第2-4:晴れ時々桜吹雪
「まずはあの公園にいこう」
そう言ってとある公園に向かう。
その公園は、葵との深い思い出に関係している。
歩いている道中、懐かしい思い出に浸っていた。
「この道を頻繁に葵と歩いていたんだっけ。
なんかいつになっても葵はずっとべったりで離れなかったような気がするな」
そう言葉にすると、桜が舞い、人が数人現れた。
「思っている感情を思い出すたびに現実世界に戻っていくのかもしれないな」
そう直感で思った矢先に、見慣れた影が二つ。
「葵と、俺……?」
なぜか自分もいることに驚いて言葉を失う。
その時にはこんなセリフが流れていた。
「ね、葉涙さ、わたしと付き合わない?」
(…………)
これは数ヶ月前に葵に告白された時の時間らしい。
(なんて言ったんだっけ……)
「俺、今誰とも付き合う気がなくて……。あ、葵が嫌いとか、そういう分けじゃないからな! ただ、今はその気分じゃないってだけで……」
「…………」
(こんなこと言ったんだな、俺は)
葵は口を閉じている。
何か考え事をしているのだろう。
「……わかった。じゃあ、その気になったら私と付き合えるってこととして捉えておくね」
「はいはい」
(…………)
俺は最低だ。
そんな軽く大切な親友を振り、しかも適当にあしらっていた。
(なのに、葵はずっとついてきてくれている。なんて心が広いのだろう)
ただ広いだけではない。
その後もおそらく冷めずにずっと関わってきてくれているのだ。
(この世界から戻ったらまずは謝ろう)
葵はああ見えて意外と寂しがりだ。
何時間もLINEで通話しながらじゃないと寝れない体質だったりする。
「…………」
ふと、やはり、と思うところがあった。
「やっぱり俺の一番の相手は葵なんだろう。それを確認すべく、いろいろな場所を回って確認してみるか」
そう言って学校や葵の家、秘密基地なんかにも行ったりした。
でも、どこに行っても葵と俺は常に共に行動をしている。
共にご飯を食べたり、ゲーセンで同じ商品をとったり。
「やっぱり、俺には葵がないと何もできないってことなんだろうな」
そう結論づけて家に帰宅する。
そして三枚目の紙に「蜜葉葵」と記す。
「名前を記したら、希望ヶ丘にその紙を貼り付けなさい。」
「希望ヶ丘か……」
あの丘には恋愛ごとがうまくいくという願いが込められたその街の住民しか知らない幽霊的観光名所になっている。
「悩んでいる場合じゃないな。早いうちに行かないと」
謎の焦燥感にたかられ、走って希望ヶ丘に向かう。
向かっている道中、さまざまな回想が流れた。
もし、俺と葵が付き合っていたら。
もし、その後も順調で、結婚までできたら。
もし、喧嘩をしてもすぐに仲直りができたら。
もし、親友の延長線上で付き合っていたら。
そんな他愛もない無駄話が好きだった。
二人だけで、そんな小洒落た話をするのが好きだった。
——でも、もし葵が俺じゃなくて他の誰かを選んでいたら?
それだけは許せないかもしれない。
それくらいには葵のことが好きで仕方がなかった。
学校に近くになるにつれ、人混みがひどくなってきた。
「クソ……! なんだってんだよ!」
人を押しのけ、ただひたすらに真っ直ぐに走る。
校門前は通勤ラッシュ時の通勤電車並みに人の密度が高くなっていった。
校門を飛んで入り学校の敷地内に入る。
そしてそのまま学校の敷地の裏側に侵入。
雑木林を通り抜け、希望ヶ丘に到着する。
「ここに、この紙をはりつければいいんだよな」
ふと足元を見ると一本の釘とゴムハンマーがすでに存在していた。
「……このハンマーで打ちつけろってか。全く、こんな世界はごめんだ」
そう言って紙を貼り付けた瞬間、激しい桜の吹雪に見舞われ、吹雪が止むと、目の前には親よりもよく見た幼馴染の顔が。
「葉涙……?」
「葵……」
葵は俺と認知した瞬間、涙を潤ませて俺の元へ駆け寄ってくる。
「葉涙ーーー!! どこいってたの!!」
泣きじゃくりながら抱きついてくる葵に俺ももらい泣きをしてしまう。
お互いにしばらく泣いたとに俺ははっきりと言わなければならないことを葵に伝える。
「俺、多分パラレルワールドにいたんだけど、気がついたことがある」
「なーに?」
鼻をすんすんと鳴らしながらも話を聞いてくれる葵に感謝をする。
「俺は…………」
とても大事なことなのに素直に口から出すことができない。
今更フラれてしまう可能性だってゼロとは言い切れない。
でも、今の反応を見ている限りそれはなさそうと感じることができた。
でも、恥ずかしさなどが募り、口に出すことができない。
「葉涙にとってとても大事なことだから言いにくいんだろうね。いいよ、ゆっくりで」
急かしてこないあたり、葵らしいと安心することができる。
でも言わないと今の現状からなにも進歩しない。
威勢を切ってはっきりと言うことにする。
一回の深呼吸を吐き。
「俺は、葵のことが好きなんだ」
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