第3-2:愛情と友情

「明日は何も起きないといいな……」

 そんな呑気なことを考えているうちに眠りについてしまった。

 


————————



「……る。はる」

「ん…………」

 なんだか可愛い声がして目をうっすらと開ける。

「はーやーくーおきろっ」

「うぎゃっ!」

 葵にラリアットをくらい、目を覚ます。

 脳天にクリーンヒット!!!

「あ、葵さん? なぜここに?」

「なぜって……もう十時だよ? LINE連絡しても既読がつかないから何事かと思ったよ」

 ぷぅ、と頬を膨らませる葵がかわいいです。

「まだ十時なのか……おやすm」

「オラァ」

「うぎゃあ!」

 腹パンをくらいもだえる。

「寝るな」

「すいません」

 上からの冷めた圧力を感じ、萎縮してしまう。

 次寝たらわかってんだろうな? と言わんばかりだ。

「ちなみに家に鍵をかけていたはずだけどどうやって家にしんにゅ……入ってきたの?」

「侵入というかお義父さん・・・・・が開けてくれたけど」

「お義父さんやめな」

 これから本当に結婚するみたいな言い草だ。

 まだ俺らは高校生なのに。

 それでも未来は誰にもわからない。

「ちなみに今はまだ夏休みだけど何時に起きたの?」

「六時」

「はっや」

「もうすぐで学校始まるからね。葉涙もそろそろ治さないと学校にいつも遅刻することになるよ」

「確かに……頑張って直すわ」

「よろしい」

 お母さんに諭されている子供みたいでなんか癪に触るけど事実なので否定ができないのが悲しい。

「ちなみにこの後は何をするんですか?」

「んー、特に決めてないけど……。理由がないとだめだった?」

「う……」

 その聞き方はずるいと思う。

 なんだかこちらが悪い気になってしまう。

「というのは冗談で、葉涙を堕としにきました」

「…………」

 こいつは……。

 なんて事考えていると、葵が近づいてきて抱きしめてきた。

「ふぁおいふぁん?」

「……苦しい?」

「いい匂いがします……」

 とか言いながら内心めっちゃ緊張しているのが窺える。

 心臓の音がドキドキ聞こえるし。

 女の子らしいいい匂いがするし。

 頑張れ……俺の理性……!

 パッと話されたと思うと、顔をぐっと近づけてきた。

「…………??」

「……なんだ」

「??????」

 なんだったのだろうか。

「何も感じてなさそうだったからこれじゃ効かないのかなって思っただけ」

 こいつは……。

 何も感じてませんよ風を装っていただけなのに。

 いつから葵はサキュバスに進化したのだろうか。

 葵を押し倒さないように頑張らなければ……!

「ま、とりあえず買い物にでも出かけようか」

「お、おう」

 そのまま家の近くにある大きなショッピングモールに出かけることにした。

 葵はラフな格好で、俺は夏場らしい涼しげな服装で。

 肩掛けカバンに財布とスマホだけ入れてそのまま外に出かける。

「今日の最高気温は三四度だって。信じられないくらい暑いね」

「これでもまだ平気ない方ってマジで言ってる? ってレベルだよな」

「本当にそれね。バスで行こっか」

「運賃は俺が出すわ」

「? なんかわからないけどありがとう」

「さっきいい思いしたので」

「?????」

 先ほどの女の子らしい柔らかい何かがとても幸福に包まれました。

 あの感覚はずっと味わってもいいと思うぐらいのレベルだと思う。

 でも、それを現実は許さない……ッッッッッ!

「葉涙がなんか変な事考えてそうな顔してる」

「ぎくっ」

 思考がバレた!?

 なんて変な遊びをしている。

「葉涙の思考なんてお見通しなんです」

「幼少期からの幼馴染には頭も上がりません」

「いいぞ敬え」

 そんな変な遊びをしているうちに近くの大きなショッピングモールに到着した。

「さて適当にぶらつきますか」

「そうしようか。行き先に困ったらゲーセンとかでいいと思う」

「いいね」

 幼馴染とのウィンドウショッピングが始まった。

(なんか不吉な予感がするが、気のせいだろう)


 その予感は、すぐに当たることになる。

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