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ステージ2階がライトアップされ、上手と下手からそれぞれバーソルフとカルフーンが出て来たあと、2階中央の入口からシキシマが姿を現す。
この場面から、シキシマの衣装は白に青のストライプが入ったカッコイイジャケットに着替えていた。
バーソルフ「シキシマ、ミナトが離脱して1週間になるが、まだ代わりのメンバーを見つけていないのか?」
シキシマ「我らの隊に適した者がおらんのだ」
シキシマが答えると、バーソルフとカルフーンは悩むような仕草をする。
シキシマにバーソルフ、カルフーンやサードレギオンのメンバーたちは、動物やドラゴンをイメージさせる形のヘルメットを被っているから、表情がわからない。
かわりに、仕草でいまの感情を表現してる。
ちなみに、シキシマたちはシッポのアクセサリーもつけているけど、このシッポも動いたりする。
バーソルフ「秘密主義のせいで、最適な人材を見つけるのも大変なのはわかる。 だが、ひとりくらい候補はいないのか?」
シキシマ「候補なら、ひとりだけいる」
シキシマの言葉のあと、ライトが1階を照らして、ミサキたちの姿がわかるようになった。
アコヤ「サードレギオンかぁ」
アコヤちゃんが口を開く。
マドノ「秘密主義で、全国のチームではもっとも少ない5人のメンバーで成り立ってるチームだよね」
コウタ「その分、メンバーはコーストガードの中でトップの成績を残しているヒトらしいよ」
マドノちゃんとコウタが、アコヤちゃんに続いて語った。
アコヤ「でも、ミナトセンパイの離脱で、サードレギオンは完ペキじゃなくなった。 東京都や関東は、他のチームも協力して守ってる状態なのよね⋯⋯」
マドノ「ただ、他のチームはサードレギオンと交流することが禁止されてるから、うまく連携もできないって話だよ?」
コウタ「いま、高等部のセンパイは横須賀で訓練をしてるから不在だし、中等部のセンパイも毎回出撃できるわけじゃないし⋯⋯」
アコヤちゃん、マドノちゃん、コウタが話しているとき、ミサキは「だけど⋯⋯」と声を上げる。
ミサキ「どうして、サードレギオンは秘密主義なんです? お姉さまは他の人としゃべったりしていましたのに」
アコヤ「ミナトセンパイは実力もあったけど、秘密主義のサードレギオンを代表して、コーストガードの会議に出る役目もあったの」
マドノ「ミナト様は、サードレギオンに入る前から有名だったからね」
コウタ「ミサキは小学4年生のときアカデミーに転校してきたから、ミナトセンパイがどう過ごしていたのか知らないのか」
この会話で、ミサキが小学4年生になってアカデミーに転校してきたことや、ミナトさんがアカデミーで有名なこともわかる。
バーソルフ「まさか、初等部の生徒から選ぶつもりか?」
1階のライトが暗くなって、2階の上手にいるバーソルフが切り出す。
シキシマ「ひとりだけいる。 サードレギオンに合う素質を持った子が」
カルフーン「それなら心当たりがある」
バーソルフとシキシマの会話に割り込んだカルフーンが、1階の中央に居るミサキの方へ顔を向ける。
バーソルフ「メンバーにしたいのは、海野ミナトの弟か」
バーソルフに聞かれ「ああ」と答えるシキシマ。
バーソルフ「海野ミサキ。 4年生になるタイミングで、一般の小学校からアカデミーの初等部へ転校してきた生徒だな」
カルフーン「訓練の成績は普通。 ベゼルを扱うとき、スピンさせたり回したりするクセがある、これは欠点にならないか?」
シキシマ「ベゼルを回すのは、ミナトもやっていたルーティンだ。 見方を変えれば、自分の手足のようにベゼルをコントロールできるということになる」
再び1階を照らすライトが明るくなる。
コウタ「ぼくたち、どうすればいいんだろう」
コウタのつぶやきで、不安そうな表情になるミサキたち。
そんなとき、上手の方からももえ教官が歩いてきた。
ももえ「みんな、話は聞かせてもらったわ」
陽気なBGMと共に話し出す、ももえ教官。
ミサキ「いつからそこに?」
ももえ「アコヤちゃんがサードレギオンかぁってつぶやいてた辺りからね」
ミサキ「つまり最初からってことですわね」
ももえ「そのとおーり!」
冷静なミサキと明るいももえ教官のやり取り。
自分もふくめた観客席の人たちも、クスクスと笑っていた。
ももえ「その話は置いておいて、いまみんなにできることを伝えに来たのよ」
ミサキ「いまできること?」
ももえ教官は、首をかしげるミサキたちに、量産型ベゼルのひとつ『アカギ・シリーズ』を見せた。
ももえ「いまは、訓練を重ねてアビリティの覚醒を目指すのよ」
ミサキ「アビリティ⋯⋯」
アコヤ「ベゼルのコアが成長すると使えるようになる特殊能力ですね!」
マドノ「コアを成長させるには、多くの訓練や実戦を経験しなきゃいけないんですよね?」
コウタ「でも、アビリティが使えるようになれば、初等部のぼくらだってセンパイたちみたいに戦えるようになる」
ももえ教官の言葉からはじまり、この作品の設定がまたひとつ、ミサキたちの会話で説明される。
キズナコーストガードは、キャラクターたちの会話を通して、設定の説明をしてくれるんだ。
ミサキ「わかりました、ももえ先生。 わたくしたち、もっと訓練をがんばります」
ももえ「先生も、みんなを応援するわ!」
アコヤ「さっそく自主練しよ!」
マドノ「じゃあ、わたしはベゼルを取ってくるね」
コウタ「ぼくはシミュレーターを使えるようにしてくる」
みんなが下手の方に歩いて行き、ミサキも去ろうとしたときだった。
シキシマ「海野ミサキ、だな」
中央の段差を降りながら、シキシマがミサキを呼んだ。
ミサキ「あなたは⋯⋯」
シキシマに声をかけられ、おどろくミサキ。
シキシマ「きみに話がある」
ミサキ「わたくしに話、ですか?」
シキシマはミサキに近づき、ミサキの右肩に手を置く。
シキシマ「海野ミサキ、サードレギオンに入らないか?」
ミサキ「え⋯⋯」
ミサキはリーダーの言葉にとまどっていた。
そして、中央の段差に並んで座ったバーソルフとカルフーンが、ふたりを見ている。
カルフーン「いいんですか、兄さん」
バーソルフ「ああ。 ミサキをサードレギオンに参加させるのと同時に、サードレギオンの方針も変える」
カルフーン「どうなっても知りませんよ」
バーソルフとカルフーンに見られているとも知らずに、ミサキは返事に困っている様子だった。
ミサキ「わたくしが、サードレギオンで戦うなんてムリです」
シキシマ「なぜだ?」
ミサキ「わたくしはお姉さまみたいに強くないし、アビリティもない。 できるのは、ベゼルを回すくらいで⋯⋯」
シキシマ「得物を自在に扱う技量も、最前線で戦う者には必須だ」
ミサキ「でも⋯⋯」
うつむくミサキを見て、リーダーはため息をつく。
シキシマ「イヤか?」
ミサキ「⋯⋯というより、怖いんです」
ステージの照明がゆっくりと暗くなっていく。
「
言いながら、シキシマは被っていたヘルメットを脱ぐ。
ただし、照明はミサキを照らすスポットライトだけになったので、シキシマの顔は見えない。
ミサキ「やっぱり、あなたは⋯⋯」
シキシマの顔を見て、ミサキはシキシマの正体に気づいていた。
シキシマ「あのとき助けて以来だったな」
ミサキ「あのときのことは、感謝してもしきれませんが⋯⋯」
シキシマ「感謝の代わりに、サードレギオンに入るという選択肢もあるはずだ」
シキシマに詰め寄られたミサキが、やっと返事をするところで、スポットライトが暗くなった。
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