第9話 お金で解決?リリィの初依頼

朝、ユウト、ミカ、そしてリリィは初めての依頼を受けるため、冒険者ギルドへ向かった。彼らが選んだのは、街の掃除という簡単な依頼。リリィにとっては冒険の初仕事で、ユウトも「これなら無理なく始められるだろう」と考えていた。


しかし、現場に着くやいなや、リリィの顔は不満でいっぱいになった。「掃除?汚れるのなんて嫌よ。こんなこと、私がやる必要なんてないじゃない!」


ユウトは苦笑しつつ、「でも、依頼だからな。やらないと報酬も貰えないし」と説得を試みたが、リリィは腕を組んでその場を動こうとしない。


「お金ならいくらでも出すわ。誰か別の人にやらせたらいいじゃない。私がやるなんて冗談でしょ!」と彼女はわがままを続けた。


ミカは肩をすくめ、「気持ちは分かるけど、依頼は依頼。ちゃんとこなさないと」と言って掃除を始めた。


ところが、その直後、ミカが不注意で店の看板にぶつかり、飾られていた花瓶を壊してしまった。音に驚いた店主が飛び出してきて、「おい、何してくれたんだ!この花瓶は高価だったんだぞ!」と怒鳴り声をあげた。


ミカはすぐに謝ろうとしたが、店主の怒りは収まらない。すると、リリィが前に出て、「いくらなの?その花瓶。私が弁償してあげるわ」と冷静に言った。


店主は一瞬驚いたが、「嬢ちゃん、そんなガキに払えるわけないだろ。口先だけで何を言ってるんだ」と言い返す。しかし、リリィは無言で財布から金貨を取り出し、店主の前に投げ捨てた。「これで足りる?庶民が使う花瓶の値段なんて気にしたことないから、足りなければ言いなさい」と淡々と告げた。


店主は金貨を拾い上げ、驚きと困惑の表情を浮かべたが、「…あ、ありがとう」と頭を下げた。


リリィは鼻で笑い、「お金で解決するのが一番よ」と言い捨て、その場を立ち去ろうとした。


ユウトはため息をつきながら、「リリィ、そんなやり方ばかりしてると、いつかお金じゃ解決できない問題にぶつかるぞ?」と注意した。


「私のやり方に文句があるの?」とリリィが反論したが、ユウトは苦笑して「いや、ただ心配なだけだよ」と答えた。


気まずい雰囲気を察したミカは、「ま、とりあえず依頼を終わらせようか」と提案し、三人は再び掃除に取り掛かるのだった。

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