第3−3:愛情と友情

 朝十時に叩き起こされ、そのままウィンドウショッピングに連れてこられた俺。

「最初は服でも見ようか。そろそろ秋物が欲しかったりするので」

「秋物が服の中で一番好きかもしれないのは俺だけか?」

「わかる。秋って涼しいし服もおしゃれだもんね」

 雑談を交えながら葵の後ろをひたすらについていく。

 と、そこに見えたのは、同じクラスの女子同級生だ。

「あれーっ。そこにいるのは蜜葉ちゃんと氷乃瀬くん? 今日も仲良くウィンドウショッピングですか?」

「うん、まぁ、そんなところ。香ちゃんがここにいるはなんか珍しいね」

「まあ、うちはいま野郎・・の付き添いで忙しいからね。まじでめんどくさい」

 そう言って一人の男が福屋に戻ってきた。

「なんの話?」

「なんでも」

 見た目は誰から見ても中の下程度。

 カエルに潰されたような不気味な声をしており、どうしても拒絶反応が出てしまう。

 そんな関わりたくないような男が葵に気がつく。

「おねいさん、もしかして今暇?」

「は?」

「え……」

「よかったら僕とお茶でもしない? 僕が奢るから」

「「「…………」」」

 俺は殺意が湧き、葵は苛立つ。

 葵の友達は「アホかこいつ」と言わんばかりの表情で奴を見ている。

 ふいに、葵に手が伸びたところを——

「——触れるんじゃねえ」

 俺がはねのけた。

「な、二人して何が言いたいんだ! あと、お前は誰なんだ!」

「俺か? 葵の彼氏・・・・だが?」

「なっ……」

「あんた、度胸だけはあるよね。バカだけど」

 俺が葵の彼氏と強く言うと、葵が小声で「もう、葉涙ったら」と言い、クネクネしてるのが想像出来る。

 はいそこ、後ろでニヤニヤしない。

「所詮ナンパもどきで私を取ろうとするなら数億年早いね」

 ニッコニコの笑顔で葵が俺の腕を掴んでくる。

 俺の腕に幸せな感触が広がった。

「なんでそんなことをいうんだ。僕に興味がないみたいじゃないか」

「実際興味ないしな」

「興味はないね」

「あんたに興味湧く人はいないと思う」

「みんなして酷すぎじゃないか……」

「覚えてろよおお」と謎に叫びながら走り去っていった。

「ちょ、まて! どこ行く!」

 そうして二人とも走り去っていき、俺と葵のただ二人だけが残っていた。

「……なんかごめんね?」

「何が?」

「なんか、葉涙に嫌なもの見せたかなって……」

「まあ確かに嫌だけど……」

「だから、ごめん」

 なぜ、葵が謝っているのだろうか?

 葵は被害者だっていうのに。

 何も葵に悪い部分はないのに、なぜ葵が謝るのか?

 それは彼女の責任感の問題だろうとは思う。

 責任感が強いのはいいと思うが、強すぎてもある意味問題だと少し、思う。

「葵に責任はないと思う」

「そう? 私が断れなかったから……」

「彼氏として思うところはあるけど、俺がいつでも守ってやるからな」

「葉涙……」

 なんか甘い空間でも生み出されそうな雰囲気になっている。

「ま、もう終わったしこの話は終わり! ゲーセン行こ!」

「おう!」

 なんか雑に切られたように見えるが、今は

それくらいに大事な事だったりする。

 いつまでも、この関係性が続けられたらいいな、なんて思ってしまう。

 世界の終わりまで。

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