第2話 田舎民、受験
ハンバーガーをペロリとたいらげた俺は、爺ちゃんの地図に従って公立ヴァイトリング魔法学園の門前まで来ていた。
「ここが公立ヴァイトリング魔法学園かー」
俺が3年間、通うことになる場所。
笑いあり、涙あり。絶望も、希望もあって。
ついでにエロもあり、エロもあって、エロがある。
修学旅行で女子のお風呂覗いたり、魔法で女子のスカートめくって、パンチラしたりするかもしれない。
そんでもって、俺は女子に怒られて顔が真っ青になるまで殴られるもしれない。
色んな意味で青い春が俺を待っている。
まさに青春。
俺はその一ページ目をこれから刻み込もうとしている。
さぁ、学園に入るぜ!
こうして敷地内に入った俺をさっそくイベントが出迎えてくれた。
聞こえてくるんだ。怒号が。
「庶民がこの皇立ヴァイトリング魔法学園の敷地内に足を踏み入れるな!」
ビクッ!
俺が言われたのか?
そう思って俺は体を震わせたんだけど。
違った。
声が聞こえたのは前の方から。
校庭の方からだった。
どうやら身分の高そうな男が女の子に罵倒しているようだった。
(やってんねぇ)
さすが公立ヴァイトリング魔法学園。
民度の低さが出てるな。
名前を書けば入れる学園だから色んな身分の人間が集まる。
その中にはマナーが終わっている人間も含まれる。
よって、民度の低さが出てくる。
(あんなのに目をつけられたらめんどくさいな)
変なやつに絡まれないためにもスルーしようか悩んだけど。
思い出してしまった。
『困ってる人がいたら助けてあげてね』
(仕方ないな、今回だけだぞ♡)
俺はこう見えて約束は違えない男だ。
スタスタと歩いて前方の2人組みに近付いた。
よく見ると女の子の方も別に身分が低そうに見えない。
この子よりもあきらかに身分の低い俺が来たんだ。
この子からもターゲットが反れるだらう。
俺がタンクになるぜ?嬢ちゃん。
「今年はもっと身分の低い俺が入学するから、その子を解放してやってくれないか?」
男が俺を見た。
目を細めた。
「なぜ、貴様のような庶民以下がこの敷地内に入ってるんだ」
「別にいいでしょ?」
公立の方は誰もが入れるんだし。
そういう選民思想は皇立の方でやってもろて、いいでっか?
「くそっ、どうなってる。なんでこんな庶民がいる」
男は歩いていった。
ふぅ、どうやら助かったようだ。
俺の身分が低すぎて叩くのも可哀想になったのかもしれない。
ちなみに俺が着ている服はボロボロの布切れみたいなやつだ。
一目であ、こいつ貧乏人だわって思われるようなスタイルである。
そんな奴の近くにいたら女の子まで貧乏人に思われるかもしれない。
だから早々に離れよう。
「じゃあね」
俺はそう呟いて試験会場の方に行こうとしたんだけど。
「ま、待ってください」
女の子にそう声をかけられた。
振り返る。
「これから試験会場に行くんですよね?」
「そうだけど、どうかした?」
「そっち、道違いますよ」
すまない。
田舎民は方向音痴なんだ。
初めて東京にいったとき、駅で迷いまくったよ俺。
ここ、どの降り口だよって。
むしろ、今どの駅にいるのかすら分からなかったよ。
◇
俺たちは試験会場まで移動を始めた。
試験会場は学園の体育館である。
そこに向かうまでに女の子と会話してた。
「私はリアンと申します。家名はスノーブルーあなたは?」
「アルマ」
「家名は?」
「ないよ、そんな上品なもの」
キョトンとしてた。
俺には正式な親がいないから家名なんてないし。
アルマという名前があるだけ。
言ってみれば名無しの権兵衛ってやつじゃないかな。
リアンは直ぐに事情を察したのか話題を切り替えた。
「ど、どちらから来たのですか?(この人もしかして皇立と公立を間違えてない?ここは皇立だけど。でも、間違えてないかもしれないし、指摘できないよー。プライド高い人だったら、恥をかかせるなって怒るしなー)」
「名前もないような村だよ。だから答えられないや。ははは」
「なるほど(間違えてそー、でももう今から公立に行っても試験間に合わないしなー。こっちで頑張って~~~)」
簡単な自己紹介みたいな会話だった。
そんな会話をしていると試験会場に到着。
試験会場の中に入っていく。
試験は大きくわけて工程が3つ存在する。
まず、第一試験。
魔力測定。一般的な学園だとこの魔力計測で受験者の1/5くらいが落ちるらしい。
でも安心して欲しい。ここは公立ヴァイトリング魔法学園。名前を書けば入れる学園。
俺のような貧弱な魔力量でも問題は無い。
第一試験を受けるための列に並ぶ。
案の定、並んでいる人間の殆どがなんの問題もなく次の試験に向かっている。
ありがとう公立。
公立のガバガバ試験に感謝する。
俺が並んでいると前の男が振り返った。
「お前はさっきの貧乏人か」
前にいたのはさっきリアンに絡んでた男だった。
「お前本当にここの試験受けるんだな(ま、これ以上は何も言わないでいいか。どうせこいつ落ちるし。こんなやつ、相手する価値もない。つーか、こいつ公立の方と間違えてるだろ?バカなのか?)」
それっきり男は俺の方を見てこなかった。
やはり貧乏人過ぎて相手するのも可哀想と思っているのかも。
人の心が残っているようで良かったよ。
やがて男の順番になった。
「このジェイス様が華麗に入学を決めてあげよう」
そんなことを言いながら魔力測定器に手を当てていた。
魔力測定器のモニターを見ていた試験管がこう言った。
「合格です」
「ま、当然だわな。俺が不合格な訳がねぇ」
ジェイスは次の第二試験へ向かおうとしていた。
その前に俺の方を振り返ると。
「じゃあな、頑張れよ(こいつ公立と間違えてるし。馬鹿すぎて可哀想になってきた。最後に応援しといたろっ!)」
「うん。頑張るよ(応援してきたし、実はいいやつでは?)」
次に俺が測定器の前に立った。
試験管が俺を見てくる。
「キミは……(なんだこいつ。ここは皇立ヴァイトリング魔法学園だぞ?なんでこんな身分の低そうなやつがいる?)」
名前を聞きたいんだろうか?
そう言えばジェイスも名乗ってたもんな。
「アルマです」
「アルマくんか、測定器に手を当ててくれ(こんな見るからに身分の低いやつ、実力も低いに決まってるし不合格に決まってる。やるだけ無駄だと思うがな)」
俺は測定器に手を触れた。
(どうか、受かりますよーにっ!まぁ、祈らなくても全員合格なんですけどね)
そして、俺は魔力を流す。
ぶちっ!
ばちっ!
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!
測定器からそんな音が鳴った。
(え?なんの音?これは)
チラッ。
試験官に目をやる。
目を大きく見開いてた。
(驚いてる?!俺の魔力が無さすぎて驚いてるのか?!)
これはやばいかもしれん。
俺のエロエロ学園生活はここで終わるのか?
ちょっと不安になってきた。
試験官は呟いてた。
「まじかよ…(こんな規格外の魔力量見たことないぞ。化け物か?)」
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