はそれきりだった。
私はやはり恋の病に罹っていた様だ。正確に言えば恋をしている様だと惑わせる病だ。私は結局恋なんかしていなかったのである。ただ単に心の準備が出来ていなかっただけだ。
それきり、恋と惑うようなことは無くなった。
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