第六話 偉「大」ナル「鳳」凰ニ栄光アレ 其の壱

時は2000年4月7日。

戦艦大和、武蔵、信濃の失踪から50年が経過した。この事件について調べようとしても、何もかもが不明だった。

駆逐艦に乗っていた乗組員に話を聞くと、いつの間にか・・・・・・消えていたと言う。

アメリカにも協力を頼み、生存者が居ないか捜索したが何も情報は得られなかった。


行方不明扱いだったが、見つからないが故、全員死亡扱いとなった。


日本の海軍力の主軸であった日本やまと艦隊所属の大和型戦艦3隻を失った事は大きかったが、最新鋭空母「大鳳」及び合計7隻の最新鋭艦を1957年に全艦竣工し、戦力は補えた。

艦名は以下の通りである。


空母

大鳳  


巡洋艦

吾妻

四万十しまんと


潜水艦

伊400

 

駆逐艦

島風

吹雪

北風


だがしかし、この世界線では1988年から「イージス艦」という物がアメリカで開発された。

そして先月、2000年3月24日。

日本最初のイージス艦、死者を敬い名を漢字ではなく平仮名の「やまと」が竣工した。そして現在、イージス艦「むさし」、空母「しなの」と、失踪した大和型戦艦達の代わりとなるべく同じ名を与えられた艦が「やまと」含め3隻建造されている。


大艦巨砲主義の時代は、大和型3隻が失踪してから幕を閉じたのだった。


もしアメリカとの共同演習を行い、結果を出せていたのであれば、イージス艦と言う物の開発も、大艦巨砲主義の時代ももう少し遅れて居たであろう。


少し遡り1994年。

大日本帝国は、今まで蔑ろにしていた陸軍を強化し、最新鋭戦車「10ひとまる式戦車」、「90きゅうまる式戦車」、「74ななよん式戦車」を開発した。

現在の陸上自衛隊に用いられている10式戦車は、この世界線でも三菱重工が開発した。

イージス艦の開発と共に戦車にも技術の進歩は大きかった。

ソ連からの択捉島侵略を止め、択捉島の領土問題をなくした計九

両は、それぞれ特別な名称がつけられた。


現在、大鳳含む最新鋭駆逐艦三隻、巡洋艦二隻、潜水艦一隻はその10式戦車二両、90式戦車三両、74式戦車四両を輸送する任務についていた。


「はぁ。この大鳳も、来月には近代化改装としてイージス空母になっちゃうのか……」


暗く殘念な思いを込めた言葉を放つのは、大鳳艦長高橋たかはし 琴葉ことはだった。

幼い見た目で身長は158センチだがこれでも28歳である。

ロングヘアに金閣寺で買ったであろう鳳凰の髪飾りをつけている。


彼女の軍歴は、空母瑞鶴、空母赤城、そして現在の大鳳の艦長を務めた。言わば空母しか経験をしたことがない軍歴なのだ。

だが、それが実を結び、空母の扱いは一級品である。

だがしかし、性格が子供っぽい。


因みに信濃で数名男性もいたが、大鳳は乗組員が全員女性である。


「艦長、いいことじゃないふぇすか。モグモグ……イージス空母となっても、別に大鳳が消えるってわけじゃないんでふから……モグモグ」


おにぎりを貪りながら喋るのは副艦長の村上むらかみ 莉奈りな


「ちょっと莉奈!いつまで昼ごはん食べてるの!?いい加減職務に戻りなさいよ!」


「そんな事言われても可愛いだけですよ〜」


「か、艦長命令は絶対なんだぞ!?っというか年下でしょ!?」


「艦長命令してないじゃん」


「厶……ムーーー!で、でも年下……年下だもん………」


琴葉はサイズが合っていない艦長服で涙をふく。

そこに居た乗組員達は母性本能が発動したのか琴葉に寄り添う。


「嘘泣きやめなさい」

「バレた?」


ちゃらけた顔を琴葉はダボダボの袖をどかしあらわにする。


(((((う、嘘泣きだったんだ……)))))

引いたような顔を乗組員達はしながらも、安心の気持ちになる。


「でもさー、大鳳ってさ、名前が「たいほう」になっちゃうじゃん?かっこ悪くない?っていうかさ、なんで大和が「やまと」になるのさ!」


「そりゃ死んでしまった人達を敬ってるから……」


「でもさでもさ!詳しく言えば失踪してるだけじゃん?なんでもう皆死んだことにしてるのー?」


「戦艦大和及び武蔵信濃はハワイ沖にて失踪した。アメリカ側に問い詰め、本土やハワイの各倉庫などを調べさせてもらったけれど、面影なし。ソ連の潜水艦に沈められたとした思えないんです」


「でもさ、近くに居た駆逐艦の乗組員の証言だと音もなく、何も気づかず失踪したんでしょ?どうやって説明するのさ!っというか大和とか武蔵信濃って言わば鉄の塊だよ?アメリカが急速解体してどっかにそれを使ったんじゃない?」


「大和程の巨艦でなのでアメリカでも半年で急速解体は難しいかと」


「ふーん。まぁいいけど……。雪那先輩、憧れだったんだけどな……」


「艦長………」


「「「「「…………」」」」」


琴葉含め艦橋に居た者達が全員黙り込んだ。

雪那は、女性軍人の中でも今まででトップクラスの成績を残していた。いくらその背中を求め走ろうと、いくら努力しようと、彼女には及ばなかった。


女性軍人だれもが彼女に憧れていた。

雪那が信濃艦橋になると、「女性の軍人になりたい」っという者達が多くなった。

そのため大鳳は女性のみで構成されたのだ。


その時だった。

電探レーダーに反応があり、それと同時に一人の乗組員が叫ぶ。


「10時方向!濃霧のなかに凡そ15隻の反応あり!敵艦影、濃霧から現れます!……あ、あれは……まさか!?そんな……ありえない!」


「どうした!?」

琴葉が双眼鏡を手に持つ。

そこには………。


赤く艦橋の窓がひかり、真っ黒の船体。

その船体の舷窓からは血が流れ、錆が物凄く目立っている。

主砲の砲身は血を被ったかのような赤い紋様を刻んでいた。

それは幽霊船だった。


その艦は………。

琴葉は驚の表情を出す。

数秒間が開く。


……………………………………………。

…………………………………………。

………………………………………。

……………………………………。

…………………………………。

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……………………………。

………………………。

……………………。

…………………。








「や、大和……」





14隻の駆逐艦と、幽霊戦艦・・・・大和が波を断っていた。

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