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ステージが明るくなると、ミサキたちが1階に並んでいた。
アケミ「みんな、準備はいいな?」
1階の下手にいるアケミ教官が、ミサキたちに聞く。
ミサキ「いつでも行けます」
1階のセンターに立つミサキが、シラミネを構えた。
アコヤ「ミサキ、そのシラミネで戦えるの?」
ミサキ「訓練までに完成させておきましたから、問題はありません」
説明しながら、ミサキはシラミネを見せた。
ミサキ「シラミネには、パワーを無理やり上げて攻撃力を高める代わりに防御を捨てるカスタムパーツ『ブーストシステム』を改造した、攻撃力を犠牲に防御力を高めるパーツを組み込んでありますの。 防御に関しては、どのベゼルにも負けませんわ」
ももえ教官は、シラミネを見ながら感心する。
ももえ「どんな時でも、仲間を思うミサキくん⋯⋯」
ももえ教官が、いきなりポケットからハンカチを取り出して目元をぬぐいながら「ステキ⋯⋯」と言ったせいで、シリアスなシーンだったのに観客席から笑い声がした。
アコヤ「あと5分でドロヴンの一部が公園に来る。 私たちは、正面からドロヴンを迎えうつぞ」
ももえ「サードレギオンが出撃できるまであと30分。 この30分だけがんばって」
アケミ教官とももえ教官が話している間に、背景には沢山のドロヴンが映し出されていた。
ミサキ「先生」
シラミネを脇に抱えながら、ミサキがアケミ教官とももえ教官を呼ぶ。
ミサキを見たふたりは、無言でうなずいた。
ももえ「ミサキくんは前に出て、ドロヴンをある程度倒したら移動する。 ミサキくんが、こっちに向かうコールガを足止めするわ」
ももえ教官の言葉を聞いて、アコヤちゃんたちも覚悟したらしい。
アコヤ「あたしたちでサポートできないんですか?」
ももえ「そんなことをしたら、ドロヴンと戦っているところにコールガが乱入する。 そうなったら、大変なことになるわ」
アコヤ「そうですか⋯⋯」
アコヤちゃんは泣き出しそうになっていた。
そんなアコヤちゃんの肩を、ミサキは優しくたたく。
ミサキ「心配いりませんわ、アコヤちゃん。 危なくなったらすぐ逃げます」
アコヤ「ミサキ⋯⋯」
ミサキ「わたくしがひとりでコールガを相手にするけど、それはシラミネが守りを重視した機体だからできることですし」
ミサキの話をさえぎるように、ドロヴンの鳴き声がステージ中に響き渡った。
アケミ「時間が無いぞ!」
ももえ「みんな、構えて!」
ベゼルを構えたアケミ教官とももえ教官に続いて、ミサキたちはベゼルを観客席に向けて構える。
ももえ「戦闘、開始!」
全員がシューティングの動作をして、銃声の効果音が響く。
そして、ミサキをステージの中心に残し、アコヤちゃんたちはステージを去った。
ミサキ「初めての実戦で、はじめて仲間を守ることになった。 けど、怖いなんて言ってられませんわ!」
上手にいたミサキは、シラミネを横に構えてから、ダンスをするみたいに高速でターン。
ドロヴンを何匹か倒して、下手に移動する。
ミサキ「まずはドロヴンの群れを分断して、戦いやすくする!」
ミサキはシラミネをくるりと回したあと、上手の方向から突進してきたドロヴンをシューティングで倒す。
ももえ「ミサキくんが突入して、ドロヴンの群れをふたつに分けたわ!」
アケミ「私たちは前方の群れをたたくぞ!」
アコヤ「後方のはどうするんですか!?」
アケミ「ミサキくんに任せるんだ! ヘタに攻撃したら、ミサキくんが引きつけていた群れまでこちらに合流してしまう!」
アケミ教官とももえ教官の命令にしたがいながら、2階に移動したアコヤちゃんたちは、背景に映るドロヴンたちを撃つ。
ミサキ「まだ、お姉さまみたいな戦い方はできないけど、それでもやれることはある!」
上手の方向に走りながら、ぶんぶんと八の字を書くみたいに大きくシラミネを振って、集まってくるドロヴンを切るミサキ。
次に、ミサキが背景のほうにシラミネを向けると、マシンガンの音がした。
マドノ「コールガの接近まであと15分!」
背景にタカチホを向けていたマドノちゃんが声を上げる。
コウタ「少し速くなってない!?」
アコヤ「ミサキに気づいたのかもしれないわ!」
1階で戦うミサキと、背景に小さく映るコールガを交互に見るアコヤちゃんたち。
ミサキ「コールガがわたくしに気づいた。 なら、離れた位置に誘導するべきですわね」
すぐそばに投影されたドロヴンを切りながら、ミサキはコールガを見る。
そのあと、シラミネのコアに手をかざしてエネルギーを貯める仕草をしたあと、コールガにシラミネを向けた。
アコヤ「コールガにチャージショットを撃ち込んだ!?」
青白いビームを放ったミサキを見て、アコヤちゃんはおどろいていた。
同じタイミングで、コールガが鳴き声を上げる。
アケミ「コールガは、ミサキくんに狙いを定めたようだ」
ももえ「みんな、前線を上げるわ! 先生たちに続いて!」
アケミ教官とももえ教官にみちびかれながら、アコヤちゃんたちは2階の上手に集まる。
すると、2階の上手側のライトが暗くなって、2階の下手からサードレギオンが現れた。
スペンサー「このままじゃ、ミサキが孤立する!」
マーガレット「まだベゼルの調整は終わらないの!?」
スペンサーとマーガレットは、落ちつかない様子で戦闘を見守っていた。
シキシマ「あと10分で調整は終わる。 それまで、アカデミーの生徒を⋯⋯ミサキを信じるしかない」
シキシマは、ただミサキを見つめている。
ミサキ「群れの分断に、味方の射線をさえぎらないようにするためのポジショニング。 それに、コールガの誘導と、ドロヴンの相手。 やっぱり、前衛は楽じゃありませんわね」
肩で息をしながら、すごく辛そうな声でひとりごとをつぶやくミサキ。
でも、ミサキはシラミネを振り続けた。
ミサキ「お姉さまは、こんなに大変なポジションで戦うリーダーを後ろから支えていたんですね」
やがて、スポットライトがミサキを照らすものだけになる。
ミサキ「だからわたくしは、お姉さまやみんなを助けられる、一番うしろのポジションを選んだ。 けど、それだけじゃ足りなかったのかもしれない」
ミサキを照らす光に、オーロラのような光が重なる。
ミサキ「前に出てみんなを守れる力と、勇気がほしい!」
ミサキは、飛びかかってきたドロヴンをけっとばす。
そのスキをついて、別のドロヴンがミサキを狙ってジャンプしていた。
アコヤ「あぶない!」
シキシマ「ミサキ!」
アコヤちゃんとシキシマがさけんだ。
ミサキはガードが間に合わなくて、ドロヴンの攻撃を受けそうになる。 でも、その瞬間⋯⋯。
ミサキ「こ、これは⋯⋯」
青いバリアのエフェクトがミサキを包んで、ドロヴンを弾き飛ばした。
ミサキはその一瞬を使って、弾き飛ばされたドロヴンを撃つ。
セネカ「いまの、普通のバリアとはちがうよね?」
ミサキのシラミネが発動したバリアを見ながら、セネカは首をかしげる。
スペンサー「ブーストシステムでパワーアップしたバリアが、オートで発動したんじゃないか?」
スペンサーも、考えるような仕草をしていた。
シキシマ「バーソルフめ、ミサキのためにオートガードも用意していたのか⋯⋯」
シキシマが説明すると同時に、2階上手のライトが暗くなって、サードレギオンの姿は見えなくなった。
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