第5話
廊下を走っていると、廊下で立ち止まっている城野さんを見つけた。どうしたんだろう?
「城野、さん、どう、したの?」
「ん?あ〜、絵を見ていたの」
「絵?」
「そう!ほら、美術の授業の作品を見てたの!絵を見るの好きなんだ!描くのは苦手だけどね!」
「城野、さん、の、絵、は?」
「私?私のは、すっごい下手だからな〜これだよ!」
これと言われた作品を見てみると、色使いは綺麗だけど、線を見ていると確かに、苦手なんだろうなって思う。でも、なんの絵なんだろう?
「なんの、絵、ですか?」
「え?ほら、課題がさ、好きなものだったじゃん?私はね、空を描いたよ!」
「空....」
「そう!でも、雲を描くのが難しくて.....」
「空、なら、適当に、塗っても、大丈夫」
「適当?」
「うん、同じ、空は、どう、頑張っても、同じ、ものは、再現、できない、から」
「つまり......オンリーワンな作品を作れるってこと?」
「そう」
私が頷くと、城野さんは「もったいないことをしたなー!」と言っていた。
「そういえば、水牧さんの作品は?」
忘れてた。「放課後に貼っといて」って、先生に頼まれてたんだった。美術室の鍵も、もらっていたし......
私が制服のポケットから鍵を出すと、城野さんに「どうしたの、それ」と言われた。
「先生の、頼み事、忘れてた、ので」
「もしかして、貼り忘れ?なら手伝うよ!」
「いいん、です、か?」
「もう、何をかしこまってんの?あ!友達になったからには、敬語は禁止ね!」
「うん」
美術室のドアを開けると、絵の具の匂いがした。私は、作品を完成している棚に向かった。
「これが、私の、作品」
私が作品を見せようとすると、城野さんは「待って!」と言ってきた。
「作品は、貼ってからみたいから!」
「分かっ、た」
私は、廊下に戻って作品を貼った後、城野さんを呼んだ。廊下に行って、美術室のドアに鍵をかけた。
「コレが、私の、作品」
「コレって.....」
私が描いた作品は、金魚鉢。といっても、金魚鉢が主役ではない。サカナが主役の作品。サカナは、さっき自習室で城野さんと槙野くんに話した。虹色のサカナとカラス貝よりも黒いサカナ。正反対のサカナが泳いでいる金魚鉢の絵。
「コレって、さっき水牧さんが話してた。魚?すっごい綺麗じゃん!」
「この、虹色の、サカナ、は、友達」
「スイミーは?」
「スイ、ミーは、私」
私がそう呟くと、城野さんに満面の笑みで言ってきた。
「じゃあ、私はこの虹色の魚になれるように頑張る!だってこの魚、水牧さんの友達なんでしょう?なら、私がこの虹色の魚になるよ!」
その言葉に涙が出そうになった。
「ありがとう」
「ほら、行こう!槙野に追いつかれる!」
「うん」
下駄箱に着くまで、城野さんに言われた。
「さっきも自習室で言ったけど、私はそんなにすごい人じゃないよ。私は、教室では、ほらこんな性格だからさ、嫌われ者だし。友達なんて、槙野ぐらいだからさ。水牧さんが昼休みに走っていった後なんてさ、槙野、キレてたから嫌われたと思ったんだよね。だから、八つ当たりしちゃったごめんね」
って、言われたけど、別にいまはそのことはどうでもいい。
私も友達はサカナくらいだったから、お互いさまかなって思っちゃったんだよね。
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