第12話 商業都市へ⑦
勇次たちは中間地点の街でのお金の補充を終え、すぐさま動き出した。街の賑わいが収まる前に、彼らは魔道具屋を訪れることに決めていた。商業都市に向かう途中で、ウイングの強化と魔力の向上を図るためには、適切な素材を手に入れる必要があったからだ。
街の中心部に位置する魔道具屋は、煌びやかな装飾が施され、店内にはさまざまな魔道具や素材が整然と並べられていた。店の入り口には精緻な装飾が施され、店内の明かりがまるで宝石のように輝いていた。勇次と高橋は、その豪華な雰囲気に少し圧倒されながらも、目的の品を手に入れるために店内に足を踏み入れた。
店内に入ると、整然と並べられた様々な魔道具が目に入った。店員は静かにその場に立っており、客が訪れるのを待っている。勇次と高橋が店内を見回していると、店員が静かに近づいてきた。
「こんばんは。何かお探しのものがありますか?」店員の声は落ち着いていて、心地よいものであった。
「はい、いくつかの魔道具を強化するための素材を探しています。具体的には、魔力の通りが良くなる金属であるミスリルと、出力を上げるクリスタルが欲しいのですが。」勇次は希望する素材について明確に伝えた。
店員はうなずきながら、背後にある棚からミスリルとクリスタルを取り出し、慎重に手に取った。ミスリルはその光沢と軽さで、魔道具の性能を大幅に向上させることができる金属であり、クリスタルは魔力の出力を増加させるために欠かせないアイテムである。
「こちらがミスリルです。」店員は金属片を慎重に手に取り、勇次に見せた。ミスリルは光を反射して青白く輝き、その質感は高級感を漂わせていた。「このミスリルは、特に魔道具の通りが良くなることで評判です。」
次に、店員はクリスタルを取り出し、その透明な輝きを強調した。「こちらはクリスタルです。出力を上げるための重要なアイテムで、魔力の増強に役立ちます。」
勇次はミスリルとクリスタルを手に取り、その質感と光沢を確かめながら、心の中でその価値を評価した。どちらも高品質であり、ウイングのさらなる強化には最適な素材であることは間違いない。
「これらを購入したいと思いますが、それぞれの価格はいくらでしょうか?」勇次は店員に価格の確認を求めた。
店員は計算機で価格を確認し、穏やかな笑顔で答えた。「ミスリルの価格は金貨50枚、クリスタルの価格は金貨30枚となります。」
勇次は価格を聞き、これならば予算内で購入できると安心した。彼は迷わず、両方の素材を購入することを決めた。
「それでは、ミスリルとクリスタルを購入します。支払いは金貨でお願いします。」勇次は財布から金貨を取り出し、店員に渡した。
店員は支払いを確認し、感謝の意を示しながら素材を包装して手渡した。「ご購入ありがとうございます。」
勇次と高橋は、ミスリルとクリスタルを手に入れた満足感を抱きながら、店を後にした。外に出ると、街の賑わいが収まっていた。
宿に戻ると、御者はすでに飲み物を手にしてリラックスしている様子だった。勇次たちは宿の主人に夕食をお願いし、少し遅れた食事を共にすることにした。食事が運ばれると、彼らは御者と共にテーブルに着き、商業都市についてのさらなる情報を得ることができた。
「商業都市は、実は魔物の素材を中心に成り立っているんだ。」御者の言葉に、勇次たちは興味深く耳を傾けた。「あの街には、魔物の狩猟を生業とする冒険者たちが多く、彼らが狩った魔物の素材が商業都市の主な産業となっている。だから、商業都市に行く前に、魔物に関する情報をしっかり把握しておくことが大切なんだ。」
御者の言葉に頭を抱える勇次たち。彼らは商業都市という名前から安全に商いで生計をたてている都市だと思い込んでいた。こんなところで異世界だということを実感するとは思いもよらなかった。そんなところに御者からさらに爆弾が投下される。
「俺たちが出発した帝都だが、実は商業都市を狙っているといううわさがあってだな。そのために異世界から兵士を召喚するなんて噂がたっていたんだ。まあ、確証はなにもないけどな。」
そういって御者はビールを一気に煽った。
御者の説明により、商業都市の実態が徐々に明らかになった。そして、勇次たち帝都で捕まった生徒たちをどうにかして忌々しい首輪から解放しなければならないと思った。食事が終わると、彼らは次の冒険に向けての意気込みを胸に、宿での夜を迎える準備を整えた。
あとがき
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妄想魔法~科学を添えて~ るいす @ruis
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