Fランク学園と間違えてSランク学園に入学した無能な俺、間違えたことに気付かず勘違いしながら無自覚に無双してしまう。俺は庶民モブのはずだが何故か皇女様がよってくるようになった
第8話 田舎民、アルバイト、そして、追加のアルバイト
第8話 田舎民、アルバイト、そして、追加のアルバイト
丘を後にして森の中を歩く。
俺は目に入った木の前に向かってった。
少しうしろをリアンがついてくる。
俺はしゃがみこんで木の根元の方に手刀をピタッと当てた。
「アルマくん、なにしてるの?」
「今から木を切るんだよ、アルバイト」
「でも、どうして手刀を作ったの?」
俺は腕を振って、手刀を木にねじ込んだ。
ザン!
木が根元から切れた。
グラッ……。
倒れようとする木を手で支えた。
「すっご……道具も使わないでこんなこと出来るんですね」
「朝飯前だよ」
俺の村には道具なんて上等なものもなかなか無かった。
そんな場所で木を切るとなるとこれくらいしか選択肢がなかったのである。
そのあともバッサバッサ切っていく。
ちなみに、この森にある木は小さなものが多い。
「よっと、15本文くらいかな、これで」
3日で15本と言われたが10分くらいで終わった。
時間はそんなに必要なかったな。
「さて、これをあとは宿屋まで持っていくだけだな」
そこで俺はリアンに目を向けた。
「ごめん、夜だし。送りたいのは山々なんだけど1人で帰れそう?」
「それは問題ないですけど」
「良かった。なら、また三日後。学園でね」
俺は肩に15本の木を担いで宿屋の方に向かってった。
「すっごいですねぇ、あの体のどこにあんな力があるんでしょうか」
そう呟いてたリアンの声が背中から聞こえていた。
宿屋に帰ると俺は木を庭に置いた。
「どっこいしょ」
アルバイトが終わったことを店主に伝えたのだが……。
「もう終わったのか?」
目をぱちぱちさせて俺の戦果を見に来た。
「マジで終わっておる……」
ぱちぱち。
瞬きして俺を見てきた。
「お主、何者なんじゃ?」
「ただの名無しのアルマですよ」
そこで、店主は少し唸っていた。
表情は俺がうんこ我慢してる時と同じような顔だった。
「うんこしたいなら我慢は良くないですよ。れっつごー、うんこ」
「うんこって、ほんとにデリカシーがないなぁ、お主は」
やれやれと、呆れているようだった。
デリカシーがないのは自覚している。
でも俺はうんこを我慢しないしげっぷも我慢しない。
そういう男だ。
「実はの。お主の腕を見込んで頼みたいことがあるんじゃが」
「頼みたいこと?」
「うむ。ここからはオフレコで頼めるか?それなら話したいんじゃが。お主がもし漏らしたらと思うと……」
「安心しなよ爺さん。俺の口はこう見えてけっこう硬いよ?便秘になった時のケツ穴くらい硬い。な?絶対漏らさなさそうでしょ?ご安心を」
「他に例えようはないのか?」
「爺さんが漏らすとかどうとか言うからですよ」
「ふむ。それはすまんかった。お主の口はたしかに硬いかもしれんな。便秘のときのケツ穴以上に信頼出来るものもないからな」
爺さんは俺を宿の中に案内した。
それから、カウンターの中へと案内する。
「今からワシの家の方に向かう。盗み聞きされていたりしたら大変だからな」
「へぇ、それは大変そうだ」
◇
家の方に通された。
爺さんとちゃぶだいを挟んで向き合った。
「見ての通り貧乏でな。すまんのう」
俺は村では毎日野宿してたようなもんだから屋根があるだけマシなんだよなぁ。
まぁ、それは置いといて。
「用件を」
「最近街の地下にネズミが住み着いたようでな。名前をプレイグマウス」
聞いたことあるな。
皇都では定期的に大発生して街に疫病を流行らせるっていうモンスター。
根絶方法はネズミのリーダーを倒すしかないらしいんだが、これが意外と難しいそうだ。
「奴らはどんな環境でも生きていける。汚水だって飲めるし汚物だって食う。そして、寒暖にも強い。奴らの皮膚は強靭なのじゃ」
「倒して欲しいの?そのネズミを?だとしたらなぜ?」
宿屋の経営とは直接関係なさそうだけど。
「プレイグマウスの皮に用があるんじゃ」
そういえば、寒暖に強いって聞いたな。
ひょっとして……
「きれいに加工すればいろいろなことに使えるってことか」
「うむ。例えばベッドの布団などに使えたりするな。冬はとてもぬくくて、夏は涼しい、不思議な素材じゃ」
「でもそんなの俺みたいなバイトじゃなくて、騎士団にでも頼めばいいんじゃ?」
皇都には数多くのいわゆる冒険者とか騎士団とかもいる。
わざわざ俺に頼む必要は無い。
「ここからが厄介な話でのう。プレイグマウスが大発生したら国が奴らを掃除しにくる。皇族が直接信頼出来るメンバーに仕事を与えて掃除させるのじゃ。そして、皮などは全て皇族に取られる。一般人はそんな面倒事に首を突っ込みたがらないんじゃ」
「だから俺に皇族が動く前に行ってくれってことね」
「ボスはいい。雑魚を数匹しばいてその皮を持ち帰って欲しいのじゃ」
「いいよ。でもなんで口が堅い必要があったの?」
「プレイグマウスの皮はとても高級で貴重でな。皇族が動き出してしまえば、基本は全て皇族が回収するのじゃ。そんなものをワシが欲しているとなると、国家反逆罪として告げ口するやつも現れるじゃろう」
「まぁ、安心しなよ。俺の口は固いから。それで報酬は?」
「出世払いでいいかのう?宿の売上も増えてきたらインセンティブも払おう」
店主が出てきた額と条件はかなりいいものに見える。
俺はそれに納得した。
「いいよ」
「まだ皇族は動き出しておらん。タイムリミットは皇族が動き出すまでだ。できるだけ、多くのプレイグマウスをしとめてほしい」
「りょーかい」
物が物だ。
顔を隠したり身分を隠して活動することにしよう。
◇
一方、その頃。
エリスの元に1本の連絡があった。
「くすくす、エリスさん。久しぶりですわね」
エリスに電話をかけてきたのは皇族であった。
「プレイグマウスの掃除をお願いしたいのですけど、出来ますか?」
「皮は?」
「もちろんすべて回収してください。効率的に行うためにも、マリアン、ミーナあたりの優秀な人材を連れていくといいでしょう。報酬は弾みますよ」
「かしこまりました」
「新たな五皇。その力を皇都中に見せてやってくださいな。我ら皇立ヴァイトリング魔法学園の五皇は最強である、と知らしめるのです」
「かしこまりました。皇女様」
「タイムリミットは夜が開けるまで。それくらいできますよね?入学式には私もプレイグマウスの皮で作られた高貴でおしゃれな制服で通いたいですからね?加工にも時間が必要です。なるべく早めにお願いします」
皇族の命令は絶対である。
たとえ、不可能だと思っていてもエリスには頷く以外の選択肢は無い。
「かしこまりました、皇女様。期待してお待ちください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます