2日目
寝不足だ。ふらつきながらもリビングに出て朝食をとる。とうに世界は灰色の様に見えていた。寝れば病も治るのだと再認識した。
今日から予備校は新たなタームに入る。忘れ物が無いかのチェックをして家を出る。いつも通り外は暑い。駅まで徒歩10分。静かな住宅街の中を突き進む。
やっとこさ駅に着いた。汗だくである。弱冷車に乗りたくない一心で目の前にきた電車に駆け込む。今日も弱冷車の文字はない。ほっと息つき、緑色の長椅子に腰掛ける。
予備校の授業がいつの間にか終わった。意外と90分が過ぎるのは早いものである。そそくさと次の教室への移動の準備をして、教室を出ようとした。
後ろから呼ばれた。何か忘れ物でもしたかと振り向くと、Eがいた。急な出来事に脳が追いつかなかった。また胸が早く鳴りはじめた。
やはり気の利いた返事はできなかった。また気まずくなり下を向くと、勿論の事ながらEの服が視界に入る。最新の流行なのだろうか。Eの服は臍を出していた。それもまた、私の調子を狂わせた。最近の流行は破廉恥極まる。けしからん。
この授業に居たんだ!と問われて、居たよとしか答えられない。次も授業あるの?と問われて、あるとしか答えられない。終始会話はEが主導権を持ち、Eによって打ち切られた。次予定あるから、また明日!と言われた。おうとしか答えられない。
昨日と全く同じであった。改善の兆しは見えない。これには私は参ってしまった。また世の中の色彩が増えたが、今度はちっぽけな男の自尊心が打ち砕かれた。今だに動悸が治らない。仕方ないのかもしれない。自習室に逃げ込むしか無かった。
私は音楽を聴きながら自習をする人間で、これまでYouTubeのミックスリストに頼りきっていた。今日の私は久しぶりにYouTubeに注文した。恋関連のミックスリストを出せと打ち込めば、すぐに出てくる。ありがたい世の中になったものだ。
恋を歌った曲など数多あるが、私はそれまで一向に意味を解せなかった。今聞けば分かるかもしれない。
人間は常に学び続けないといけないのだなと実感した。それまで分からなかった歌詞が、まるで自分のことの様に感じられる。勉強そっちのけで、曲に心を奪われていた。
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