第十一話 大鳳艦隊合流

大鳳艦橋内にて。


「あ〜!もう!「焼きそば」たべたい「いちご飴」たべたい「イカ焼き」食べたい「お祭り」行きたい〜!」


琴葉が立ったまま双眼鏡を持ち、べそをかいていた。


「や、やめて下さい艦長……こっちまで食べたくなるんですけど……」


莉奈がすこし怒りっぽく言いながら腹を鳴らす。

幽霊戦艦大和との大戦以来、食料の減少をなるべく抑えるべくなにも食べてないのだ。


「というか28歳のいい年したおばさん・・・・が子供みたいに駄々をこねるんじゃないわよ!」


莉奈が琴葉を指差す。

琴葉はハッ!っとなり指を差し返す。


「「おばさん」とはなんだ「おばさん」とは!私はまだ28歳!まだピチピチの28歳ぃ!」


「30代前はもうおばさんでしょ!」


「艦長にそんなこと言っていいのかなぁ?いつでもこっちは島流し出来るんですけど!?」


「子供の皮を被ったおばさんはそんな短気なんですね!」


「はぁ!?こっちは艦長だぞ艦長!莉奈より階級が上の上司なんだよ!」


「でも同期なのは同期だしぃ!?年が二つ違うってだけでしょ!」


「く、くぅぅぅ!!!!」


「このおぉぉぉ!!!!」  


二人の厚い厚い圧がブチ当たる。

その時、二人の鼻の中に香ばしい香りが漂った。

ハッ!っとなり方向を見ると、今日の昼ご飯があった。


「やったぁ!やっとご飯だあぁ!大和との戦闘以来なにも食べずに1日……やっとペコペコのお腹に物を入れることができるよぉ!」


「や、やっと昼食ですか……いくら食料調達が出来ないからといって、昼しかご飯ないのはキツいですね……」


大鳳達も、本土にいくら経っても帰れないという事を知り、食料の配給を一回のみにした。

そのため全員腹ペコである。


「だって死にたくないもん」


琴葉は丸盆を受け取り、床に座る。

今日の献立は白米、大根の味噌汁、つれたイワシみたいな奴(イワシもどき)である。ザ・和食だ。

魚が泳いでたので、試しに釣りをしてみると、なんと掛り、イワシの様な物がつれた。


イワシにしては形が違うし、けれどそれ以外に例える魚はない。


「いっただっきまーす!!」


琴葉が勢いよく昼食を食べる。

莉奈も食事を手に取る。

そして一口イワシもどきを食べた。


「イワシもどき結構美味しいですね」


イワシもどきの旨さに莉奈は驚いていた。

変な見たことない魚を見て、不安だったが、結構美味かった。

そして乗員等は直ぐに昼食を食べ終えた。

すると……。


「12時方向、電探に巨大な反応アリ!こ、これは……!大和です!さっきと同じ反応です!」


「「「「ッ……!?」」」」


全員がビクついた。

またあの悍ましく恐ろしい異様な大和がまた現れたのかと思うとゾッとする。

琴葉は直ぐ様双眼鏡で前を見る。


「……?さっきとは違う大和だ……」


紅く染まってはおらず、それは誰しも見たことのある大和だった。琴葉は不思議に思い、脅威はないと感じた。

すると、更に二つの反応が現れる。

それは大和と同じ大きさの反応、まだ双眼鏡では見えないが恐らく信濃と武蔵であろう。


「本当に……あの大和なの?」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翔が連れ去られた数十分後に武蔵と信濃が合流した。

成斗は一部始終を伝えた。


咥えていた煙草が落ちる。

「は?嘘だろ……翔が攫われた?」

蒼二の声が震える。


「はい……突然巨大な烏のような鳥があらわれて……」


蒼二は少し沈黙する。


「で、捕虜として捕らえていたカスミとソヨカも消えた……」

雪那が俯きながら話す。


「どうしたものか……」

山本五十六は艦首方向を見ながら呟いた。


甲板上にいた他乗員も含め、全員沈黙した。

蒼二は静かにその場を離れる。



第二砲塔の後に隠れるように進んでいく。

そして、ドンッ!っと、大きな音が響いた。

蒼二は、自分では意識出来ないが泣いていた。


翔が今どうなっているか、それがとても心配なのだ。

話を聞くに、「お呼び」っということはそこまで恐ろしい事はされてないだろうとは思うが、また会えるという保証はない。

親友として、それがとてつもなく心配なのだ。

思うだけでそれも確実じゃない。

拷問をされ、もう二度と会うことは出来なくなってしまう

とてつもない恐怖が彼を襲った。


「あのバカ野郎……この俺をこんな目にしやがって……クソッ!クソッ!クソッ!」


「クソッ!」っという度に壁を叩く。

そして膝から崩れ落ちる。


「もう会えないのかよ……そんなことはねぇよなぁ……?」


兵学校での思い出や、飲み会などの思い出が蘇る。

今思えばどれも翔と雪那との楽しい思い出ばかりだった。



「今は、どのように動いたほうがよろしいでしょうか……」


成斗は山本五十六に問う。


「……あの鳥が向かった方向に進む。総員配置につけ!」


その時、蒼二が山本五十六に話しかけた。


「すいません五十六長官、うち武蔵乗組員の奴等を少し島に残していってしまったので、回収しにいきたいのですが……」


「そうだったのか。分かった。それでは全艦、島に向けて舵を取れ!」


山本五十六がそう命令すると、全員勢いよく返事をする。


全員配置につき、後は走り出すだけであった。

その時だった。


「電探に多数の反応あり!その数、九!」


「「「ッ……!?」」」


全員双眼鏡を手に取り、その方向を見た。


「空母……旭日旗を掲げている。その他にも巡洋艦……戦艦?駆逐艦に潜水艦まで……艦隊でしょうか……」


成斗が呟いた。

山本五十六もその光景に釘付けになる。

その時、信号が名称不明艦から発され、大和が傍受する。

無線機から声が出てくる。


『此方空母大鳳、貴艦は戦艦大和で間違いはないか?』

女性の声だ。


大鳳?

その場に居た者達全員が首を傾げた。

その様な艦などなかったはずだ。


「山本司令、どういたしましょう……」


「ともかく、一度話をしてみようじゃないか。旭日旗ということは大日本帝国海軍なのは同じはずだ」


山本五十六は無線機を手に取る。


『此方連合艦隊所属日本やまと艦隊旗艦戦艦大和である。我は連合艦隊司令長官山本五十六。貴艦は大日本帝国所属の艦で間違いはないな』


『我等は元連合艦隊第二機動部隊所属空母大鳳以外8隻である。突然ではあるが貴艦に乗艦許可を求めたい。よろしいでしょうか』


山本五十六はすこし悩む。

『……乗艦を許可する』


そして、暫くすると大鳳という空母から内火艇が降り、大和に乗艦した。

幼子の様な女性が甲板上に上がってくる。

そして、整列している成斗と山本五十六の前に立つ。

そして敬礼をする。


「私は元連合艦隊第二機動部隊旗艦空母大鳳艦長『高橋琴葉』です。此度は乗艦許可をくださりありがとうございます!」


成斗が驚きの言葉を漏らす。

「え、君みたいな子が艦長?子供が間違って乗艦したんじゃないのか?」


琴葉は後に下がる。

「なッ!?コレでも28ですけど!?」


「え!?嘘!……やはり人は見かけによらんな……こんな子が30代前のおば……」


琴葉の言葉がかぶる。

「おば?」

その瞬間琴葉から物凄い圧がくる。


「い、いや……何でもない」


成斗は目をそらす。


「空母大鳳、と言いましたな。連合艦隊にその様な艦はなかったはずですが……」

山本五十六が琴葉に問いかける。


「あ、やはり……」

琴葉はそう呟いて、大和等が居なくなった後の話を全て話した。


「なんと……で、その奇々怪々な大和と思われる艦に沈められたかと思いきやこの世界に居たと……」


「はい。そうです」


山本五十六は顎を撫でた。


「もう少し色々と事情を聞きたいが、我々も現在混乱状態なのでな。一度島に残している残存兵等を迎えに行きますので、その後、移動しながら武蔵と信濃の艦長も呼んで大和にて会議をしましょう」


その時、琴葉の耳の中に「信濃艦長」という言葉が響いた。


「雪那大先輩いるんですか!?」


「あ、あぁ……」


「やったぁぁぁ!!!」


琴葉は玩具を買ってもらった子どものようにはしゃいでいる。

その他にも付き添いでついてきた大鳳乗艦等もそうだった。

山本五十六はなにがなんやら少しわからなかったが、話の方向性をただす。


「ともかく、我々についてきてもらえますかな?」


「あ、はい」


そして、新たに仲間になった大鳳艦隊と共に、島に残していった残存兵等を迎えに島にむかった。


◇◆◇◆◇◆その頃◇◆◇◆◇◆◇


暗闇の中、俺は意識を取り戻す。

俺の体に、なにかフサフサとした布団のような物が伸し掛かっている感覚を覚えた。

後頭部にはモチモチとした柔らかく弾力がある気持ちいい枕の様な感覚がある。


あぁ……極楽。

なんだこれ、俺、死んだのか?

あの鳥に掴まれて、喰われたのかな……。

だとしたらここは天国か……思ったより心地いいんだな。

とにかく、目を開けてみないとんからんな……。


そして俺は瞼を動かそうとした。

……動かない。

なんだ、コレ。

力いっぱい動かそうとしても動かないのだ。

なにか重いものでも伸し掛かっているのか、そんな感じだ。

すると、俺の足を弄るかのように布団が動く。

ッ……!?


俺はびっくりして目の上にあるものを掴んだ。

するとその「モノ」はふんわりとしていて、弾力があった。


「あら貴方様ったら大胆♡。ようやくお目覚めになられましたか?」


その時俺の視界に光が戻った。

目の前には大きな膨らみが二つ、どうやら俺は膝枕されていたようだ。そして、布団だと思っていた物は九本の尻尾だった。

俺が掴んだのは女性特有の膨らみだったらしい。

なんだ〜……ただ膝枕されてただけか〜………。

そして俺は再び目を閉じた。


「じゃねぇよ!!」


俺は勢いよく飛び起きた。

なんだ?何なんだここは!?確か俺は烏みたいなヤツにさらわれて……。


「貴方様、どうされました?」


美しい声がする方向をみると、そこには今まで見た以上に綺麗な女性が居た。

狐のような耳に、狐のような九本の尻尾を携えていた。透き通るような白い肌、真っ白に輝く白銀の毛、美しい着物を着て、扇子を左手に持ち、20畳ほどある和風な部屋の真ん中に、座布団の上に正座し座っていた。


「あ、貴方は、だれですか?そしてここは……」


「あらあら、忘れてしまいましたの旦那様。わたくしは貴方の愛妻じゃないですか」


立ちながらそう言い、俺のそばに寄り添う。

ッ……。

俺は唾を飲む。

そして冷静に自分の事を思い出す。


「わ、私は連合艦隊所属、日本やまと艦隊旗艦、戦艦大和艦長藤野翔です。け、決して貴方の旦那様ではありません。勘違いされています」


「いえ……私は勘違いなどしていませんわよ?私の旦那様は貴方様だけですし、貴方の愛妻はこの私だけ……ですよ?」


「い、いや、決してその様なことは……」


すると、聞き覚えある声が聞こえる。


「あ、翔様、お目覚めになられましたか?」


声の方向を見ると、そこにはカスミが居た。

白い布のような服とは違い、この綺麗な女性と同様に和風の美しい着物を着ていた。


「カ、カスミ……これは一体……」


「貴方は明日からこの「月灯」の女帝「コユキ」様の婿に入ってもらい、「皇帝」を努めて頂きます。つまり私の父上となってもらいますので、よしなにお願いします」


は?何故急に俺を婿にするんだ!?

俺は唐突の事に戸惑った。


「ま、まてまてまて、そんな急に言われても……」


「拒否権はありませんよ。ここは「月灯」、独立国月灯です。貴方は、まぁ、人聞きは悪いですが誘拐されました。この我々に」

カスミの目つきが鋭くなる。


「ゆ、誘拐……っというか、コユキ様って……」


俺は綺麗な女性の方を見た。

この人……だよな。


すると、姿が変わっていた。

犬のような尻尾に耳、そしてカスミと同じ色に変わっていた。


「貴方様、そんな方苦しい呼び方はやめて、どうか「ビャクヤ」とお呼びしてもらえます?明日の華燭の典以降は私の正式な婿になるのですから、下の名で呼んでもらって構いませんわよ」


「いや……俺は婿になる気は……」


言いかけていた俺の声にカスミの声が被った。

「母上様、きっと翔様は眠りから覚めたばかりで混乱されているのでしょう。私が目を覚ませる変わりに国の紹介でもしてきます」


「ええわかったわ。でもカスミ、観光名所だけは駄目よ。私と翔様との至福の時間として使いますからね」


「はい承知しております。では翔様、参りましょう」


カスミが俺に手招きし、ルンルンになり襖の方に駆けていく。

ほ、本当になにがなんやら……。

俺はため息をはく。


「で、ではまた」


「あぁ……///なんと……やはり私の旦那様は礼儀正しいですね……とても可愛い……///」


な、なんなんだこの人……突然合って急に俺を自分の婿に入れようとし来るなんて…………でも、こんな綺麗な人が嫁だったら、夢のような話だよな。

はぁ……彼女が欲しい。


翔は本当に相手が自分の事を好きという事に気づかず、カスミの後を追った。





※一話すこし変更しました。※

以下しかし我々の世界とは違い、枢軸国側ではなく連合国側に入った日本はアメリカと同盟を組み、アメリカは勝利した。

この世界の日本は「大東亜共栄圏」設立の中に創られなかった「満州国」の変わりに「欧米国」と「豪州」も含まれ、計「豪州」「米国」「中国」「盟主大日本帝国」との大同盟にて、太平洋などの完全支配を企んでいたのだ。


これも「思想」から創られた「共存共栄」と「平和」を建前にした帝国に精密に計算された支配計画だった。



っと、追記しました。

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