第13話 私って誰なの?
私がこの世界に転生してから1か月も過ぎ去った。
あれから原作で起きるはずのイベントは一切起こらなかった。
あの日を境にホシキリの【時空救済】は使っていない。
というのも、詳しく調べてみたところ様々な問題を事前に解決している人物がいることが分かった。
それがエーデだった……それだけの話なのだ。
原作で起きた問題が起こらないのも、私とホシキリが彼を全くの別人に変えてしまったから。
つまり、この世界は『リバースクロノス』によく似た別の世界であって、だったらこの世界に私がいる意味はなんなのか……分からない。
「メア……今日は元気ないわね。アタシといるのは退屈?」
「退屈ってわけじゃないよ。でもさ……最近ホシキリちゃんと二人だけで話すこと減ったな~って」
「それアタシに言うんだ」
エレーナと話しながら思い悩んでいた私は、もやもやが晴れそうにもなく机に伏せて彼女の顔をじっと見つめる。
放課後はいつものように人気者のホシキリは引っ張りだこで私は一人。
そんな私を心配して寄り添ってくれるエレーナに愚痴をこぼす日々がここ最近は続いている。
何してんだろう、私。
結局、メア・アレストロとして生きてるし過去の記憶も中々思い出せないものだから、本当に転生したのかも分からないままだ。
……あのとき私とホシキリで【時空救済】したのは真の主役、エーデ・アレストロのためだったのだろう。
これが私の日常なら、それを甘んじて受け入れるしかない。
「そこまで思い悩むなら直接本人に言ってみたら? メアもホシキリも好きだけどね、本気で解決したいならそうすべきだよ」
「……エレーナ、ありがとう。やっぱりそれしかないよね」
そう言って私はすぐ起き上がり、エレーナに手を振りながら教室を後にする。
ホシキリの家と私の家は同じ。私は家で帰りを待つだけでその時は訪れるのだ。
真剣な話ではあるものの少し小っ恥ずかしいな。
外の明るさにはもう慣れた。
すぐに落ちる夕焼けも。
独特な魔力の匂いにも。
私には大きすぎる家も。
グランレイセ家に帰宅後、私は何気なくとある一室を覗いてみた。
その部屋は、誰も使っていないにも関わらず小綺麗に清掃されている部屋だ。
意味なんてない。私はただそうしたいからそこに手を伸ばしただけだった。
「……しないわ。決して絶対に」
その部屋の中から女の声がわずかに聞こえる。
手に取ったドアノブをゆっくりと離し、その小さな声を聴くために扉に耳を当ててみた。
ああ、この声の正体はシノアだ。
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