Fランク学園と間違えてSランク学園に入学した無能な俺、間違えたことに気付かず勘違いしながら無自覚に無双してしまう。俺は庶民モブのはずだが何故か皇女様がよってくるようになった

にこん

第1話 田舎民、都会へ行く

 ヴァイトリング皇国。

 俺が今いる皇国の名前である。

 俺は10年ちょっと前からこの国の田舎の村で生活を始めた。

 名前もないような田舎の小さな村だ。地図にも載ってないとかどうとか。


 ちなみに、俺はいわゆる異世界転生者ってやつだった。

 前世は普通の日本人。

 俺はバカだったので金が稼げなかった。

 そんなわけで地を這うような生活をしていたが、栄養バランスを考えないような食事をしていたせいで突然死してしまった。

 まぁ、細かいことはどうでもいいだろう。

 しょせんは前世のことだ。俺も忘れることにする。


 今はこの世界で生きてるんだし。


 そんな俺も今年、ついに学園に通えるようになった。


「悪いのう。アルマ。学園の入学試験に付き合えなくて」


 じいちゃんがそう言ってきた。


「うんうん、気にしないで」


 俺はこのじいちゃんと10数年過ごしてきた。

 どうやら俺は捨て子だったらしく、拾われたのだ。(捨ててあったのはスラム街らしく娼婦が産んで捨てたと思われる)

 それでこの田舎で育てられた。


 そんなわけでじいちゃんには感謝しかない。


「それより、ごめんね、じいちゃん。俺無能で」


 下を見た。


 じいちゃんは俺にこんなにしてくれたのに、俺はなんにも返せない。


 情けなくて涙が出てきそうになる。


「ふぉっふぉっ。気にするでないアルマ。お前はようやっとる」


 ポンポン。

 頭を撫でてくれる。


「お前が入学する学園は分かっておるな?」

「ふふん、とうぜんだよ」


 俺は学習能力が高い。


 入学する学園はわかってる。


 それは公立ヴァイトリング魔法学園。

 どんな学生だって受け入れてくれると言われている公立の学園だ。

 だから俺みたいな貧乏人でなんの取り柄もない人間でも入学することが出来るのだ。


 ちなみに注意点なんだが。

 これと同じ発音の学校がある。

 それが皇立ヴァイトリング魔法学園である。

 こっちは公立の方と違って皇族が経営してるそうだ。

 エリート中のエリートしか来ない学園。生徒のレベルも恐ろしく高い。言ってみれば全員が漫画に出てくるような主人公である。


 まるで漫画みたいだけど。問題はない。


 俺が入る学校なんて間違えるわけがない。

 ちゃんと自分の意思で公立の方に行って、のんびり暮らす。


「ふむ。よく分かってるようじゃな。ワシから贈り物を送るぞ」


 じいちゃんは俺にマップを渡してくれた。


「お前が迷わずにヴァイトリング魔法学園までいけるように事前にマップを作成しておいた。この地図を信じて歩きなさい(ワシのかわいい息子よ。お前ならきっと皇立ヴァイトリングでも無双できるじゃろう。ワシはそう信じておる)」


「うん、分かってる。俺が入学するのはヴァイトリング魔法学園だよね。ありがとう、愛してるよじいちゃん(爺ちゃんは俺が無能なことを知ってるはずだ。間違いなく公立の方のことを言ってるだろう)」


「ふむ。ちゃんと分かっておるようじゃな。安心したぞい」


 俺は最後にじいちゃんとハグした。


「気をつけて行くのじゃぞ、アルマ。皇都には危険がいっぱいじゃ(アルマなら問題なく切り抜けるじゃろうが)」

「うん!俺、頑張ってくるよ!(へへん。俺は井の中の蛙だけど。大海は知ってるよ。慎ましく生活するから、だいじょーぶいっ)」


 こうして俺は生まれて初めてこの田舎を出ることになった。

 目指すは皇都!


 都会だ!

 楽しみだなぁぁぁあぁぁぁああ!!!!




 歩き2時間くらいで皇都までやってくることが出来た。


「ここが、皇都かぁ」


 歩くスピードを落としてじっくりと皇都の中を見て回ることにした。

 ハンバーガーショップ、パフェショップ。


 田舎では食べられなかったような食べ物がズラリ!


「じゅるり……歩き疲れて腹減った」


 パフェには興味は無いけどハンバーガーには興味津々。

 前世ではハンバーガー好きだったから。


 そういえば、この世界ってどういう仕組みで物を買ったりするんだろう?


(やっぱ、お金とかあったりするのかな?)


 田舎にいたころはじいちゃんや婆ちゃんとか村人の手伝いをしたら、飯くれたりお菓子くれたりしたからよく分かんないんだよな、村の外のこと。

 あの村にはお金という概念がなかった。


(聞いてみるか?さいわい時間はあだあるしな)


 俺はハンバーガーショップに近付いてみた。

 まだ時間帯が早いのか人がそんなにいない。


 っていうか、俺以外の客は1人しかいなかった。

 女の子の客。

 高そうな服を身につけてた。


 金色の髪の毛はきれいだ。

 毎日お風呂入れてるし、毎日手入れもしてるんだろう。


 とても上品な女の子だ。


 なにかの空き時間にここで軽く食べているのだろうか?


(おっと、ジロジロ見すぎた。失礼だな)


 カウンターの方に向かってく。

 カウンターの中では髭モジャのおっさん店員が働いてる。


「らっしゃい。どれにするよ?坊主」


 店員はニコニコとした顔で聞いてきた。


「これがいい」


 メニュー表のシンプルなハンバーガーを指さした。

 パンに肉が挟んでるだけのやつ。


「あいよ。150ジュエルだぜ」

「ジュエル?」


 お金だろうか?

 持ってない。

 店員はなにかを察したようだった。


「おま……お金を知らないのか?」

「はい知りません。どうやったら手に入りますか?」

「そりゃまぁ、働いたり、もの売ったりだなぁ」


 うぐっ。

 どちらも今からじゃキツそうじゃないか?


 今の俺に売れるものなんてないし。

 働く時間もない。

 あと1時間くらいで会場まで行かないといけないし。


「うぅ、食べたかったなぁ」

「悪いが、金がないなら諦めてくれ。てか金も知らねぇとかどんな田舎から出てきたんだよ。常識だぞ?」


 シュン。

 俺は肩を落とした。


 そのときだった。


「店員さん、これをひとつ」


 横から女の子が乱入してきた。

 さっきの客の女の子だった。

 追加でまだ食べるんだろうか?

 よく食べるなー。


「あいよ450ジュエルだな」


 女の子はスムーズに会計を済ませる。

 そして、店員もスムーズに商品を出てきた。

 両方、慣れてるよなぁ。


(すごーい。都会ガールと都会おっさんだ。俺も都会ボーイになりたいなー)


 そう思いながら見ていたら、


「はい、どうぞ」


 女の子が俺にハンバーガーをくれた。


「え?いいの?」

「いいよ。困ってそうだからね」


 ハンバーガーはすごくいい匂いしてた。

 しかも熱そう。

 おいしそー。


「その代わり君も他の人が困ってそうなら助けてあげてね」


 女の子は店を出ていった。


「良かったじゃねぇか坊主。いい人もいるもんだな」

「うん。聖人だよね。ほんと」


 俺はさっそくハンバーガーを食べることにした。


 もぐもぐ。

 味は……


「どうだ?うめーか?坊主。正直に言ってみろ。うめーだろ?」

「うん!すごい!」

「お?すごいうめーんだな?がははは」



「ふつー」


 もぐもぐ。


「ふ、ふつー?ふつーなのか?」


 おっさんは困惑してたけど。


「うん、すごいフツーの味。マックの方がうまいや。ごちそうサマー」


 もぐもぐ、ごくん。


 さてと、そろそろ学園の方に行こう。

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