第114話 翼竜
図書館での閲覧はあらかた終わった。龍眼の図書館同様、蔵書は片っ端からタブレットに焼いた。俺のアカシックレコードスキルは、知らないものはダウンロードできないが、ちょっとでも知っているものはフルコンテンツをダウンロードできるという超チートだ。つまり、蔵書目録なんかに目を通して本の存在さえ確認すれば、後からタブレットでいくらでも読めるというわけだ。俺たちのことを気に入ったらしい玄武老人は、時間をかけてじっくりと親切に竜族の知識を伝授したがったみたいだけど、滞在は三日で済んでしまった。まあ、本を読んだだけでは理解できないこともあるだろうから、また立ち寄らせていただこう。
それより龍華に立ち寄った大きな目的の一つ。それが、翼竜のテイムだ。
俺たちは、既に結構な機動力を手にしている。転移陣を仕込んでおけば、一度訪れた場所には一瞬でファストトラベルできるし、超高速航海術びゅんびゅん、それから
陰陽五行説のうち、風を司るのは木にあたる。木は東、青龍の支配地域。交易港
翼竜の生息域は、石灰石柱が林立するカレンフェルト。よくファンタジーに登場する「竜の谷」ってヤツだ。それは滑空を主体とする飛行能力と、外敵から身を守りやすいという点で、理に適っている。急峻な地形を縫って陸から足を運ぶのは骨が折れるが、頼もしい飛行手段を得るためには彼らと力比べをし、パートナーになってもらわなければならない。
さあ、今から一緒に、これから一緒に、ボコりに行こうか。
だがしかし。
「「「キューン」」」
俺たちが到着するやいなや、現地の翼竜たちが
案内してくれたのは、華京まで乗せてくれた皇帝の翼竜たち。彼らからどんな意思疎通が図られたのかわからないが、最初から全面降伏、テイムどころか「命まではお許しを」って感じだった。あっれぇ。俺たちそんな蛮族系じゃないつもりなんだけど。しかし、戦わずに力を貸してくれるならありがたい。
「あのう、一人乗りでいいんで、できれば小柄な翼竜さんがいいんですが」
「「「キュキュー!!!」」」
翼竜たちが体を寄せ合い、震え上がっている。あっれぇ。なんか奴隷狩りみたいな雰囲気に。
「クラウス殿。子竜を寄越せと言われたら、みな警戒してしまいます」
俺たちを先導してくれた武官さんが
いかん。なんとかしてマイナスイメージを払拭せねば。というわけで、俺たちは救世主を召喚した。
「にょきにょき〜」
ディートリント様に抱っこされたアロイス様。その愛くるしいお姿に、翼竜たちも興味津々。なお彼については、ディートリント様が「私が懐に抱いていましたがなにか」で押し通した。
アロイス様は天才だ。植物魔法はすべからく「にょきにょき」で発動、しかも広範囲で容赦なくブッパされる。アルブレヒト邸で栽培していたフルーツたちを地面に置けば、たちまち辺りが果樹園と化した。
翼竜の主食は、魚と果物だという。魚はその辺の川にいるが、入り組んだ地形のため果樹が生育する土地が少ない。そのうえ翼竜は、知能は高いが農作業に適した体ではない。そのため、果物は彼らにとってご馳走なのだ。
しかも。
「なっ、なんだこの甘い果物はァ!!!」
取り澄ました武官の絶叫が響き渡る。そう、メインウエポンはウダールで発見したバナナだ。これなら翼竜の小さな手でも簡単に収穫できる。しかも甘くて美味い。翼竜たちが夢中になって群がるのを、アロイス様は「にょきにょき」しては再生を繰り返す。
「「「我ら一族、天子様に心からの忠誠を」」」
というわけで、里の翼竜すべてがアロイス様の前にひれ伏した。餌付けはどんな種族もテイムを可能にする。一転、翼竜たちが契約を巡って争奪戦を繰り広げ、俺たちは無事若くて優秀な個体と提携を結んだ。彼らは里の翼竜たちから「頑張って勤めてこいよ!」と送り出された。
なお、後日「まっくら〜」で乱獲した海の幸も持ち込まれ、里の中心部にアロイス様の神像が
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