第4話


 私が思っていることを全部吐き出すと、城野さんと槙野くんは、私の方を振り返った。そして、申し訳なさそうに城野さんは、私に向かって言った。


「私は....そんな凄くないよ。今さっきだって、水牧さんの大事な壺を割っちゃったし...」

「城野、壺じゃなくて金魚鉢だ」

「あ、そうそう。金魚鉢」

「いいよ、どうせ、いつか、割れる、から」

「でも、形見なんだろ?」

「うん、でも、お父さん、割り、かけた、こと、ある」

「えー!?あの、水牧さんを追い詰めたクソな人が!?」

「城野.....口、悪いって」

「しゃーないじゃん!そう思ったもん!」

「お父さん、金魚鉢、投げて、ヒビ、入ってた」

「サイテーじゃん!」

「城野....口、悪いって.....まあ、それが城野だもんなぁ」

「そうよ!」

「そんなドヤ顔されてもなー。ところで、水牧はどんな魚をイメージしてたんだ?」

「虹色、の、サカナ」

「「虹色??」」

「うん、あとは、カラス貝、よりも、黒い、サカナ」

「......カラス貝って、スイミー?」

「そう」

「懐かしいな〜スイミー!確か.....レオ・レオニだよね?」

「うん」

「壊したのは、私だけど金魚鉢どうする?修正つかないぐらいグッチャグチャだけど?」


 確かに.....修正がつかないくらいにグチャグチャだ。まあ、もうヒビがはいってたし、仕方ないよね。


「片付ける」

「そっか〜じゃあ、そこは責任もって壊した私が片すよ」

「珍しいな、城野にしては」

「何よ!珍しいって!ホント槙野ってひどいよね!ね、水牧さん!」

「え、そう、です、ね?」

「はぁ?勝手に水牧を巻きこむなよ!」


 巻き込むっていうか。元々、城野さんもよくこの自習室に来てたし......


「え〜?でも、私はこの自習室の常連だよ?」

「自習室を店みたいに扱うなよ。とりあえず、これを片付けるか」

「そう、ですね」


 私と城野さんと槙野くんは、気をつけて金魚鉢を片付けた。最初は、大きな破片を集めて、次に箒を使って小さい破片を、溢れた水を雑巾で拭きとって、最後に破片が残ってないかを確認した。


「やっと、終わった〜!疲れた〜!」

「ホント誰が壊したんだろうな?」

 隣には、「疲れた」を連呼している城野さんと壊した本人に皮肉を言っている槙野くんが座り込んでいた。


 私?私は片付けようとしたら、「私が壊したから」と城野さんが言って、槙野くんに「水牧はそこに座っとけ」と言われてしまったので、ほぼほぼ片付けをしていない。


「あり、がとう、ござい、ます」

「水牧さん、何を言ってんの?片付けをするのは、当たり前じゃん!そうだ!今日は一緒に帰ろう!あ、ついでに槙野も」

「おい、なんだよ!ついでって!まあ、帰るけどさ!」

「いいん、です、か?」

「いいよ!今日から水牧は私の友達!」

「とも、だち?」

「いやいや、ついさっきまで、水牧を目の仇にしてt.....イッタァ!」

「ね?水牧さん、コイツは“おまけ”だから、気にしないで!」

「はい」


 槙野くんが話している途中、城野さんが肘で脇腹を思いっきり小突いたから、槙野くんは痛そうな声をあげていた。


「じゃあ、俺が鍵を閉めるから、お前ら、さき行っとけ!」

「はい」

「うーっす!ほら、行こ!水牧さん!」


 城野さんが走って出ていってしまった。追いつかないと....!

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