照明が元に戻って、マドノちゃんとコウタのふたりがステージ2階に現れる。

 照明はオレンジ色のものに変わり、おだやかなBGMと合わせて、舞台上の時間は夕方だと教えてくれた。

 

 コウタ「ミサキ、どうして訓練に来なかったの?」


 コウタが、ステージ1階から2階に上がってきたミサキに声をかける。


 ミサキ「出さなきゃいけないプリントがあったの忘れてて⋯⋯」

 コウタ「そうだったんだ」

 アコヤ「みんな大ニュース!!」

 

 コウタとミサキが話していたところに、アコヤちゃんが下手から走って来て割り込む。

 

 コウタ「どうしたのアコヤ?」

 マドノ「大ニュース?」

 アコヤ「そう、大ニュース。 校長先生から全校生徒に向けて、サードレギオンに関するお知らせのメッセージが送られてきたの!」

 ミサキ「お知らせ?」

 マドノ「わたしたち、マナーモードにしてたから気づかなかった」

 

 4人は、スマホ風の小道具をポケットから取り出した。

 同時に、ステージ1階の上手にももえ教官が現れる。

 

 ももえ「校長先生から連絡よ。 本日17時より、サードレギオンは選抜制のチームになります」

 

 ももえ教官が、選抜制になると言ったあたりで、アコヤちゃん、コウタ、マドノちゃんの表情が変わる。

 

 コウタ「サードレギオンも、ついに選抜制になるんだ⋯⋯」

 マドノ「すごいね」

 アコヤ「あたしたちも、もっとがんばらないと!」

 ミサキ「選抜制って?」

 

 ミサキがふしぎそうな顔をして、アコヤちゃんたち3人が、じっとミサキの顔を見る。

 同時にBGMも消えたので、静まり返ったステージ中に観客がクスクスと笑う声がひびいた。

 

 アコヤ「コーストガードには、各支部を代表するチームが作られるのは知ってるわね?」

 ミサキ「ええ。 サードレギオンもそうですわね」

 コウタ「日本だと、第1管区のファーストレギオンとか、第2管区のセカンドレギオンとか、そんな感じで作られてるんだよ」

 

 アコヤちゃんとコウタが順番に説明し、背景には各エリアやチームの名前が日本地図といっしょに表示された。

 

 アコヤ「チームにはコーストガードの隊員だけじゃなく、アカデミーの生徒が選ばれることもあるの」

 コウタ「アビリティを持ってると選ばれやすくなるって聞いたな」

 マドノ「アカデミーに通う子は、このチームに選ばれたくてがんばってるんだよ」

 

 アコヤちゃん、コウタ、マドノちゃんが説明を続けている間に、1階にサードレギオンが集まっていた。

 

 ももえ「これより、サードレギオンの追加メンバーを発表します」

 

 ももえ教官の言葉のあと、ステージが暗くなる。

 

 ももえ「1人目、神坂アコヤ」

 アコヤ「うそっ!?」

 

 スポットライトに照らされるアコヤちゃん。

 アコヤちゃんは目を丸くして、その場に立ち尽くしている。

 

 ももえ「2人目、九十九コウタ」

 コウタ「ぼく!?」

 

 次に、コウタがスポットライトに照らされる。

 

 ももえ「3人目、千両マドノ」

 マドノ「ええっ!?」

 

 名前を呼ばれて、スポットライトに照らされたマドノちゃんは、その場に座り込んでしまった。

 

 ももえ「4人目、海野ミサキ」

 

 最後にミサキが呼ばれた。 なのに、スポットライトは当たらない。

 

 アコヤ「どうしよう。 あたしたち、サードレギオンに選ばれちゃった!」

 コウタ「ぼくたち、まだアビリティも覚えてないのに⋯⋯」

 マドノ「わたしたちなんかでいいのかな⋯⋯?」

 

 3人は動揺していたのに、ミサキだけは落ち着いていた。

 

 ももえ「以上が追加メンバーです。 次回サードレギオンに出撃命令が出た場合は、バーソルフ司令やリーダーの指示にしたがってください」

 

 そう言い残して、ももえ教官はステージを去る。

 1階に集まったサードレギオンも、ステージからいなくなってしまった。

 

 アコヤ「気づいたけど、サードレギオンの人数って⋯⋯」

 コウタ「入院中のミナトセンパイを入れると9人になるね」

 マドノ「他のチームと同じ人数になるね」

 ミサキ「9人って?」

 

 ミサキが言うと、3人が一斉にミサキを見る。

 この流れ、さっきも見た気がするけど、自然な流れで進むから違和感はなかった。

 

アコヤ「コーストガード代表チームは、3人ひと組の班にわかれて行動することも考えて、ひとつのチームにつき9人のメンバーを決めてるのよ」

コウタ「サードレギオンは、秘密主義のチームなのもあって5人だったけどね」

マドノ「メンバーが9人になれば、担当のエリア以外の場所に行って活動することもできるんだ」

ミサキ「じゃあ、サードレギオンは本当の意味で代表チームになった⋯⋯ってことですわね」

 

 アコヤちゃんたちが会話をしている頃、シキシマがステージ中央に移動してきた。

 

シキシマ「これで、サードレギオンも本当のチームになれる」

 

 ステージが暗くなって、ミサキにスポットライトが当たる。

 

シキシマ「あとはきみ次第だぞ、ミサキ」

 

 そう言ってシキシマはステージから立ち去って、ミサキを照らしていたスポットライトも消えたんだ。

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