第58話 第六階層 食肉花との戦い!
アル様は地上を行く父様の肩も、バンバン叩いていたよ。
「やぁやぁ、レイナード君は大毒蜘蛛の糸を採取しないとね! あの糸で織った織物は虹色の光沢を放つんだ! ミディちゃんたちがレン君のお嫁さんのドレスを織ると、今から張り切っていたからね!!」
「……はぁ」
父様は顔を引きつらせて、曖昧な返事をしている。
近くで聞いていたレン兄も表情を失っていた。
それにしても、レン兄のお嫁様が虹色の花嫁衣装でいいの?
ちょっと派手過ぎない??
だけど突っ走り出したら、ミディちゃんは止められないよ――――。
父様、ガンバッ!
レン兄もガンバッ!!
どうでもよさそうにしているリオル兄も、……頑張って?
第六階層の密林上空を、ソラタンに乗った僕とアル様が行く。
子ネコ型ニャンコズもこっちに乗り込んできた。
その周りを飛ぶのは七人の精霊さんと、ミディ選抜隊六人だ。
地上班にはミディ部隊が二隊同行している。
上空では大きな黒鳥が襲いかかってきたけど、精霊さんたちと雷の杖で立ち向かったよ!
ニイニイちゃんが大活躍して、無数の落雷がジャングルに落ちていたのはご愛嬌。
アル様が手を叩いて大笑いしていた。
落雷した場所に『モクモク君三号DX』を投下してから、ミディ選抜隊が魔石や素材の回収に飛んでいる。
これなら安全に素材を拾えるよね。
凄まじい速さで滑空し、一気に急上昇してくるさまに、全力で喝采を送ったよ!
僕とアル様は相談して、『モクモク君三号DX』を投下しながら進むことにした。
これなら地上部隊も魔物を回避しながら、極力安全に進めるんじゃないかと思って。
上空から真っ直ぐ直線状に落していけば、みんなも最短ルートを進めるでしょう?
僕って頭がいいよね~。
早速、精霊さんたちにお願いすれば、楽しそうにまき散らしているよ。
着火させるセイちゃんが大変そうではあるけれど……。
ああ! そんなにたくさん一箇所に落としちゃ駄目だよ!
精霊さんたちはキャッキャと飛び回り、飛んでくる鳥型魔物めがけて投球していた!
剛速球がお腹を貫通した鳥型魔物は、空中分解して消えた!?
地上に落ちていく魔石を、ミディちゃんが見事にキャッチしていたよ。
僕の精霊さんたちは、やんちゃだねぇ……。
しばらくすると、ジャングルが山火事みたいに煙ってきたので、適当なところでやめてもらう。
さすがにこれ以上は、地上部隊の視界を妨げてしまうよ。
精霊さんたちはちょっぴり残念そうにしていた。
終盤で大きな食肉花の姿が見えてきた!
周辺の木々よりも高い位置に花が開いているから、一目瞭然なんだけどね!
見た目は鬼百合に似た感じで、赤と紫と黒のまだら模様に、中央にはポッカリと穴が空いているんだよ。
その奥には歯のようなギザギザが見える。
取り囲むシベが意志を持つかのように
マジで悪寒がした。
「あれで獲物を掴んで離さないんだぞ!」
なぜかアル様が嬉々と説明してくれたよ。
突如、樹木の下から長いツルが無数に伸び上がってくる!
鞭のようにしならせながら、ソラタンを襲ってくるんだ!?
ビックリして周囲を見回せば、この辺り一帯が食肉花の生息地だったみたいだよ!?
「やぁやぁ! 前回は数体しか出会わなかったが、あのときは運が良かったようだね! この数と遭遇していたら、とっくに死んでいたかもしれないよッ!!」
アル様は陽気に「あっはっは~」と、笑っているんですけど!
ええ!
こんなときに不吉なことを言わないでよッ!
バシッ! とツタが毒粘液をまき散らしながら、ソラタンの真横を突き抜けた!!
バリアーに弾かれて実害はなかったけれど、確実に衝撃は伝わり、ソラタンがバランスを崩して落下しかけた!?
ヒエッ!!
その間にも無数のツルが襲いかかってくる中を、ソラタンはジェットコースターのような動きで、見事に攻撃を回避していた!
素晴らしい操縦テクニックだ!!
だけどすべての攻撃を回避できるわけではなく、強烈な打撃を食らってしまい、たまらずソラタンは上空へ飛び上がる。
垂直になっているんですけど!!!!!
乗っている僕に、もうちょっと気を使ってほしい!?
僕は必死に隣のアル様にしがみついていた。
たとえバリアーがあったとしても、風や重力は感じるんだからね!!
そんな僕を尻目に、アル様は至って平気そう。
「無茶を言ってはいけないよ! やぁやぁ! これはまたおもしろいねぇ!!」
楽しそうに笑いながら、襲い来るツタに魔法を放っていた。
精霊さんたちとミディ部隊も、ソラタンの動きに完全に追従して、合間に魔法で応戦しているんだよ!
君たちは空を泳ぐ魚の群れみたいだね!
ソラタンが上昇したら、地上五百メーテ付近より上には上れなくなった。
上からグッと空気に押される感じで、この階層の境界に到達したんだと思う。
「普通の冒険者には知ることができない情報だねぇ。どれ、メモしておこうか」
アル様は自分のマジックボックスから本を取り出して、魔法ペンで書き込んでいた。
「あれ? それってこのダンジョンのことを書いているんですか?」
「そうだねぇ、これからラドクリフ家はこのダンジョンの管理者になるわけだから、後世に伝えることが大事だろう? ――――ラビラビさんと相談して、連動する二冊の本を作ったのさ。私が書き込んだ内容は、ラビラビさんが保管するもう一冊にも記載されるんだ」
逆にラビラビさんが宝箱の内容と、魔法アイテムの研究結果を記録して、双方向で確認できるようにしたんだってさ。
「いつもは休暇中にまとめて書くのだが、今日は比較的余裕があるからね」
楽しそうに口の端を上げて、サラサラとペンを走らせていた。
アル様も真面目に仕事することがあるんだなと、僕は妙に感心していた。
だってほら、いつも飲んだくれているだけだもの!
ソラタンの上でそんな会話をしている僕らの回りでは、精霊さんたちが食肉花の群生地に向かって、猛烈な魔法攻撃を繰り出していた。
セイちゃんの蒼炎弾が爆ぜる!
ピッカちゃんの光線が地上に雨のように降り注ぐ!
フウちゃんの竜巻が地上の木々をなぎ倒した!?
クーさんとモモちゃんが巨大な
僕の側でポコちゃんとユエちゃんは応援団だね!
止めにグリちゃんが、『混ぜるな危険』マークのマジックバッグから、猛毒酸のビンを投下していたッ!!
エエッ!?
気づいたときには、眼下のジャングルが焦土と化していたよ――――。
「ちょいとやり過ぎかねぇ?」
アル様がのん気につぶやいているけど、このあとやってくる、地上部隊に申し訳ないよ!
「リポップするまでは、歩きやすくなっていいじゃないか! あっはっは~」
ああそうか、ダンジョンは時間で復元されるんだった。
ならば、さらに歩きやすくするために、周辺一帯に超絶浄化魔法を放っておこう。
きっとこれで大丈夫だね!!
ミディ選抜隊の六人が、浄化された地面に降りて、食肉花の大きな魔石と素材だけを回収して戻ってきた。
細かいものは地上部隊が回収してくれるだろう。
ソラタンに乗った僕とアル様は高速移動で、あっという間に第六階層を踏破することができた。
すでに一度踏破しているアル様と一緒だったにも関わらず、運よく銅色の宝箱を拾うことができた!
ひとつ違ったのは、魔法のブーツがふたつ出てきたんだよね。
なんでだろう~?
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