Ⅴ 仲良くなっても彼はトカゲ
いもむしを見送った後、ハートの女王は花壇の脇に人型の姿で倒れている彼、トカゲの側に駆けよっていた。
「リザード、大丈夫?」
ハートの女王が声を掛ければ苦しそうな声が聞こえる。トカゲも先ほどのいもむしと同じくこの奥のお庭に住み着いている住人であり、そして何より彼の好む水タバコの一番の被害者である。
「リデル…たすけ、て…」
助けてくれとハートの女王を見上げていた顔はガクッと力無く地に付し、維持できなくなった人の姿をパッとあるべき小さなトカゲの姿へと戻していた。
「ぅう…気持ち悪い…」
ーーーうん…リザードの切れたしっぽが、きもちわるい…!
いもむしの水タバコに苦しんでいるトカゲには悪いが、彼のダメージ表現なのか何なのか…切れたしっぽがうねうねと動いているのを見ているこちらも気分が悪い。
「これから夕飯だけど、食べていく?それとも休んでいく?」
気持ちを切りかえてハートの女王はトカゲをそっと撫でてから自分の手のひらに乗せた。
するとムクッと顔を上げてトカゲは言う。
「ああ、後で生きた昆虫とかねずみでもいいからくれ…」
その言葉に、ハートの女王はさらに一瞬動きを止めて固まった…。
ーーーお願いだから私の目ていないところでやって!きもちわるいから!!
頭では、リザードがトカゲだと理解しているつもりだ。
そして、彼とこのやり取りをするのも、いつものことであるが…どれだけ時間がたっても受け入れられないこともあるのだから。
「後で鶏肉を用意させるから!お腹すいたからってまたナイトを食べようとしないでよ!?」
前に何回もあったのだ。
チェシャネコが眠りねずみを追い掛けるのは理解できる…猫がねずみを追い掛けるのは良く見掛けるような光景だったから。
だが、トカゲが眠りねずみを追い掛けるのは少々シュールだと思う。
今はハートの女王の手のひらに収まるトカゲだが、眠りねずみを追い掛ける時の彼の姿はとても大きい。
なんでもリザード曰く、トカゲ界で最大の大きさとされる大型のトカゲでいつも狩りをしているらしい。
彼はハートの女王の手のひらに収まる大きさから狩りの時の大きさまで自由自在に大きさを変えられるらしいのだから。
「鶏肉か、ちょっとした大きさの哺乳類なら何でも食うぞ!」
「……ちゃんと言っておくから、もうやめて下さい」
ーーーだから、私に想像させないで!
心の中でハートの女王は察して欲しいとも思う反面、わざとなのだろうかとも疑ってしまう。
だって、チェシャネコの性格がアレ過ぎるのが悪いと思う…わざとなら、リザードの評価を改めないといけないと思うハートの女王だった。
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