第5-1:君とみた、あの丘で、もう一度桜を。

葉涙はるってさ」

 もう季節も一周しそうな冬場の十二月二十三日。

「今年のクリスマスプレゼントとかは何が欲しいの?」

「クリスマスプレゼントかぁ……。特段今欲しいものがないんだよな」

「相変わらず葉涙は物欲がないよね」

「ほっとけ」

 なんの変哲もない会話のやり取り。

 それが幸せに感じる程に、今、俺は幸福を感じている。

 目の前に可愛い彼女もいて、クラスメイト(一部を除く)にも恵まれ、俺は色んな人に実は好かれていたんだなあと思うと嬉しくなる。

「葉涙がなんか不謹慎なこと考えてそう」

「いや、俺らって意外と色んな人に好感あったんだなって思うと嬉しくなって。葵はそんなこと思わないんだっけ?」

「私はみんなのアイドルだからね。でも、好いてくれる人がいるのは嬉しいと自覚してるよ」

 目の横で横ピースをしているが、真顔のため感情がこもってなさそうに見える。

 でも実際はそんなことがない。

 すぐニマニマするし、すぐに照れるし、いろいろかわいいアイドル(?)なのだ。

「むしろ、葵は欲しいものとかないのか? 頑張って買う……んだ?」

 最後に疑問符が着いた理由。

 それは葵が両手を広げて「ハグしろ」のポーズをとっているから。

「ハグを所望します」

「急だな」

 そう言われたが、特に不満は無いので、言われた通りにハグをする。

「ん、私の望むクリスマスプレゼントは終わりました」

「嘘だろ」

 葵のクリスマスプレゼントは彼氏のハグ一回で住んでしまうほどに安上がりらしい。

「葉涙はバイトとかしてないし、お小遣いも月に五千円とかでしょ? その状態で無理させられないよ」

「いや別に無理はしてないけど……」

「この間も遊んでくれたしお金ヤバいのでは?」

「別にそんな事ないぞ」

「そうなの?」

 そうなのだ。

 あくまで「お小遣い」としてくれるので、遊びに行く時はまた別途くれる。

 その事を葵に説明したら、アホそうな顔をしていた。

「葉涙のおうちって意外と恵まれているんだね……」

「親父の収入が高いからそういうことが出来るらしい。感謝」

「じゃ、じゃあ……リ○トンの紅茶セット……」

 謎に顔を赤らめながら紅茶セットを頼む葵さんが可愛いです。

「葉涙は? 何も無いとは言わせないよ?」

 俺かぁ。

 本当に今欲しいものがないんだよな。

 だったら、これを言うしかない。

「俺は——」

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