Fランク学園と間違えてSランク学園に入学した無能な俺、間違えたことに気付かず勘違いしながら無自覚に無双してしまう。俺は庶民モブのはずだが何故か皇女様がよってくるようになった
第6話 【他視点】田舎民、二位との差は歴然
第6話 【他視点】田舎民、二位との差は歴然
「私もおかしいと思っている」
学園長はみんなの気持ちを代弁するように話していた。
「この国で生活している人間であるなら、トップ5の予想はそこまで難しくないと思う。事実私もある程度予想は当たっていた、が。一番外れないと思っていたエリスが二位というのが腑に落ちない」
マリアンの背筋は凍っていた。
(エリスを超える何者かが今年はいたってことなのでしょうか?)
問題なのは、その誰かがマリアンには全く分からなかったことである。
もしかして自分なのか?と思ったりするほど楽観的では無い。
エリスはただでさえ3位相手にはダブルスコアを付けて頭一つ抜けている。
そんなに強い相手より自分が優秀だと思えるわけが無い。
(いったい誰が?今年一番優秀だったの?)
「それでは、最後の1位を発表するぞ」
期待が高まる中、学園長はあっさりと口を開いた。
「第一位。アルマ」
シーン。
静まり返った。
(だれ、ですの?)
「アルマってだれだよ」
「どこから出てきた?アルマなんて」
「まじでだれ?家名は?どこのやつだよ」
ザワザワ。
そんな言葉が漏れている。
誰も知らなかった、アルマという存在を。
ワナワナ。
学園長は震え出した。
「な、なんだ?この得点は。バグっているのか?得点が9,999だと……?」
あの学園長が動揺している。
そのときだった。
「それについては私からも説明しましょう」
突如声が増えた。
全員の視線が今の声の主に集まる。
それは
(防衛騎士団の団長さん?)
この国にいてその名前を知らないそれほどの存在が目の前にいた。
皇立学園は皇族が運営している。
そのため皇族の命令ひとつで、近衛騎士団長すら学園に駐在させることが出来る。
だからこの学園にいること自体は不思議では無いし、驚くべきことではない。
しかしマリアンを含む生徒を、この騎士団の団長が驚かせていたのも事実だ、
(この国で最強の騎士がどうして、怪我をさせられているんです?)
「すまない。みんな。今日、私は皇国最強の座を奪われてしまった」
ぺこり。
騎士団長が謝罪する。
「アルマという男は実在する。私はその少年に完敗させられた」
団長は学園長の顔を見て続けた。
「その少年の得点表はバグっているわけではない。9999点を獲得する条件【面接官を3秒以内に撃破】をクリアしたのです」
騎士団長は「修行に戻ります」とこの部屋を出ていった。
ポツンと残されたメンバーたち。
誰もが固唾を飲んでいたが、学園長はなんとか話を続けた。
「かなりの番狂わせが起きたが、予定通り進める。五皇、成績トップファイブは前に出てきてくれ」
皇立学園での毎年恒例のイベント。
成績トップ者はその年の入学者全員に自分の顔を焼き付けることができる。
すっ。
あらゆる所から少女たちが動き出す音が聞こえた。
そして、前へ整列する。
その数はもちろん、4人。
最後のアルマというピースが物理的に欠けているからだ。
しかし、この場においてリアン以外は知らない。
この場にアルマがいないことを。
学園長が代表で驚愕していた。
顔が引きつっている。
「まさか、この場にいないのか?アルマは。発表も待たずに帰ったのか?信じられんが、まぁいい。予定通り、進めよう。さぁ、各自思いを語っていってくれ」
学園長に促され、5位のシャーロットから胸の思いを語り始める。
「オーホッホッホ!どこの誰か知りませんが、面白いですわね。3年かけて首位は奪いますわよ!ナンバーワンは私ですわっ!」
5位は言った。
自分こそが、頂点にふさわしいと。まだ、負けていない。
「……」
4位は胸の思いを語らない。
そのため、何を考えているのかは分からない。
「わわわわ、私に言うことなんてありませんが。アルマくんすごいです。私と同じで目立ちたくないのかなぁ?気が合いそうなのですぅ」
3位は自分のことを語らない。
ただただ圧倒的なスコア差で君臨したアルマという絶対的な皇帝を。
純粋な心で尊敬していた。
そして、最後にエリスが語る。
「3年かけて一位を奪還する。それだけです」
元1位は勝つべき相手が現れた歓喜に震えていた。
この場ではアルマに対する多くの感情が渦巻いていた。
敵意、ライバル心、好意、恋心。
あらゆる感情が渦を巻いていた。中には複雑な感情を抱えるものもいる。
リアンである。
(アルマくんと結婚しないと)
現状、アルマの顔を知っているのは彼女だけだ。
そのアドバンテージを活かすつもりなのだ。
この世界では一夫多妻制が認められている。
しかし、第一位の妻とそれ以外とではいろんな面で扱いに大きな差が出てくる。
(誰よりも早く、婚約の話をしにいかないと)
彼女たちはこの学園に遊びに来ている訳では無い。
誰1人として遊びに来ている訳では無い。
本気で自分を高めるために学園にきている、将来のことを考えて。
そのため、将来の自分のためになる行動は惜しみなく行っていく。
(探そう。アルマくんを。アルマくん、ほんとは一目惚れしてたよぉぉぉぉぉぉおぉ)
リアンは誰よりも早く部屋を出ていった。もちろん、アルマを追う。自分の全力で一人の男を探す。
(教えて。索敵魔法。アルマくんはいまどこに?)
彼女がこの会場を抜けたことには誰にも気付かなかった。
この会場がそれだけ熱気に包まれていたから。
だが、熱気も長持ちはしない。
数分程度で静まっていく。
静まった中学園長は生徒たちに問いかけた。
「それで?質問のある者は?」
マリアンが挙手した。
「学園長。結局私は何位だったのでしょう」
「10位だ」
(え?そんなに低かったんですかぁ?!)
だが、マリアンはその情報を聞いたことで自分の中の思いをはっきりさせることが出来た。
(アルマくん……結婚しよ。マリアンはもうつかれた。競争するのしんどいよぉ)
そして、合格発表式は学園長の言葉で締めくくられることとなる。
「発表式はこれで終わりだ。これから全員で切磋琢磨していくようにっ!解散っ!」
こうして、アルマは自分の知らないところで勝手に熾烈なエリート争いに知らずにに巻き込まれることになって行くのだった。
なおアルマ本人はこの熾烈な争いを(なんか、そよ風が吹いてるなぁ)くらいにしか感じないことは誰も知らなかった。
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