暗くなったステージに映し出された、ナゾの塊。

 それは8個の球体になって、どんどん大きくなっていく。

 

 ミサキ「コールガが分裂した!?」

 コウタ「コールガにあんな能力があったなんて⋯⋯」

 

 ステージ1階に集まったミサキたちは、8個の塊になったコールガを見て驚いている。

 

 アコヤ「ど、どうすればいいの⋯⋯?」

 

 アコヤちゃんは、シヅキを構えながらミサキに聞く。

 

 ミサキ「わたくしがまとめて相手します。 その間に、みんなは救援を呼んでください」

 コウタ「何言ってるの! ミサキひとりであんなのと戦えるわけない!」

 ミサキ「けど、戦力が不足しているんですのよ!?」

 コウタ「だからってミサキが無茶する必要は無いじゃん!!」

 

 言い争うコウタとミサキ。

 すると⋯⋯


 シキシマ「オレたちのことを忘れてないか?」

 

 観客席から男の声がした。

 同時に爆発音がして、スクリーン上のコールガが炎に包まれる。


 マーガレット「なんでもひとりでやるのは、非効率的よ」

 セネカ「アタシだって活躍したいし」

 スペンサー「いつまでも面倒を押し付けるわけにもいかないだろ」


 ステージ中に響き渡る、聞いたことのある声。

 観客席の自分たちは、声がした方に振り向く。


 ミサキ「うそ⋯⋯」


 観客席の中心。

 不自然に空けてあったスペースのところに、ベゼルを構えたサードレギオンのみんなが立っていたんだ。

 

 アコヤ「サードレギオン!」

 マドノ「間に合ったんですね!」

 

 観客席からステージに歩いて行くサードレギオンのみんな。


 シキシマ「油断するな。 コールガにダメージは与えたが、それでも数分で再生する」


 ステージに上がったシキシマの隣に、ミサキが立つ。

 

 シキシマ「ミサキ。 無茶をしていいのは、オレみたいに前へ出て戦うヤツだって言ったろ?」

 ミサキ「ごめんなさい、シキシマ」

 

 ミサキがリーダーのことを名前で呼ぶ。


 アコヤ「ミサキ。 いまリーダーのことを名前で呼ばなかった?」


 後ろにいたアコヤちゃんたちは、ミサキとシキシマの顔を交互に見る。

 

 シキシマ「おまえたちには、まだ自己紹介していなかったな」

 

 シキシマはサードレギオンのみんなに合図を出し、タイミングを合わせて一斉にヘルメットを脱ぎ、アコヤちゃんたちに素顔が見せる。

 

 アコヤ「ケ⋯⋯ケモノ?」

 

 シキシマは、背が高くて、ライオンみたいな風格とトラみたいな力強さを感じるライガーの姿をしていた。

 シキシマ以外のメンバーも、イヌやネコの特徴を持った人型のケモノ⋯⋯獣人じゅうじんと呼ばれる存在の姿をしている。

 

 シキシマ「オレの名前はシキシマ。 サードレギオンを率いる指揮官であり、ケモノの姿を持つアンドロイドだ」

 

 シキシマが自己紹介をしていたところに、ステージ中心の入口から姿を現したももえ教官とアケミ教官が合流する。

 

 ももえ「サードレギオンは、ラーンと戦うために作られたアンドロイドをテストするチームだったのよ」

 アコヤ「アンドロイド⋯⋯」

 アケミ「ベゼルを使いこなせて、長い時間ラーンと戦える人間は少ない。 その戦力不足を補うために開発されたのが、彼らなんだ」

 

 アコヤちゃんたちは、サードレギオンのみんなをじっくりと観察する。

 

 ももえ「実在する沿岸警備隊や海上保安庁が運用する船の名前と歴史を、自分の名前や育ちとして流用しているの。 そうすることで、いままでのアンドロイドにはなかった『個性』を目覚めさせることができたのよ」

 アコヤ「ケモノの姿は、人間と簡単に区別できるようにするためだ」

 

 ももえ教官とアケミ教官が説明していたとき、アコヤちゃんたちは何かに気づく。

 

 アコヤ「まさか、バーソルフ司令やカルフーン副司令も?」

 ももえ「バーソルフ系列の兄弟・姉妹は、ドラゴンをモチーフとしたアンドロイドとして作られているわ」

 アコヤ「あの姿ってコスプレじゃなかったんだ」

 ミサキ「アコヤちゃん⋯⋯」

 

 アコヤちゃんのひとことにツッコミを入れるミサキ。

 前の公演ではセリフと流れがちがったので、このやりとりも千秋楽公演だけでしか見れない。

 

 スペンサー「ケモノの姿だと、人間って以外とフレンドリーになるんだよな」

 セネカ「人間そっくりに作ろうとすると、色々メンドーだって聞いたしね」

 

 ももえ教官にヘルメットを渡しながら説明するスペンサーとセネカちゃん。

 マーガレットさんとシキシマは、アケミ教官にヘルメットを渡していた。

 そのタイミングに合わせて、体がボロボロになっていたコールガが動き出す。

 

 シキシマ「コールガの再生が終わりそうだな」


 ベゼルを肩に担ぎながら、再生するコールガを見るシキシマ。

 ももえ教官とアケミ教官は、静かにステージを去っていく。


 ミサキ「なぜ今のうちに攻撃しないのです?」

 

 シューティングモードで構えながら、ミサキはシキシマに聞く。

 

 シキシマ「分裂するタイプの敵は、分裂した個体全てが本体だと思ったほうがいい。 つまり、同時にトドメを刺さなければ、またたく間に再生する恐れがある」

 アコヤ「分裂したコールガは8体でしょ? これを同時に⋯⋯」

 

 8体のコールガは、再生を続けながら鳴き声を上げる。

 

 シキシマ「ここには、サードレギオンのメンバー8人がそろっている。 しかし、ミサキたちの能力を考慮すると、ひとりでコールガ1体を相手にするのは難しいだろう。 そこで、スペンサーからひとつ提案がある」

 スペンサー「ふたりひと組でコールガを相手にするんだ。 基本ポジションを確認してペアを決めるから、全員はポジションについてくれ」

 

 スペンサーの指示に従いながら、ミサキたちはステージ上でそれぞれのポジションに移動した。

 ミサキはセンターに、マーガレットさんはうしろ、上手にアコヤちゃん、下手にマドノちゃん、コウタとシキシマが前、少し階段を登った上手と下手にセネカちゃんとスペンサーが立つ。

 そうして、サードレギオンの基本ポジションが完成した。


スペンサー「コウタはおれと、セネカはアコヤと、マーガレットはマドノとペアになれ。 リーダーはミサキとのペアでいいな?」

 

 スペンサーに聞かれたシキシマは、無言でミサキを見つめる。

 ミサキはシキシマと目を合わせて、無言でうなづいた。

 

スペンサー「おれとコウタ、セネカとアコヤのペアは2体ずつ。 マーガレットとマドノは1体を相手にしつつ、ミサキとリーダーが相手にする3体に対して攻撃を加えてくれ。 ただし、トドメは刺すなよ」

アコヤ「ミサキとリーダーが3体も同時に相手するんですか!?」

スペンサー「マーガレットとマドノのペアだと、1体片付けるのに時間がかかるからな。 先に分身を片付けたペアが、ミサキとリーダーのサポートに向かってくれ」

コウタ「了解!」

 

 そして、より大きな音量でコールガの鳴き声が響く。

 

シキシマ「ヤツの再生も終わりそうだ」

マーガレット「こちらとの距離も近いわ。 アイツはすぐに上陸するでしょうね」

スペンサー「ここが正念場だ」

セネカ「でも、セネカたちサードレギオンの敵じゃないよ」

 

 シキシマ、マーガレットさん、スペンサー、セネカちゃんが、ベゼルをシューティングモードで構える。

 

ミサキ「わたくしたちは負けられない」

コウタ「大切な居場所を、ぼくたちが守るんだ」

アコヤ「パパやママ、友達や先生、海の森のみんなのために」

マドノ「わたしたちで、あの敵を倒そう」

 

 次に、ミサキ、コウタ、アコヤちゃん、マドノちゃんが、ベゼルを構えた。


シキシマ「サードレギオン」


 シキシマのセリフと同時に、BGMが止まる。


シキシマ「コールガ、討伐とうばつ!」

 

 シキシマの号令を確認し、全員がシューティングの動作をする。

 そしてステージの照明が暗くなって、全員がステージから去った。

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