第一章(五)



 それが彼とアリアとの出会いの冒頭である。アリアは困惑しながらも、すぐにこれは使えるかもしれないと考えた。そして

「突然、貴方が空から降ってくるからいけないんじゃない。巻き込まれたんじゃなくて、巻き込まれに来たの間違いでしょう!」

「そうかもしれないけどね」

「観光案内はあとでいくらでもしてあげる、というかこの状況なのよ、ヒーローとか善人じゃなくても、通行人でもなんでもかまわないから助けてほしいの!」

「……うん、なんていうか、むちゃくちゃ変な言い方のお願いだよね。気持はわかるけど、だからって盾にする?」

 眉を寄せるサガミに、アリアはぐっと顔を近づける。

「緊急事態なの、だからそれを脱するためなら遠慮なく盾にするわ」

「そう」

「だから」

 呆れた表情を見ても、助けてくれる、そう感じた。どんな言葉でもきっと、彼なら手を差し伸べてくれただろう。

 それはアリアの直感。当てになるかどうかは分からない。ただ、彼がソラから降ってきて、目があった時に感じたもの、この一つの希望を掴みたいと願った。


(私に、ソラの自由をください、神様)


 アリアは心の中でそう願うと、一つの希望の名を呼ぶ。

「サガミ」

 どうか助けてと、続く言葉は口の中に消えたが、サガミには届いたようだった。

「……わかった、置いてかないよ」

 そう言うとふっと息をついて瞳を閉じた。どうしたのかしらと思っていると、再び開いた彼の瞳が赤く光り輝いている。


 途端、足元に複雑な紋様を描いた鮮やかな赤の円が広がり――


「じゃあ、行こうか」


 その一言の後、円がアリアたちを瞬く間に吸い込んだ。


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