次の日という文字が、背景に映し出される。

 

コウタ「今日は公園で訓練かー」

アコヤ「より実戦に近づけた訓練みたいよ」

マドノ「ってことは、ラーンを再現したロボットを相手にするんだよね? 怖いなぁ⋯⋯」

 

 ステージ1階中央で会話する、アコヤちゃん、コウタ、マドノちゃんの3人。

 

ミサキ「ももえ先生もいらっしゃいましたわ」

ももえ「みんな、準備はいいかしら?」

 

 上手の方から、ももえ教官と一緒にミサキが現れる。 

 

ももえ「今回は実戦を想定した訓練を行います。 みんなも知っているとおり、この訓練では、本物のラーンに近づけて作られたロボットを相手に戦ってもらいます」

 

 ももえ教官が説明していると同時に、大きな人型のロボットがスクリーンに映し出された。

 

ミサキ「よりによってヘヴリングの見た目ですか」

 

 思わず、ミサキがつぶやく。

 あの時の出来事が原因で、ミサキは必要以上に神経質になっているのかもしれない。

 

ももえ「ミサキくんが、ヘヴリングを相手にしてもちゃんと戦えるかテストしろって、バーソルフ司令に言われてるのよ」

ミサキ「まったく、余計なことを」

 

 ももえ教官から話を聞かされて、ミサキは下を向く。

 

アコヤ「気にしすぎよ、ミサキ。 司令やリーダーがミサキを信頼してるからこそ、難易度の高い訓練を設定したんじゃない」

 

 ミサキの肩を、アコヤちゃんがたたく。

 

ミサキ「信頼しているから?」

コウタ「ミサキは成績も悪くないのに、ミナトセンパイのことがあってから、訓練で力を出せなくなったでしょ? それを心配してるから、あえてキビシイ訓練を用意したんだと思うよ」

マドノ「わたしたちだって、ミサキくんといっしょに戦いたいもん」

 

 アコヤちゃん、コウタ、マドノちゃんにはげまされて、ミサキはやっと笑顔を見せた。

 

ミサキ「そうですわね。 こんなところで立ち止まってなんかいられませんわ」

 

 セリフのあと、ミサキはシラミネをくるりと回した。

 

ミサキ「わたくしなりに、がんばってみますわ」

 

 ミサキやアコヤちゃんたちのやり取りを見ていたももえ教官は、ポケットから白いハンカチを出して涙をふいていた。

 しかも、『ミサキくんファイト!』と書かれたナゾのうちわまで持っている。

 

ももえ「美しい友情だわ。 先生も、ご一緒しちゃおうかしら?」

ミサキ「先生、どうしてですか」

アコヤ「先生はもう隊員じゃないですか」

コウタ「ナゾのうちわまであるじゃないですか」

マドノ「ミサキくんファンクラブの第1号だったりしますか?」

 

 ミサキたちの冷静なツッコミのあと、観客席で笑い声がする。

 しかも、いつの間にか2階の下手にバーソルフが立っていて、せき払いしているおまけつき。

 今日が舞台の千秋楽公演なのもあって、コメディっぽいシーンやアドリブも豪華になっている。

 いちばんおどろいたのは、背景のモニターに『ももえ教官は戦闘になると鬼』という説明が追加されていたことだ。

 

バーソルフ「この訓練で、ミサキの実力を見極めよう」

 

 2階からミサキを見下ろしつつ、バーソルフは言った。

 

ももえ「ではみなさん。 配置について」

 

 ももえ教官の指示にしたがいながら、ミサキたちは移動。

 立ち位置についてから、ベゼルをシューティングモードで構える。

 

ももえ「訓練、開始!」

 

 ももえ教官の合図のあと、ミサキたちが射撃の効果音に合わせてベゼルを動かし、ステージは暗転した。

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