第2-2:晴れ時々桜吹雪

 次の日に目の当たりにしたのは、ボーイッシュな姿の葵だった。

 つば付き帽子にショートパンツ、それでいて半袖。

 なんというか、目のやり場に困る。

「そんな軽装備で平気なのか?」

 それでも平然を装う。

「へーきへーき。何かあっても除霊してもらえばいいし」

 なんて軽い思考なのかこの女は……。

「さ、いこいこ」

 手を引っ張られ、俺たちは例の場所・・・・に向かう。

 歩く道中、様々な話をした。

 夏休みは何をしたいか、とか、夏祭りは何食べるか、とか。

 道を歩いていると時々に見えたビジネスマンはこんなに暑いのにスーツを着せられて何だか可哀想だとか。

 無邪気な小学生を見てかわいいね、とか。  様々な話をした。

 それでもって歩くこと約一時間。


 例の場所が近くなっている気配が身をもって感じられない。

 というか、同じところをずっと歩いているような……?

「葵?」

「ん?」

「俺ら、この辺の道一生繰り返してないか?」

「やっぱ、そう思うよね」

「さっきもこのスーツの人を見た気がするんだ」

 そう言って黒服のスーツの人を指さす。  

 たしかに何度も見た。

 腕時計を確認しながら、急いで駅の方向へ向かっている姿を。

 既に三回は見た記憶がある。

「もしかしたら、ここが既に鬼門・・・・・・・なのかもね……」

「…………」

 鬼門の中——つまり、既に不可思議・・・・は起きている、ということになる。

 すると、とても天気な良かったのに、大量の桜が急激に発生し、俺たちは飲み込まれていく——  

 その時に感じたもの——

 葵の手が離れていく感覚・・・・・・・・・・・だった。

「葵……!」

葉涙はる……!」

 虚しくも彼女は消え去り、俺は取り残された。

 白いモヤ桜吹雪の中でたった一人、俺は下界と取・・・・・・り外された・・・・・


「取り残された……?」

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