第37話 第四階層 脱出!

 同時にセイちゃんの魔法が消えて、ガックリと力を失い落下するのを、フウちゃんとピッカちゃんが支えているのが見えた。

「クーさん! 冷やすために雨を降らせて! モモちゃんも手伝って‼」

「わかったー! モモちゃん、いくよー!!」

「キュイキュイ!」

 クーさんがモモちゃんを頭に乗せて飛び立っていった。

 そのあとをソラタンで追いかける。


 途中、眼下にアル様たちを確認すれば、「大丈夫だぞー!」と手を振っていた。

 その先でポコちゃんとグリちゃんと合流し、一路セイちゃんのもとへ向かって飛ぶ。

 ピッカちゃんがセイちゃんを背負って、こっちに飛んでくるのが見えた。

 フウちゃんとユエちゃんはクーさんと合流して、大地を冷やす作業に移っているよ。

 みんなの連携が凄いね!


「ボクもいってくる~!」

 ポコちゃんがソラタンの上から飛んで、手前の大地に手をつくと、広範囲の地面を空中に持ち上げ、赤い大地にぶん投げていたよッ!!!

 荒業だね!

 思わずメエメエさんとともに拍手していた。

 そこへピッカちゃんが到着し、グッタリと意識を失っているセイちゃんを受け取ったんだ。

「ありがとう、セイちゃん! ゆっくりお休みね! ピッカちゃんもありがとうね!!」

 セイちゃんをギュッと抱きしめてから、もう片方の手でピッカちゃんを抱いた。

 ピッカちゃんはニッパーと嬉しそうに笑って、すぐに僕から離れていったんだ。

「セイちゃん、くたくたなの~」

 ちょっぴり眉を下げたピッカちゃんが、グリちゃんと一緒に心配そうにセイちゃんをのぞき込んでいる。

「うん。あとは僕に任せて!」

 笑顔で伝えれば、ピッカちゃんとグリちゃんが安堵のほほ笑みを浮かべた。


 ひとまず、一件落着かな?


 地上ではアル様たちが動き出している。

 クロちゃんとシロちゃんに乗って、二手に分かれて走ってゆくよ。

 巨大な甲羅の付近で、アル様や父様たちが全員下りる。

 シロちゃんに乗ったハイエルフさんたちが、下の階層へ続く階段を探しに向かった。

 これで見つからなかったらお手上げだよね。

 甲羅の付近ではまだまだクーさんたちが冷却作業を続けているんだ。

 ミディ部隊も応援に駆けつけ、水と風と土の精霊さんが作業に加わり、ほかの属性の子たちはクーさんたちに魔力の実を食べさせているよ。

 何人かは周辺に落ちた下級魔物の魔石を回収していた。


 そういえば、あの巨大カメが出てから、それまでいた魔物に気づかなかったよね。

 メエメエさんも横でうなずいている。

「まぁ、ボス戦が始まったら巻き込まれるだけなので、雑魚は身を潜めているんじゃないですか? 巨大カメに仲間の魔物がやっつけられては、ダンジョンにとっては本末転倒です」

 まぁそうね。

 ダンジョンだって無駄な魔力の消費は押さえたいよね。

「そうですね。そう考えるとダンジョンもひとつの生命体のようなものです」

 ええ?

 その考え方だと、ダンジョンのお腹の中にいるような気がしてくるよ。

「間違ってはいないと思います。植物園もまた、ハク様の中にあるのかもしれませんよ?」

 えぇッ!!

 メエメエさんはニシシと笑っていた。

 怖いことを言わないでよね!



 セイちゃんに魔力を注ぎながら、父様たちのところへ向かう。

「やぁやぁ! 凄まじい魔法だったね! セイちゃんは大丈夫かい?」

 すぐにアル様が駆け寄って、セイちゃんの安否を確認してくれた。

「今は魔力切れで眠っているみたい。呼吸は穏やかだから大丈夫だよ」

「へいきー」

「つかれて、ねんねしてるのー」

 グリちゃんとポコちゃんが、モリモリと魔力の実を食べながら返事をしていた。

「そうかそうか、みんなも頑張ったねぇ。あとでご褒美をあげないといけないねぇ」

 アル様はニコニコ笑って、ふたりの頭をなでていたよ。

 

「それにしても、あの甲羅はどうですか? 魔石はあの中でしょうか? 宝箱は!?」

 メエメエさんが矢継ぎ早に質問している。

 宝箱が気になって仕方がないみたい。

 それが聞こえたのか、父様たちも笑っていたよ。

「そろそろ近づけると思うが、あの甲羅の中か、その下に埋まっているだろうねぇ? うっかり融けていたらどうしようか?」

 アル様が口元をニヨニヨさせて、メエメエさんをからかっている。

「それは困りマッス!」

 メエメエさんが慌てて甲羅へ飛んでいき、うっかり触って「アチーーッ!!」と叫んでいた。

 アホだね。


 なんてことをやっていると、シロちゃんとハイエルフさんたちが戻ってきた。

「向こうに下層へ続く階段がありました。転移ポータルもあります。いったん離脱しますか?」

 エルさんが巨大な甲羅をチラリと見て、確認してくる。

 これを持ち出す目途がつかないんだと思う。

「あの大きさと強度を考えると、ここで解体するのは難しいよね? 浄化魔法をかけてからスキル倉庫に取り込んでもいいかな? 解体はハイエルフさんたちに協力してもらって、地上でおこなうのはどう?」

 僕が提案すると、アル様とエルさんが同意した。

「そうだね。もたもたしていて、また閉じ込められては大変だ」

「ええ、解体くらいなら、我々の仲間もお手伝いできますよ」

 エルさんの横でライさんも大きくうなずいていたよ。

「よし! 決まりだな! 早めにこの階層を出るぞ!」

 ジジ様が大きな声で号令をかけた。


 僕は大杖で巨大な甲羅を浄化すると、スキル倉庫の魔法陣を呼び出した。

 スキル倉庫さん、回収お願いします!

『えええぇぇ~~ッッ!!!!!』

 虚空に謎の大絶叫が響いていたけど気にしない。

 はい、サクサクお願いしま~す!

 巨大なカメの甲羅がゆっくりと浮き上がり、縮尺を変えて魔法陣に吸い込まれていった。

『ギャーッ!?』

 そんな声を聞きながら、素早くスキル倉庫の魔法陣を消したよ。

 一仕事終えた僕は、額の汗をぬぐった。

 いい仕事をしたね!


 僕の横でメエメエさんが、ソウコちゃんを恐れてガクブル左右上下に揺れていたけど。

 ちょっと、ソラタンが小刻みに揺れるからやめてよね。


 落とし物がないか確認してから、全員で転送部屋へ走った。

 今回は一泊二日だったけど、地味にハードだったと思うんだ。

 ジジ様が「つまらん!」と、凄く不満そうにしていたけどね。

 次の階層はできたら普通の、そこそこ強い魔物がわんさか出るといいね?

 ついでに僕が傍観できるとなおよし!

 ジジ様のご機嫌を取りつつ、僕らはお屋敷に戻った。



 その日は温泉に入って、おいしいものを食べ、夜はグッスリ眠った。

 翌日は少し寝坊して、ゴロゴロしていたんだけど、午後になるとメエメエさんが呼びに来て、アッシュシオールの湖畔に連れていかれたんだ。

「甲羅の解体をするには、あそこの空き地が最適です!」

 どうやらすでにハイエルフさんたちも来ているそうだ。

 それならそうと、もっと早く今日の予定を教えてくれたらいいのにね~。

 バートンと精霊さんたちを引き連れて転移門を潜れば、輝く太陽の光に湖面が輝く湖だった。


「お~い、こっちだぞ!」

 アル様の呼ぶほうに目をやれば、そこにはスフィルさんのほかに、ライさんエルさんスイさんルカさんがそろっていた。

「こんにちは、いい天気ですね!」

 笑顔でのん気に挨拶をすれば、若干呆れたような苦笑を浮かべ、「いい天気だな」と返してくれた。


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