第6話 2階
暖炉の前に戻ると、真っ青な顔のシルバーを介抱するグレー、そして
ふうと一息ついてから探索した結果を端的に伝えた。
「入り口近くの扉、応接室の中に男性の死体がありました」
皆が同時に息を呑む。
「本来は誰かの知り合いでないか確認するべきです。ですが、あまりに
少し考えた後にブルーが小さく手を上げた。ブルーならば大丈夫かもしれない。
「確認しますか?」
「いや結構だ。親しい知り合いはいない。亡くなっているのなら確認しても意味は無い」
「出口は? それを探しに行ったんでしょ」
すかさずグレーが答える。
「1階には見当たらないわ。それに水やガスも使えそうにない」
「なら早く2階を見てきてよ」
苛立つパープルを
「待ってくれ。シルバーもこの様子じゃ直ぐには動けない。少し休ませてくれ」
「冗談じゃないわ。殺人鬼がいるんでしょ。一刻も早く出口を探す必要があるわ。これだからポーランド人は当てにならないのよ」
ブラウンは呆れた様子で、「好きにしてくれ」とだけ呟き、頭を抱えるようにソファーで
「2階は私が行こう」
そう言ってブルーは静かに立ち上がり、不安そうに見つめる少年イエローをチラリと一瞥した。向き直りグリーンへ声をかける。
「グリーン、君は行けそうか」
「俺は、どうしよう。他には誰が」
グリーンは先程までの勢いはなく不安そうな面持ちだった。
「そうだな、ゴールドとグレーは引き続き行けそうか?」
「私は問題ありません。同行します」
「私も大丈夫」
グレーはシルバーの介抱をホワイトに任せ、立ち上がった。
ソファー傍に置いていた燭台を再び手にした。2階はほとんど灯りが点っておらず、その薄暗さに階下からでも気味の悪さを感じる。
柔らかい絨毯を踏みしめながらゆっくりと階段を登る。左右に分かれる踊り場で先頭を歩くブルーが振り返る。指で右か左かを問うてくるので、右に進むよう手で合図を出した。深い理由はないが、暖炉にいる皆が見える方を選びたかったのかもしれない。あの現場を見ているからか、やはり私も恐怖を感じているのだろう。少しでも安心できるものを目に入れておきたかった。
暖炉の火に照らされていることもあり、壁と扉がぼんやりと見える。扉は3つあった。1階の時と同じ要領で注意深く臨む。ブルーがブラウンの役割で先頭を進み、グリーンが扉を開ける役割だ。
最初の部屋の扉を開く。暗闇の中にゆっくりとブルーが進む。自分も後に続いた。小さな蝋燭で少しずつ周囲を照らし、置いてあるものを確認する。そこにはベッドやテレビが備え付けられていた。
「見ろ。こっちに別の扉がある」
入り口の近くに立つブルーが持つ燭台が、部屋の中にある白い扉を照らしていた。
「ここも俺が開くのかよ」
グリーンが嫌々ながら扉を開く。
そこには洗面台とトイレがあった。ブルーが中を照らすと奥にシャワーも見える。
「私の予想、当たってたんじゃない」
グレーが中を覗き込みながら、私の方を見る。
それを見たグリーンが怪訝な顔で質問する。
「なんだよ、予想って」
「ここはホテルか何かなんじゃないかって言ったのよ」
確かに、部屋は良くある客室の様な作りだった。
「目ぼしいものはないな。次に行くぞ」
先頭切って部屋を出ていくブルーの後に続いた。
2つ目、3つ目の部屋も同じ形の客室だった。どの部屋も中は綺麗にベッドメイクされており、変わった物は無い。
「これでこちら側は終わりですね。このまま反対側も見ましょうか」
2階の廊下は入り口側で途切れており、反対側へは戻って階段の奥をまわっていく必要がある。来た道を引き返し、階段の奥の廊下を歩く。
暖炉に集まる残りのメンバーが不安そうに見上げていた。
「こちらは何もありませんでした。反対側を見てきます」
少しでも不安を
だがその安心感も一瞬で消え去った。反対側の廊下は想像以上の暗さで先が見えないほどだった。
私とブルーの持つ燭台の炎は頼りなく揺れ、かろうじて壁と床を照らし、廊下が続いていることを教えてくれている。
我々は視界の悪さから、
皆が体を寄せながらグリーンがゆっくりと扉を開ける。扉の先は何も見えない。ブルーは燭台を低く持ち、床を照らしながら1歩ずつ部屋の中に進んだ。
反対側の客室とは異なった作りの部屋だった。部屋の真ん中に置かれた丸テーブル以外、何も見当たらない。
「おい、こっちに扉があるぞ」
ブルーは部屋の入り口から見て右奥にあたる位置に立っていた。廊下から部屋を見て右に進む方向に扉が付いている。
「この位置は洗面所では無さそうですね」
「進もう。グリーンはいるか」
「いるけど、足元照らしてくれ」
暗闇の中からグリーンの声がする。
慎重に進んできたグリーンが私の横を通り過ぎ、扉のブルーの元へ辿り着いた。
「蝋燭持ってるやつが勝手に進むなよ」
文句を言いながらグリーンが扉に手をかけた。扉を開くと再び暗闇が続いている。
「文句があるならゴールドにしがみついておけ」
ブルーの皮肉を真に受けたのか、すかさずグリーンが腕にしがみついてきた。やれやれと思いつつブルーより先にそっと部屋に入る。
隣の部屋はあまり広くなく、特に何も置かれていない部屋だった。部屋の奥まで進んだが、扉や窓は見当たらない。
その時、突然バタンと後方の扉が閉まる。
ゴトン、と言う鈍い音の後に、グレーの悲鳴が聞こえた。
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