第11話 田舎民、皇女様と出会う……?
入学式がとりおこなわれることになった。
入学式の会場になるのは体育館である。
体育館にはずらりと椅子が並べられていた。
俺は適当な椅子に腰掛けた。(座るのはどこでもいいみたいだ)
「久しぶりですねー、アルマくん」
リアンが隣に座ってきた。
今日はたまたまゲップが出そうだし出しておこうか。
「げぇぇっ」
「え?(なに?その唐突なゲップは)今日も素敵なゲップですね」
「そうかな?(相変わらず俺にはなにがいいのか分からんけど)」
ていうか、なんだか眠たくなってきたなー。
「ふぁー」
「眠い?アルマくん」
「うん。眠いや」
実は昨日夜ふかししてたんだよね。
かわいい女の子と同じクラスになれるといいなーとか可愛い彼女できるといいなーとか考えてたらあんまり寝れなかった。
気分は遠足前日の小学生みたいなものであった。
「ちょっと寝るね、後で起こして(どうせ入学式なんて校長の挨拶だけだろうし、聞いてなくても問題ないよね)」
「え?ちょっと、アルマくん?(この入学式、とても大事な説明がされるんだけど?でも説明は入学式案内にも書いてあるし流石に読んだのかなー?)」
◇
リアン視点
(うわ、もう寝てるよこの人)
寝るのはっや。
起こそうかなー?
そう思っていた時だった。
壇上に人が上がってきた。
合格発表の時にも目にした学園長。
「まずは入学、おめでとう」
生徒側から特に声は上がらない。
さすが皇立魔法学園だ。
全員が起きていてみんな話を真剣に聞いてる。
それだけ将来のことを考えている証だろう。
(約一名を除いて……)
「まず新入生代表に挨拶をしてもらいたいと思う。ブッチギリの成績で入学を果たしたアルマ。前へ」
「zzz」
寝てますけどこの人。
なかなか出てこないアルマにみんなが痺れを切らし始めた。
「アルマー?学園長に呼ばれてるぞ?」
「合格発表でもいなかったのに、今回も無視する気か?」
「おーい、アルマー?」
プルプルと震え始めた学園長。
「初めてだよアルマ。合格発表もすっぽかして入学式でも私の指示を無視する人間なんて。三秒数えるから出てこい。出てこなければお前の学園ランキング最下位にするぞ」
(起こした方がいいのかなー?)
「zzz」
(でもめっちゃ気持ちよさそうに寝てるんだよねー。起こしたら怒られそー。あと、学園ランキング最下位スタートとかの方が燃えるとかそういう理由があったりして?)
結局アルマくんは起きなくてタイムリミットを迎えた。
その時だった。
凛とした声が上がる。
「では入学式の挨拶は私が行いましょう」
生徒がひとり立ち上がった。
金髪ショートの女の子。
誰もが知っている人物であった。
「皇女様だ」
「レア様が入学式の挨拶をしてくださるぞ」
皇女のレアが壇上へと上がっていく。
皇女のお出ましにより学園長すらも頭を下げる。
皇女は壇上に立つと第一声を放った。
「素敵ですわね、アルマくん」
「「「え?」」」
生徒側から動揺の声が上がった。
「皇立学園でも周りに流されず、己の道を突き進むその姿に私は感動を覚えました」
レアはアルマの顔をじーっと見ていた。
アルマは寝ているせいで気がついていないけど。
「あなたなら私の婿にしてもいいと思いますアルマくん。お返事は後で聞きますよ」
「zzz」
レアはそれだけ言って壇上を降りていった。
代わりに学園長が続きを話す。
「皇立学園では独自のランキング制度が存在している。生徒をランク付けして競い合わせるというものだ。この順位は卒業時に大事になってくるから、3年かけて少しでも上げるように」
学園長はアルマを見ていた。
「お前は最下位スタートだ。いい度胸をしているなほんとに」
(アルマくん、さすがに寝ない方が良かったんじゃない?めっちゃ目立ってるよ……?)
だが、リアンはこうも思っていた。
(ここで普通は取らない寝るという選択肢を取れることが強さの秘訣なんだろうか?)
◇
入学式が終わって俺は自分のクラスに向かってた。
(まさかF組だと思わなかったなぁ。へこむなぁ)
名前を書くだけで入学できるような学園だ。
周りのレベルもそれなりに低いと思っていた。
まさかビリはないだろうと思ってたんだけど、俺はドンケツのF組になっていた。
しかもどういうことか分からないけど。
周りのクラスメイトとの距離感を感じてる。
「あいつだろ?アルマって(こえぇぇぇ)」
「なんか近寄りにくいよね(学園最強だし)」
なんか俺いきなりボッチになってるっぽい。
「はぁ」
気分が重いまま入学初日は終わっていった。
宿に帰ろうと思って廊下に出ると……
「アルマくん、お待ちを」
声の聞こえた方を見るとそこには金髪ショートの女の子がいた。
ザワザワ。
クラスメイトが騒ぎだした。
「皇女様だ」
「どうなるんだ?」
(皇女様……?それなら公立にいるわけないし。なら公女様か?)
貴族の娘がそう呼ばれるんだっけ?
皇立の方に行けばいいのに。なんで公立の方に来たんだろう?
間違えたのだろうか?
まぁ、公立と皇立は間違える人そこそこ多いって聞くしな、うん。
「お返事を聞きに来ましたが」
「返事?(なんの話だ?)」
「はいかいいえ、でお答えを」
なんの話か分からん。
「いいえ」
シーン。
静まり返った。
時が止まったように。
公女様は目をまん丸にして見開いてた。
プルプルと拳を震わせていた。
「まさかこの私ですら届かないと?(皇族の身をもってしてもあなたは手に入らないと言うのでしょうか?)」
(よく分かんないけど、俺の身長に届いてないってことかな?)
俺は170くらいでこの子は150くらい。
まぁ、届いてない。
そして、今でこの身長差なら今後届くこともないだろう。
「君じゃ届かない。背伸びしても俺には届かない。一生かかってもね、これは当然の話だよ(男女じゃ身長差出るの当たり前だし)」
周囲が騒ぎだした。
「痺れちまうぜ……」
「これが……強者か。圧倒的なカリスマだな」
「やべぇ、怖いもんなしかよ。かっこよすぎんだろ」
(なんの話してるんだろう?)
分かんないけど。
「じゃあね(俺これからバイトあるんだよね)」
横を通り抜けようとした、そのとき。
パシっ。
俺の手を公女が掴んできた。
「私には譲れぬ未来があるのです(この国を強くしなくてはならない。それが皇族の役目。とうぜん、国の代表である皇帝は強くなくてはならない。そして私の子もまた同じ)」
「それはたいへんだね(平民モブの俺には貴族様の考えは分かんないや)」
「私の未来にあなたが必要なのです(これ以上ない大胆な告白ですけど?)」
「残念ながら俺に君はいらない(貴族との関係なんていらない。俺は山も谷もない平凡な暮らしがしたいし、それで十分だ)」
先程よりクラスが湧いていた。
「やばwwww」
「大丈夫かよ?あいつ(侮辱罪で処刑されたりしないか?相手皇族だぞ?)」
プルプルと震えていた公女様。
「の、望むところですわ」
くるっ。
公女様は俺に背中を見せた。
「3年かけて必ず並んでみせましょう(あなたが納得するような女になってみせましょう)」
「そう、頑張れ(3年かけても俺と同じ身長にはならんと思うけど)」
公女様は俺の前から立ち去った。
結局、何をしに来たんだろう?
(さてと、帰るか)
そのときだった。
「アールーマくん」
リアンが後ろから抱きついてきたようだ。
「どうしたのさ?びっくりしたー」
「えへ、えへへ(皇女様より私を優先してくれたんだよね?)」
「なんか嬉しいことでもあったの?」
「うん(これはもうさすがに正妻確定でしょ?)」
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