第9話 田舎民、出会う


 俺はマンホールから地下に降りてきた。

 地下の下水道は日本よりも複雑である。そのため、まるでちょっとしたダンジョンのようになっている。

 そんな複雑な地形はあらゆる生物やモンスターにとって楽園と化している。


「ギャギャっ!」

「ギギィッ!」


 いきなりモンスターとエンカウントした。

 ゴブリンだった。


「あらよっと」


 パンチ。

 風圧が起きる。

 それによって吹き飛んでいくゴブリンたち。

 壁に叩きつけられて倒れた。

 気を失ったようだ。

 殺す必要は無いだろう。

 別に今回の俺の目当てじゃないし。


 今の流れを見ていた他の生き物たちは俺を危険視して逃げ出していた。


「マウスを探そう」


 地下の迷路を歩いていく。

 上に下に右に左に。


 マジで複雑。

 俺ちゃんと帰れるかな?


 不安になってきた。


「そうだ、マーキングしとくか」


 壁を指で抉った。

 まるで熊が爪で木を傷つけるような感じの傷跡になった。


「これで、帰りもバッチリだな」


 定期的にマーキングを残しながら俺は進んで行った。


 そうしていると


「ちゅちゅっ!」


 やっとプレイグマウスが見つかった。


 しかもけっこう大きめだ。

 3メートルくらいありそうだ。


「ちゅーーーーっ!!!」


 威嚇してくる。

 そして、周りにネズミが集まってきた。


「ちゅちゅちゅっちゅー!」


 ボスっぽいネズミが周りのネズミに指示をだした。

 飛びかかってくる。


(火に飛びいる夏の虫ってね)


 すっ。

 ザン!ザン!ザン!


 手を槍のように使い飛びかかってくるネズミを貫いた。

 殺したぶんはすぐさま持ってきたバックに放り込む。


 ボスネズミは顔真っ青。


「さて、君の分もいただこうかな?(ニヤリ)」


「ちゅーっ!!!!」


 回れ右。

 走り始めるネズミを俺も追いかけた。


 俺がネズミを即捕まえなかったのには理由がある。

 こいつはきっとこの後仲間のところに逃げ込むと思ったからだ。


 仲間の元に案内させている。


「ちゅーっ!!!」


 ネズミはめっちゃ小さな通路に入り込んだ。


 通気口のようなものらしく、すぐにその道は終わっていた。

 向こうっ側に着地すると、通路の穴越に目が合った。


(ビンゴ)


 この先は奴らのエリアだったらしく向こうには大量のネズミが蠢いていた。


 そして、大勢のネズミたちは穴の周りに集まり始めた。


「ちゅっちゅっちゅwwwwww」


「ちゅちゅちゅーwwww」


 中指立ててた。

 俺を煽っているようだ。


 気分はあれだろう。

 ホラー映画で殺人鬼から逃げ切った主人公たちが殺人鬼を煽り散らしているような感じなんだろう。


「いいのかな?そんなに煽ってて。逃げた方がいいんじゃない?」


「ちゅちゅちゅーwwww(ばーか。人間がこんな狭い穴通れる訳ねぇだろクソ人間)」


「ちゅーーーちゅっちゅちゅっーーー(悔しかったらここまでおいでwww)」


「ちゅっかんべー」


 中にはアッカンベーしてる奴もいる。


「今からそっちに行くよ」


 俺は壁にタックルをかました。

 ボゴォッ!


 俺の形の穴が空いた。


「……ちゅ」

「……????????」

「ちゅー……」


 大量のねずみたちが凍ってた。

 猫に睨まれたネズミのようにフリーズしてる。

 現実に脳が追いついていないようだ。中途半端に頭がいいってのはかわいそうなことだよな。


 内心、俺は叫んでやりたかった。


『ちゅたーず、って』


 まぁ、でもこのネタはネズミには分かんないだろうし、やめとく。


「もう逃げられないよ?♡」


 ネズミを全て始末した。

 1匹残らず。


「さて、こんなところでいいか」


 俺が頼まれたのは数匹のネズミの討伐だ。

 今ですら丁度50匹くらい始末したしこんなもんでいいだろう。


 ちなみに死体がかさばるので皮だけ剥いでる。

 残った死体はそこらへんに捨てておけば他の生き物やモンスターが食べていた。


 命の再利用である。


「帰ろうかな」


 そう思った時だった。


「ぢゅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」


 地の底から響くような声が聞こえてきた。


「なんだ?明らかに今までのネズミとは違う声だ。」


 割と近場から聞こえた気がした。


「ついでだし行ってみるか」


 カバンはパンパンだけど手はまだ塞がっていない。

 それなら手で持って帰れるだけ持って帰った方がなんかお得だと思う。


 そう思って俺は声の聞こえた方向に歩いていくことにした。


 数分後、到着。


 少し開けたような場所になっていた。

 全体的な形は四角形な広い場所。


 ゴミ捨て場みたいな場所になってた。

 ゴミ山があるし、なんか汚水で濡れてる。

 匂いで鼻ひんまがりそう。


 人間なら1日いるだけで病気になりそうなくらい不衛生な場所。


 こんな場所に長居できるプレイグマウスってやっぱすごいな。


 さて、プレイグマウスはどこにいるんだろうな……。


 ガラッ……


「ん?今ゴミ山が少し崩れたような」


 ゴミ山をよく見てみる。


 ガラッ……


「まただ」


 ガラガラガラガラ。


 ゴミ山が完全に崩れていった。


 そして、その中から


「ぢゅーーーー」


 10メートルくらいのプレイグマウスが現れた。


「でかいな、中ボスってところかな?」


 俺はネズミに向かって飛びかかった。

 メキョッ。


 顔を殴ると、グルンと首が360度回転した。

 ちなみにだが、この世界のネズミはとうぜんこんな風に首は回転しない。

 では、なぜ回転したか?

 首の骨が折れたからだ。


「任務完了。今度こそ帰ろう」


 そうして帰り始めようとした時だった。


「何者だ?」


 背後から声。

 振り返ってみると。


(あっ、ハンバーガーのお姉さんだ)


 皇都にきて最初に出会った、俺にハンバーガーを奢ってくれたお姉さんがいた。

 それから、周りには知らない人たち。


 ハンバーガー以外の顔はマスクをしていてよく分からなかった。

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