第三章 ベイルブルグ軍港奪還戦
「ほら泣かない泣かない。このお兄さん嫌みっぽくて上から目線で
「オイ、本気で
「
「ほぉ、手を
「それはてめぇも同じだろうが、この
六年後と同じように
今のふたりは部下ではないから、命令はできない。だが、スフィアがさっきから脅えて
「やめてください、ふたりとも。スフィア様が脅えています」
「フン、それがどうした。ガキは
すっと立ちあがったジルは、自分の両手首にはめられた
しんとその場に
「まずお
「おい待て、
「……
冷静なカミラに、ジルは正直に
ラーヴェ
「おい……ってことはこのガキ、例の」
「あなたたちは、北方師団に勤めている兵士であっていますか?」
ジークとカミラ、そしてまだ目を回している見張りの兵士の制服を見て、ジルは
「そうよ、なりすましじゃなく本当の兵士。この
「敵は北方師団の兵士になりすまして
「は、はい。あ、私、スフィア・デ・ベイルと申します……」
ジルに確認を求められ、スフィアが頭を軽くさげる。カミラがジルを見て笑った。
「ちっちゃいけどしっかりしてるじゃない。でも、アタシたち北方師団を
「つ、詰むって。これは、クレイトスからきた女の子の手引きだって……」
「そこからあやしいだろうが。
「ど、どういうことですか」
「う……」
スフィアの疑問に答える前に、
「ここ……は……はっ、あの女の子はどこに!? どうして上着だけになって!?」
「あらいいタイミングで起きたじゃない。見張りクン、アタシたちのこと覚えてる?」
「あ……はあ、あなた方は騒ぎを聞きつけて、助けにきてくれた……」
見張りに顔を見られないよう、ジルはそっとスフィアの
「あの……つまり、どういうことですか? 私達をここに閉じこめた賊達が、手引きした女の子をさがしてる……?」
「起こり得る結果を考えれば簡単よ。
「余計な一言をつけないと説明できない病気か、お前は」
「で、見事ベイル侯爵の私軍が賊を
さっとスフィアが顔色をなくした。ジークがそれを鼻で笑う。
「
「同感。でもそれが侯爵の立派な働きによるものならまだいいのよ。問題はそこじゃない。アタシたちが見張りクンの悲鳴を聞いて
「は、はい。敵は私にいったいどこへ行ったのかと何度も尋ねて……ですが私もさっぱり、気づいたらこの状態で」
ジルの上着をひろげて、見張りの兵士が首をかしげる。カミラが
「つまり女の子の手引きは敵の
「お父様……」
呆然とスフィアがつぶやく。ジークが「言い方」と
「では、我が北方師団も利用されたということですか?」
「今日はやたら警備が
「今は例の女の子が見つからないって騒ぎで、アタシらみたいに
ジークとカミラの言に見張りの兵士はうなだれる。どっかりと座りこんで、ジークが声をあげる。
「ベイル侯爵の軍がきたどさくさで国外
「こ、皇帝陛下に事実を申しあげればいいのでは!?」
「無理よ。見張りクン、こんな
「わ……私が、聞きます」
スフィアの言に、ジークとカミラが静かな目を向けた。それは貴族という特権階級に対する疑いの
「だから助けろってなら無理な話だ、お嬢様。この
「そ、そうではありません。
目を丸くする三人に、つっかえつっかえ、スフィアが説明する。
「私はそう簡単には殺されないはずです。密偵の女の子が見つからないならなおさら、
「でもねえ、北方師団のお
「でも、ちゃんと話せばわかってくださる方です。誰も、あの方と話そうとしないだけなんです。私がお話しして、皆さんは何も悪くないことをわかってもらいます。ですので
誰が見ても無理をしているとわかる顔で、スフィアが
ジークとカミラが、息を
スフィアは、自分が足手まといだから置いていけと言っているのだ。
(……ああ、ひょっとしてジークとカミラがラーヴェ帝国を捨てた原因は、彼女か)
あの六年後の世界で、スフィアは死んでいる。多少事件の中身は変わっているだろうが、北方師団の失態を
だが、彼女の言は父親に受け入れられなかった。それどころか、皇帝陛下の
そのあとジークとカミラはクレイトス王国で
自分達を無事逃がすためにたったひとり残った少女が、
ただの想像だが、そうはずれていない気がした。
「そんなことをしなくても、全員、助かる手はあります」
全員がジルを見た。ジルは見張りの兵士に声をかけた。
「見張っていた女の子の顔を覚えてますか?」
「わかります。あっ──わかりました、その子をさがして証言してもらう!?」
「さがす必要はありません」
かぶっている
ぽかんとそれを見ていた見張りの兵士とスフィアが、同時に
「あー!? ど、どこに逃げたのかと思ったら!」
「あ、あの、あのときの、ハディス様がつれてきた女の子……!」
「やっぱりね、女の子だと思った」
「まあそうだろうな。クレイトスからきたガキがそう何人もいるわけがない」
ジークとカミラは
ジルはぐるりと周囲を見回す。
「ジル・サーヴェルといいます。お察しのとおり、わたしが
ジルは座りこんでいるジーク達に振り返る。ぎりぎり、見おろす目線の高さだ。
「これは勝機です。策も単純明快でいい。
「……被害者のスフィアお嬢様を助け、軍港を取り戻すことであなたの密偵
「それだけではありません。ベイル
「は、はひっ?」
スフィアが
「どんな原因であれ、あなたが死ねば、そこを必ずベイル侯爵はついてくる。だからわたしは、あなたを守ります」
「あ、あなたが、私を、ですか……?」
「はい。ですがあなたには、お父上を告発していただくことになります」
さっとスフィアの顔が青ざめた。
「できますか。できなければあなたもいずれ、始末されます」
できないなら、スフィアを助けても無意味だ。
スフィアは取り乱さなかった。
「ひとつだけ……
「わたしで答えられることであれば」
「ど、どうして私を助けるんですか? 私はあなたの
「わたしは今のところ陛下に
「えっ」
スフィアのほうが
ここのしこりをのぞいておかねばあとあと
「わけあって
「じゃ、じゃあハディス様は……何か深い事情があって、あなたを……?」
そういうことにしておこうと、はっきり答えずに
「か、形だけの夫婦って、最近の子どもはすごいこと言うのね!?」
「おい。ならお前が皇帝陛下に
「そ、そうです。あなたがハディス様を裏切る可能性だって……」
「形だけであっても、互いにそれぞれを選んで夫婦になった理由があります。皇帝陛下はわたしを手放さないはずです」
「それに、しあわせにすると約束しましたので」
「……ハディス様を?」
「はい。ですから、わたしはスフィア様と同じ、陛下側の人間です。それを信じていただけませんか」
スフィアは苦痛をこらえるような顔で
だが、ジルは待った。ジークもカミラも、見張りの兵士もせかさない。
父親を告発するのだ。それが正しい行いだとしても、
そしてスフィアは、重い決断から逃げなかった。
「あなたを信じます、ジル様。私はお父様を……告発します」
ならば、ジルはその決断の重さに
「わかりました。わたしがあなたを全力でお守りします。──あなたの勇気に敬意を」
胸に手を当てて、
「ふ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「おい、本当に十歳のガキか? しかも男じゃなく女?」
「男女も
「では行動を開始しましょう。時間がありません。ベイル侯爵の私軍が着くまでにカタをつけなければ、
背後でひそひそ言っているのは放置して、まずスフィア、そしてジーク、カミラ、と順番に
自由になった手を見て、感心したようにジークが言った。
「ガキでもこんなに簡単に鉄を引きちぎるのか。聞いてはいたが、
「そんなわけないでしょ、この子ちょっとおかしいって」
「こ、皇帝陛下の婚約者にその言い方はまずいのでは……」
「そういえば、まだあなたの名前を聞いていませんでした」
「さ、先ほどからカミラ
「え」
「……
「も、もしかして知らずに呼ばれていたのでありますか!? なぜ……あ、見張り!?」
見張りクン、もといミハリが情けない声をあげる。それを聞いてスフィアが少し笑った。
立ちあがったジークが
「それで、どうするんだ。武器は
「まずここを出て、わたしたちと同じように
ばっとミハリが自由になった手を垂直に
「わ、我々以外の兵は聖堂で拘束されていると聞きました! ただ、負傷者が多いとも聞きましたが……」
「戦力にならなさそうよね。やっぱりアタシたちだけで逃げたほうがよくなぁい?」
「北方師団を見捨てるべきではありません。
北方師団と協力し、全員でスフィアを守ったのだという認識が必要だ。
「策があるなら、まぁいいけど」
「のりかかった船だ。お手並み拝見といこうか」
「では、ミハリは案内をお願いします。ジークとカミラはスフィア様の護衛を」
「かまわんが、お前の護衛はどうするんだ」
きょとんとジルはジークを見返した。うわあ、とカミラが痛ましそうな顔をする。
「完全に自分は対象外っていうこの顔……。
「そういうわけではありませんが……その、家の方針で。あの、心配しなくてもわたしは」
「確かにお前には魔力がある。お手並み拝見とも言った。だが、まだ子どもだろうが。策だけ言えば俺達がやってやる。下手に目立って敵に目をつけられたら、足手まといだしな」
素っ気なくジークに言われ、カミラに頭をなでられ、ミハリに何度も
どうしたものかと思っていると、スフィアに手をつながれる。
「
「そうよぉ。それに敵の情報に
スフィアとカミラの言葉に、ジルは自分の立場を考え直す。確かに、北方師団にスフィアだけではなくジルも守ったという功績を
それに、ジークとカミラの実力をジルは疑わない。
(ふたりの魔力の開花訓練したのはわたしだからな……その点だけカバーすればいけるか?)
「……では、お言葉に甘えて
「ふん。最初からそう言ってればいいんだ。──さて、まずどうやって
「ただし、
固まったスフィアの手を
「えっちょっと本気? そんなことできちゃうの? まっ──」
「時間がないので、泣き言はあとで」
右
「ちなみにわたし、
お前たちに、という言葉は持ちあげた
敵の悲鳴と
「皆さんの働きに期待します。
***
外が
(どうでもいい。人生、終わった……皇帝陛下が無能だったばっかりに)
どうも、皇帝陛下のつれてきた子どもの手引きで
助けがくるという希望はあまり持てなかった。軍港の占拠に加え、侯爵家の令嬢が死にでもしたら、北方師団の責任が
北方師団は
いや、本当は不自然に思っているけれど──どうして捕らえられているのは、平民出身ばかりなのだろう。いつもお前らとは
でも真相を知ることはないのだろう。そういうことは、ある。
もし自分が生き残ったとしても、
結局それが、自分のような人間にはお似合いの人生なのだろう。
そう思っていたから、聖堂の
「おま、どこからっ──!?」
中を見回っていた敵のふたりのうちひとりが、壁にぶん投げられて気絶する。それをぽかんと見ていたら、とつぜん後頭部をつかまれて体を折り曲げられた。その上を、もうひとりの見回りの
「助けにきました」
それはこんな
ぶちっと音がして、紙のように
まだ子どもだった。けれど
「今から四人、聖堂に入ってきます。そのうちひとりは、ベイル侯爵家のスフィア様です」
「た……助け出したのか?」
「はい」
「でも、君は……
「ジル・サーヴェルと言います。
今まででいちばん大きくざわめきが広がった。
「まさか、皇帝陛下が?」
「あの呪われた皇帝が、人を、しかも平民の俺達を助けるなんて
「これはベイル侯爵による自作自演の
ですが、と決して大きくはないがよく通る声で、彼女は語気を強めた。
「このような
それは少女の声ではない。上に立ち、導く者の声だった。
「動ける者はスフィア様を聖堂に保護
背筋を
初めて北方師団が敵に立ち向かうという姿勢を見せた
「ハディス! ハディス聞けよ、
ジルを見にいくように
げらげら笑っているその姿には
「彼女を守れと僕は言わなかったか? こうして
「だっていらねーって言われたし。すげーよ、実際いらねーわあれ。自力で脱出して俺が見つけたときには聖堂で敵と交戦してた」
思わぬ返答に、ハディスは生クリームを
「は? 交戦? なぜ彼女が?」
「今は手が離せないから、お前のとこに戻れって言われてさー竜神を
ひいひい笑ってラーヴェが
「んーうまい。何作ってんだよ」
「桃のムース。つまみ食いをしてないで答えろ。どういう状況なんだ?」
「スフィア
「軍港……それを本気で言ってるのか、彼女は」
「本気で言ってるし、やってるな」
あれだけの魔力を持っていて戦えるのだから、自力脱出くらいは想定内だ。だが軍港を取り戻すなんてことまでは期待していなかった。
「皇帝陛下の御為にって演説ぶちかましてんの。北方師団、お前が自分達を助けるために嬢ちゃんをよこしてくれたって信じてるぜ。お前の株、嬢ちゃんにつられて爆上がり中」
「……だから全部助けろってことか。なんて
これで北方師団の
「襲撃してきた連中に
「軍港内で暴れてるだけだから被害は出てない。嬢ちゃん、あちこちぶっ
「襲撃者を
さらに、ベイル侯爵が裏で糸を引いているところまで引きずり出せたら。
(スフィア嬢を連れて逃げてくるくらいは考えていたが……想像以上の
だが、いったいどれだけの
「再建費用はベイル侯爵家から
「お、じゃあ丸くおさめられそうか?」
「丸いかどうかは知らないが、落としどころはある」
「よかったな」
ムースを型に流し入れていたハディスは、意味がわからずまばたく。
「これでスフィア嬢ちゃんも北方師団もベイル侯爵家も、全部
びっくりして目が丸くなってしまう。
「……つ、つまり僕は……みんなに好かれる皇帝陛下になれる、のか……!?」
「いや、そこまで言わねーけど。でもいい嫁じゃねーか。案外、ほんとにお前をしあわせにするかもなぁ」
「や──やめてくれ、そんな」
いきなりはねあがった心音に、口元をおさえる。
「き、気分が悪く……み、水……」
「あぁうん、おめーもその残念さをどうにかしような……ふられるぞ」
「し、心臓に悪いことを言うんじゃない。なぜそうなるんだ」
「だっておめー、今のとこなんにもしてねーじゃん」
動きが止まったせいで、
「おいこぼれてる! タオルタオル、
「……い、いや、僕は桃のムースを作っていたぞ……それじゃ駄目なのか!? はっ今からベイル侯爵の私軍を
「まだ何もしてねぇ軍を私情で壊滅させるな、恐怖政治に戻ってんだろうがそれ……」
「だったら何をすれば彼女に嫌われないんだ!? わからない、難しい!」
「あーもうわかんねぇなら、せめて嬢ちゃんの望みを
「わかった、ムースを完成させればいいんだな!?」
「ちが──いや
頭を
わらわらと入ってきたのは、兵隊だ。制服の
つまり、ベイル侯爵の私軍だ。
「失礼
「護衛? 僕は今、ムース作りで
「軍港を
北方師団が軍港を
だが、それだけベイル侯爵にとってこの事態は想定外なのだろう。たかが十歳の女の子にこうも
(それは僕もか)
まさか夫の自分がベイル侯爵と同じでいいはずがない。
兵士達は
皇帝が逃げる理由などどこにもない。
ムースは冷やすだけだ。飾りつけはあとにしよう。
「埃を立てられては困るな。──そのまま、僕に
***
(
まさか、ハディスに何かあったのではないか。ラーヴェがついていれば平気だと思ったのだが、そもそもラーヴェが戦えるのか
ハディスはものすごく強いはずなのだが、勝った瞬間に血を
あの男はおいしいご飯とお
「おい、急げ! 聖堂のほうがいつまでもつかわからんぞ!」
大剣を
今は、ハディスの心配をしている場合ではない。
「今ので最後の船です!
ジークとカミラの
「飛ぶのはひとこと言ってからにしろ、舌を
「ほんと、ジルちゃん何者なの!?」
建物の屋根を伝いながら聖堂に戻るジルに苦情が飛ぶが、時間がない。
できるだけ敵に姿を見られないよう
すわ敵かと
「ジル様!
「
立ちあがったジルに、ミハリがはいっと声をあげた。
「ご命令どおり、出入り口と窓をふさいで防戦しております。とはいえ、囲まれているだけですが……隊長達が外に出られる前と状況は変わりありません」
「……隊長?」
自分の顔を指でさすジルに、ミハリや
「先ほど、皆で決めました。お名前で呼びかけると敵に正体が知られてしまいますし、指揮をとっていただいてますし……」
「なるほど。では、お言葉に甘えて──諸君の
倉庫を出た時点でジルがここにいることは敵に知られているだろうが、それはそれだ。気遣いと期待に
しかし、
だが、同じ動けない
「あっちも船を失ったからな。簡単には逃げられない。いよいよ
「そんなことしたら負けちゃうでしょ、これだから脳筋は」
「そのために船をぶっ壊して退路を断ったんだろうが。それ以外になんの理由が──」
「
裏で手を組んでいたとしても、表向き彼らはベイル侯爵の敵だ。北方師団がこうして戦っている以上、ベイル侯爵の私軍は襲撃者達に必ず
向こうは今から、ベイル侯爵に始末されない道を
「だが、やけになってこっちに
「わたしたちを
「おい、北方師団。俺がこいつらを率いてる頭目だ──取り引きをしようじゃないか!」
説明する前に、外から声が
「そっちに
「こちらを
聖堂の
カミラが
「ここ、
「……いきなり全滅の危機か。どうするんだ、隊長。軍港を取り戻すどころじゃない」
「そんなことはないですよ。やっと敵の将が出てきてくれました」
「いいか、四十待ってやる! その間にガキを
いーち、と声が響く。ジルはふと周囲を見回してみた。
(なんだ、見込みがあるじゃないか。全員)
むしろ指示をくれと待っているようにも見える。そういう目をされると、
「わたしが行きます」
「ちょっと。アタシらはあんたも守らないといけないって話を忘れたの?」
「そうです! ジル様だけを
「
立ち上がりかけたスフィアがまばたく。
縛ってくれと両手首を合わせて出すと、舌打ちしたジークが動ける兵に命じて
「大丈夫なのね?」
「はい。……スフィア様をお願いします」
カミラにだけ聞こえる声でそっとささやく。
「ベイル
「……聖堂内に敵がいるかもってことね?」
「神父がいたはずなんです。お願いします」
ジルの目を見て、カミラは頷いた。そのままジークにも耳打ちにいく。これでスフィアは大丈夫だ。
「ミハリ。わたしを突き出す役をお願いします。──隊長命令だ」
そう言うと、ミハリは言いたげにしていた何かを
数は三十をすぎたころだ。
「ぶ、無事、お戻りくださいね……!」
小さくミハリがそうつぶやいて、数をかぞえる声にかぶせて叫ぶ。
「取り引きに応じる! そちらに密偵の子どもをわたす、わたすから、やめてくれ!」
「よーし、なら出てこい」
「
「もちろんだ。こっちはそろそろ
ぎい、と内開きの扉があいた。
ジルの背後では、皆が作り直したバリケードの中で身を
まだ外は明るい。頭目らしき男が一歩、前に出た。頭目というには、まだ若い男だった。
「よし。確かにそのガキだな。ご苦労さん」
確認した
「そしてお別れ──」
地面を蹴ったジルは、火矢が放たれるより早く、頭目の顔面に
「お前らの
「はったりだ! 俺にかまわずこんなガキころっ──」
ぶんと右手を
「な、ん……?」
「ちなみに船を
頭目の背中を
「選べ。ここで全員死ぬか、おとなしく
「……っはは、油断したな! おい、今だ、
聖堂の中に向かって
「残念、スフィアお嬢様なら無事よ」
「神父が
カミラとジークの言に、踏みつけていた頭目の体から力が
「……俺だけでいいはずだ。部下は逃がしてやってくれ」
なかなか男気があることを言う。ジークとカミラも顔を見合わせた。ジルは
「お前が誰とつながっているのかを
「……。わかってんだろ。ベイル侯爵だよ」
「それを
「俺の言うことなんざ、そんなに重要かねぇ。お
「お、お頭ぁ! お頭、ベイル侯爵が攻めてきやがった! 約束が、
そこで走ってきた男は、矢で胸を
頭目が走り寄ろうとするのをジルは押さえこむ。殺気だったその目にささやいた。
「こらえろ」
「てめぇ……!」
「全滅したいのか! お前たちが捨て
頭目が両目を見開く。
「……お前が皇帝陛下をたぶらかした子どもか」
整列した立派な騎士達の中から、ひとりだけ馬にのった男が進み出てくる。お父様、とスフィアがか細い声で言った。
「幼くともクレイトスの
だから笑い返してやる。
「はじめまして、ベイル侯爵。軍港は北方師団が取り
「何を言う。間に合ったのだよ、私は」
ジルは踏みつけていた頭目を、ジークのほうへ
にたりと笑ったベイル侯爵が、片手をあげる。と同時に、上からいきなり大きな
何かと見あげた先には──
「貴様らを始末すれば、それで終わるのだから」
「全員、聖堂の中へ
ジルがひとりよけるだけなら問題ない。だが、よければ聖堂が燃える。防ぐしかない。
両足を開いて見あげた。上空から竜が口をあける。
(くる!)
竜の口からぷすんと音を立てて
ジルがまばたいている間に、
悲鳴が飛び
「ど、どうした、
「そんなことをできるわけがないだろう、
背後からよく通る声が響く。だが、
冷水を浴びさせられたように混乱が静まった。
竜の体から上半身だけ
「こ、皇帝陛下が……なぜこちらに」
「妻を置いて、僕だけが安全な場所に
すっと
「
「は、はい。陛下こそ、体調はよろしいのですか?」
ラーヴェの姿が見当たらないことを気にしながら目をあげると、ハディスが
「心配してくれたのか、嬉しいな。ところで、軍港はどうなった?」
ジルは急いでハディスの
「……申しあげます。軍港を
「陛下! その少女は
そう言ってベイル
ただの悪あがきだとしても、ベイル侯爵に指をさされた頭目が
頭目にとってベイル侯爵の軍は、目の前にある危機だ。ジルが密偵だと証言すれば、ベイル侯爵はたとえ一時的であってもこの頭目を守るだろう。それ以上の利をジルが提示しなければ、頭目がベイル侯爵を告発する意味がない。頭目はベイル侯爵の
下半身は竜に押しつぶされたままの
「軍港内はまだ敵が残っております。我々を信じて陛下は城でお待ちください。その子どもがただ賊に利用されただけの
遠回しにジルを助けるかわりに事と
「
「……今、なんて仰いました陛下?」
「あ、いや、なんでもない──ラーヴェ、うるさいわかってる。僕も今となっては妻帯者。妻の
体の中にいるラーヴェと話しているのか、よくわからないことをぶつぶつ言いながら、ハディスがジルをおろした。
そのままジーク達のほうへ向かっていく。
ハディスが何をする気なのかさっぱりわからず、ただジルは見守るしかない。
「よく頑張ってくれた。ジーク、それにカミラに、ミハリか」
名前を呼ばれたジークとカミラが顔を見合わせ、ミハリが声を
「……平民の我々の名前を、皇帝陛下が、なぜ……」
「なぜって。北方師団は
ハディスはぽかんとしているジーク達から頭目へと視線を動かした。
「そして──君も北方師団のひとりだ」
「は? 何言ってるんだ、こいつは……お、おいっ!?」
ジークから頭目をもぎとったハディスが、その首を片手でつかんで、持ちあげる。
「急な
「な、んっ……俺、は──がっ」
みしりと頭目の
「北方師団の制服がよく似合っている。赴任早々、大変だったね。よく生き残ってくれた。さあ、君と君の部隊が見聞きした
「あ、あの、皇帝陛下、いったいどういう……」
うろたえるミハリに答えず、ハディスは頭目を地面に投げ捨てた。げほげほと
「僕の妻はどうも、捨て
はっとジルはハディスを見つめる。頭目は目を白黒させていた。
「僕は妻にはひざまずくと決めている」
ハディスは冷めた目で頭目を見おろし、
「だが、僕は気まぐれだ。すぐに気が変わるから、早く決めたほうがいいよ」
「……」
「へ、陛下! 何を仰っているのですか、まさか──」
「……本日付けで正式に北方師団に着任しました、ヒューゴと申します」
青ざめるベイル侯爵をさえぎり、頭目──ヒューゴが、ハディスの前に
「なんなりと
それはヒューゴがハディスの駒になるという意思表明だった。ハディスは
「さて、これでひとつ片づいた。僕の妻は無実。次は君だ、ベイル侯爵」
「こ、このようなこと、
ベイル侯爵の言葉は、頭を
「君はもう死んだも同然だ。死人はしゃべらないものだよ」
「……こ……侯爵である私にこのような
「僕は言ったはずだ。妻が無実であった場合、それ相応の
さて、とハディスは小首をかしげた。
「どんな処刑方法にしようか。
「……っ」
「おや、顔色が変わった。どんな人間でもやはり情はあるらしい。よかった、人というものに絶望せずにすみそうだ。よし、まずはそちらからにしよう。火あぶりか、
「こ、この……っ」
「だが僕は誰彼かまわず傷つける
ハディスが独裁者の顔で、
それを見たカミラが鳥肌の立った両腕をなでていた。
「やだ、心を折りにいくタイプなのね、皇帝サマ……きゅんときたわ」
「甘いんじゃないのか。
「え? あ、あの……つまり、お父様はこれからどうなるのでしょうか」
「皇帝陛下は、罪をすべて認めてベイルブルグを差し出したら助けると仰ってます」
ジルの小声の説明に、スフィアが希望を得たように両手を組む。
だが、その
「慈悲をみせたつもりか!? さすが、母親を自殺させた皇帝はお
ベイル侯爵の
「お前が皇帝になるまで何人死んだ? どれだけ殺した! 私は正しいことをした!
「……」
「私に同情する者はいても、お前を
全員が
呪われた皇帝。その
「そうだろうな」
信じられない返答に、ジルは瞠目した。
「だが、僕が皇帝だ。お前たちが望む望まざるにかかわらずね。理解しろとは言わないよ」
それは甘えだ。かき消された優しいつぶやきを聞いたのは、ジルだけだろうか。
「ジーク、カミラ。ベイル侯爵をつれていけ」
ハディスの命令に、ジークとカミラは
ベイル侯爵は笑いながら引きずられていった。その声が届かなくなってから、ハディスはこちらに
「あ……あの、ハディス様、父が、申し訳──」
「心配しなくていい。命を
スフィアが、ありがとうございますと申し訳ございませんを
ハディスは微笑んで首を横に振っていた。
その横顔をジルはじっと見つめる。
その顔がいつか本音を見せないかと思っていたけれど、すべての後始末を終えても、ハディスは皇帝の顔を
「無理してんじゃねーかって? そりゃしょーがねーだろ」
ベイル侯爵の城──皇帝陛下に
現在、城主の住居区画からはすべて
「いちいち傷つきましたって顔してらんねーだろ。あんな
「はい。もっと
もっと
「
「あれは……うん、
「でもあんなふうに、人から傷つけられたことをなかったことにするのは、よくないと思うんです。いずれはそれが当たり前だと何も感じなくなり、自分にも他者にも
そして
「なるほどなぁ。確かにあいつ、人と関わってこなかったから
「なんでそんな育て方しちゃったんですか……絶対に反動きますよ」
「しかたなかったんだよ! 全部呪いのせいで誰も悪くない、人は善良だと思わせとかないとやばかったことが多々あったんだよ。それこそ、母親のこととか……あんなん母親が悪いんだよ、なのにあいつ……聞いてられなかったんだ」
いつかは
「……本当は
「でもラーヴェ様が
ラーヴェが小さな目をぱちぱちとまばたかせる。ジルは人差し指を立てて提案した。
「だから、今のうちに人に
「いやどんな皇帝だよ、頭にリボンでもつけて
「こう、ちょっと弱みを見せるんです! 陛下は見目は
感情にまかせてベイル
「それにわたし、傷ついているのを
「泣けって殴って、でも泣いたら泣くなって殴るのか。ひどいだろ、それは」
まっとうなラーヴェの批判に視線を泳がせたジルは、言い直す。
「でもその、せめて、わたしの前でお綺麗な顔をしないでいただければ……でないとやっぱり殴りたくなります。
「へーへー! なんだ、そういうことか。
ラーヴェが目をきらきらさせて上から
「どうしてそうなるんですか……」
「だって、それ、気になる子をこっち向かせたくて、いじめるのと
「子どもじゃあるまいし。そんな馬鹿な話があるわけないでしょう」
「いや嬢ちゃん、どう見ても子どもだけど」
そうだった。ごほんと
「わたしと
「今のところだろ。
「それもありますけど、まずわたしは、陛下と
「嬢ちゃんの言ってることわかんねーのは俺が竜神だからか……?」
「神と人間だとやはり違いはあるかと思います」
「……。まあいいや、ハディスも
手を
「あいついるから。
「……。えっ!? あの、まさか皇帝陛下がいらっしゃるのですか!?」
「そうだよ。形だけでも夫婦なんだからそうなるだろ。あと警備の問題」
「ちょっ待ってください! それってまさか初夜──」
「……陛下?」
「の……飲みすぎ……た……」
「あっ、お前ワイン飲んだな!? 嬢ちゃん、水! 水!」
「は、はいっ!」
かくしてその場は、ワインを一口飲んだだけで中毒
実際、そのあとハディスの呼吸はみるみる落ち着いていき、顔からも赤みが引いていった。
(……体調よりは、やっぱり精神的にきたんだろうな)
水をしぼった
「──きみ、は……紫水晶?」
「はい。
何度かまばたきしたあと、ハディスがぽつんとつぶやく。
「……看病してくれるのか」
「はい、
カミラもジークも得意なはずだ。だがハディスは首をゆるく横に振って、ジルが差し出した水差しから水を飲んだ。
「君がいてくれれば十分だ。……
「わかりました、お待ちを」
そのまま差し出そうとして、相手が皇帝であることを思い出した。切り分けるために持ってきた小型のナイフを手に取って考える。
(……皮をむかないとまずいよな……よし)
くるんとナイフを一回転させて、林檎に
「……」
要は皮がなくなればいいのだ、皮がなくなれば。文句を言うなら皮ごと食べるべきである。
そして再度差しこんだ刃は、やはり林檎を見事にえぐったあげく、ジルの額にその実を当てて落ちる。背後から笑い声が聞こえてきた。
「は、
「刃物を使えるからといって、誰でも料理を作れるとは限らないだけです」
ぶすっとして言い返すと、ハディスは笑いながら起き上がった。ジルをひょいと
「こうするんだ」
手本のように、ジルの手を動かして綺麗に林檎をむいていく。ジルはされるがままに自分の手元を見つめて、感心した。
「ナイフのほうを動かすのではないのですね」
「そう。……ほら、できた。少しコツを覚えれば君もすぐできるよ」
「……あの」
「ん?」
「……うさぎさんは、できますか。ど、どうしてもあれの作り方がわからなくて……」
誰かの看病するときにあれを作れる女の子になってみたかった。そう告白するのは
皮はきちんとボウルに捨て、皿の上で器用にむいた林檎を切って
そうしてジルを
大きな手が
「うさぎ……!」
「もう少しあれば、色々
「飾りも!? 陛下は天才ですか!?」
「そんなに難しいことじゃない。……僕には異母の妹や弟もいる。こういうことができれば少しは好かれるかと思って、練習しただけだ」
手を洗おう、と言ってハディスは朝の洗顔用に水がはられたボウルを取って、その中にジルの手も一緒につけた。そのあとはちゃんと手巾で手を
本当は、
それがわかったから、初夜だとか幼女
「君も林檎を食べるといい」
「はい」
きっと具合が悪くなったとき、林檎をむいてくれる人も、一緒に林檎を食べてくれる人もいなかったんだろう。ハディスが林檎を並べた皿を手にしたジルは、少し考える。
(……今のわたしは子どもだ。おままごとの延長、よし恥ずかしくない!)
寝台の上でハディスに向き直る。そして可愛いウサギの形をした林檎を、ハディスの口元まで持っていった。
「はい、陛下。口をあけてください」
「……僕がか?」
「そうですよ。陛下はただの酔っ払いですけど、看病が必要でしょう」
金色の目が
もぐもぐ林檎を食べるその動作と美しい顔の造形の差異がおかしくて、ジルは笑う。ハディスはむっとしたようだが、きちんと口の中のものを
「どうして笑うんだ。食べろと言ったのは君じゃないか」
「
「……弟?」
限界まで
「うちは大家族なので、わたしは姉も兄も弟も妹もいるんですよ」
「それはにぎやかで結構だが、僕が弟だって?」
「弟は
「大丈夫じゃない。僕が弟っていったいどういう……いや、弟は家族だな……?」
「そうですね。両親は
ハディスは
「家族って、そういうものか?」
「うちはそうです。わたしが助けを求めればまた話は別ですが、強いは正義が家訓なので」
ジルも林檎を食べる。少しクレイトス産よりも酸味がある気がした。が、これはこれでさっぱりしていておいしい。
「……そうだ。あの、ありがとうございました」
「なんのことだ?」
「今回のことです。わたしの希望を
ハディスは都合の悪いことを言いかねないヒューゴを殺せたし、ベイル
そうしなかったのは、ジルが全部助けようとしたのを
「……だって、君は
「それはもちろん。でも、全部を助ける戦い方なんてしたことがありません。今回、うまくいくのか自信はなかったです」
「……そうなのか?」
意外そうな顔をされて、ジルは
「そうです。今まではどちらかといえば自分の希望より、命令優先、みたいな……」
軍人なのだから命令に従うのは当然だ。でなければ軍が機能しない。それにジェラルドの命令はいつも効率的で
「それじゃあ、君が僕のお
不思議そうにハディスに言われて、胸がうずいた。続けようとしていた言葉に、なぜか恥ずかしさがこみあげる。
「その……だ、だから陛下に助けていただけたの、すごく
「そんなこと、わざわざ感謝しなくていい。お嫁さんを助けるのは、当たり前だし」
「……でも、そのせいで陛下がベイル侯爵にあんなひどいことを言われてしまって……」
ごめんなさいは
ジルはくるりと
「わたしは
二度と、あんな悲しい
「君……実は僕が大好きだろう?」
「……はい?」
「でなければ僕に生きていてほしいだなんて言わない!」
「好意の下限が低すぎませんか!? 家族なら当然、そう思います!」
言ってから、ハディスは家族との交流がないことを思い出して、また失言かと
だがハディスは傷ついたというよりは冷めたといった感じで、いきなり半眼になる。
「なるほど、それで僕は弟なのか……」
「え? あ、はい、そういうことです」
やけに理解が早いなと思っていると、ハディスは
「陛下?」
「……さっきから
「そういうことは早く言ってください!」
もう一枚のシーツとすぐそばに
「……失礼しますね、陛下」
断ってから、ジルはハディスのシーツに
「こちらのほうが早くあたたまりますので」
「……ああ、そうだな」
ハディスが
「つかまえた」
「だ、だましっ……!?」
「だって、夫を弟
「さ、寒いと言うから心配したのに!」
「いや、寒いのは本当だ。足の指の感覚がない。ちょっとまずい気がする」
そう言われると安易に
(くそ、子どもっぽいからつい油断した……!)
恥ずかしいやら
「
当然だ。でも何を答えても負け
「知ってるか?
「……陛下はそればっかりですね。ご自分はどうなんですか」
「だって君を好きになるなんてそんなひどいこと、僕はしたくない」
どういう意味だろう。でも、知ってはいけない気がする。
「なあ、僕を好きになってみないか」
「でないと僕は君を全部、
やってみろ、と
知りたいだなんて
だから頰が熱い意味にも、わからないふりができる。
──と決意しながらあっさり寝落ちたジルを、ハディスは見おろしていた。
「子どもなのだか大人なのだか、よくわからないな?」
だが悪くない。
十四歳未満、ラーヴェが見えるだけの
(僕をしあわせにする? 生きていてほしい? 本気で?)
なんて
彼女はわかっていない。どれだけ自分が危険なものに触れようとしているのか──でなければ、ハディスの内側にむやみに手を
(でももう
いつかお嫁さんができたら、ひざまずいて敬意を払うと決めていた。それがせめてもの、ハディスの誠意だった。自分を好きになってくれないかなんて
それなのに彼女がやたらと
『……そこでかっこつけようとか思ってくれるなら、まだ俺も安心できるんだけどなー……
体の内側から半分寝ぼけたような声があがった。ラーヴェだ。ジルを起こさないよう、思考だけでハディスは応じる。
(少しくらいいいじゃないか。もう
『
(別に、慣れている)
だから好かれてみたい。そう、自分は愛されたいのだ、彼女に。
恋はしない。そう言う彼女のかたくなさを暴いて中身を引きずり出す。
自分の中身が暴かれる前にだ。──そのためには。
「
『……あーうん。
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