第40話 第五階層 突入!

 そんなわけで、結構な人数を引き連れて、ダンジョン第一階層から第三階層を踏破することになった。

 今回僕は浄化魔法を駆使し、ソラタンでひとっ飛びしたよ!

 もうゾンビとグールなんて見たくないもん!

 ほかの面々は全員陸路をひた走っていたけどね。

 クロちゃんシロちゃんは、ラビラビさんに強力脱臭クリーンマスクを、作ってもらったらしいよ。


 若い順番にニャンコズの背に乗っているのはご愛嬌。

 だってほら、我が家の場合はお年寄りほど元気で強いからね!

 二匹は軽快に最大出力で突っ走っていたよ。

 途中で双子が振り落とされ、必死の形相でゾンビから逃げていたので、仕方なくソラタンで救出に向かった。

「ううう、坊ちゃん。俺はこんなところに来たくなかったんです!」

「俺もきれいな空気の中で死にたい!」

 縁起でもないことを口走っているけど、その気持ちわかるー。

 双子は涙と鼻水にまみれながら、「坊ちゃんの気持ちがわかりました!」と叫んでいた。

 ちょっと暑苦しいね。

 メエメエさんがシラーッとして見ていたよ。

 キースとリオル兄は、クロちゃんの背中に必死にしがみついていた。

 う~ん、双子の根性がなさ過ぎるんじゃない?

 もっと鍛えたほうがいいかも!

 

 今回メエメエさんがついてきた理由はたったひとつ。

「メンバーが変われば、新しい宝箱が出るはずです!!!」

 えぇ?

 メエメエさんの目論見は見事に的中し、また宝箱が出たんだよね。

 メエメエさんは喜びの算盤そろばんダンスを踊っていた。


 ようやく到着した三階層のポータルから戻ろうとしたら、みんながいい笑顔で、「いくぜ第四階層!」と、声をそろえて叫んだ。

 えぇ?

 彼らの手には第四階層の宝箱から出た武器と、似たようなものが握られていた。

 どうやらアル様とラビラビさんが、刃のない刀剣を増産したらしい。

 ふと気づくと、第一討伐隊のメンバーも集まっていたよ!

「今度はギッタンギタンに切り刻んでやるぞ!」

 ジジ様が凶悪な笑みを浮かべていた。

 えー……。


 一行は雑魚魔物を蹴散らし、一直線で小山を目指すと、土と火の混合技で小山の周辺を真っ赤な溶岩に変えていた。

 ひとりでは無理でも、数が集まればなんとかなるんだね。

 あまりの熱さに耐えかねて顔をのぞかせた巨大カメに向かって、魔力剣で向かっていった。

「ヒャッハーッ!」

「うおぉぉおぉッ!!」

 僕はソラタンの上でダンジョンの空を見つめていた。

 地上では猛者たちが凄まじい形相で戦っている。

 力及ばずの場面ではセイちゃんが加勢して、ついに巨大カメの討伐を終えていた。

 全員で輪になって万歳三唱していたよ。

 そのテンションについていけないよね。


「このまま第五階層に行きますか!」

 なんてケビンが叫んだので、僕は猛然と抗議したよ!

「何言ってるのよッ! 今日はここまででお家に帰るの!!」

 心の準備ができていないもん!!

「それにここには我が家の全員がいるんだよ? 向こうで何かあったらどうするのさ!!」

 僕の主張は受け入れられた。

「よし! レンとリオルとキースと双子は戻れ! テオとライリーもだな!」

 父様ではなく、ジジ様が指示を出していた。


 その父様は従士たちに向かって告げた。

「同行はふたりまでだ。ふたりは戻れ! 誰がこの先に行くかは、お前たちで相談して決めろ!」

 面倒で丸投げしたんだと思う。

 従士たちが「エーッ!」と抗議の声を上げている。

「俺もですかッ!!」

 ヒューゴも選抜メンバーから外れる可能性に慌てていたよ。

 当然従士たちは揉める。

 そこへメエメエさんが寄って行って、ジャンケンを教えていた。

 おもしろ好きのアル様が首を突っ込んで、なぜかジャンケンに混ざっているね。

 それにしてもメエメエさん、その蹄でジャンケンができるの?

 よく見ればメエメエさんの手には、グーチョキパーの札がくっついていた。

 小道具の準備に余念がないね!


 こうして、意図せぬままに、ダンジョン第五歳層に挑むことになってしまったよ。

 ねぇ、ちょっとどうかと思わない?

 僕の大事な休日を返してっ!?



 むっすーと膨れている僕を、父様が宥めているあいだに、じゃんけん大会は終わった。

 なぜか従士以外の人までジャンケンを始めてしまったんだよね。

 家の人たちはみんな変なノリだねぇ。

 そうこうしているうちに、第五階層に挑むメンバーが決まったよ。

 アル様、ジジ様&カルロさん、父様と僕と精霊さんたちに、おまけのメエメエさん。

 もちろんニャンコズとソラタンは必須メンバーだ。


 今回は従士のケビンとイザークが勝ち残ったので、ヒューゴが涙を流している。

 カレンお婆ちゃんが「あたしに任せな!」と言って、ヒューゴを追い返していたよ。

 熊男のヒューゴが哀愁漂う背中を丸めて、トボトボと戻っていったんだよね。

「また次があるッスよ!」

 ルイスに慰められて、「うん」と小さくうなずいていた。


 ハイエルフさんからは、エルさんとスイさんが参加するそうだ。

 スイさんは魔法も剣も弓も扱える、万能型の魔法剣士なんだって。

「よろしく頼む」

 全員と握手を交わしていた。


 カレンお婆ちゃんは全員と面識があるんだけど、 僕とはお話したことがないよね?

「あたしは年寄りだが、剣豪のスキルを持っているのさ。まだまだそんじょそこらの若造には負けないから安心をし」

 そんじょそこらの若造と言われた、中年のケビンとイザークが微妙な顔をしていたよ。

「お婆ちゃん、頑張ってね!」

 愛くるしい笑顔で挨拶すれば、カレンお婆ちゃん相好そうごうを崩していたよ。

「おやまあ、奥方様にますます似てきたねぇ! かわいいかわいい」

 猫かわいがりされちゃった!

 そんな僕らの様子を、ケビンとイザークがジト目で見ていた。


「これから一緒に行動するのならば、姿を隠す必要もないでしょう」

 メエメエさんの号令で、七人の精霊さん&十二人のミディ部隊が、ついにその姿をおばあちゃんの前に現した!

 カレンお婆ちゃんは目を細め、口の端をちょっと上げただけで、黙ってうなずいていたよ。

 すべて知っているよと、言わんばかりの余裕の仕草だった。

 カレンお婆ちゃんは精霊さん全員と握手をし、頭をなでてあげていた。

 みんなも純真無垢な輝く笑顔を返していたよ!

 かわいいね!



 全員が挨拶を終えたところで、ようやく第五階層へ続く階段に向きなおる。

 代表してアル様が話を始めた。

「駆け足で第四階層まで踏破してきたわけだが、このダンジョンはかなり意地が悪い。この先も何が起きるかわからないので、皆も十分に注意してほしい」

 その言葉に全員がうなずいた。

 若干、僕一名がスンとしているだけだね!

 アル様はニヤニヤ笑って僕を見ていた。

「では、行こうか第五階層へ!」

 高らかに宣言すると、全員が軽い足取りで階段へと足を踏み出したのだった。


「もう最初から、ハク様はソラタンに乗っていてください。のろのろモタモタされてはみんなの迷惑ですから!」

 メエメエさんが僕をソラタンへ追いやったよ!

 そのあと僕の横にちゃっかり座っていたけど。

 僕の扱いが雑過ぎる!


「ハクは困ったときだけ助けてくれればいいさ!」

 アル様がいい笑顔で親指を立てていた。

「まぁ、今までハク様がおいしいとこ取りでしたからね。皆さんにも活躍の舞台を譲ってあげないと恨まれます」

 メエメエさんはまったりとつぶやいて、お茶まんじゅうをモギュッとかじっていた。

 なんだか釈然としないんですけど!


 果たして一行は、第五階層へと足を踏み入れた。

 そこは入り口付近が草原になっていて、百メーテくらい先に大きな林が広がっている。

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