1週間後という字幕のあと、ステージが明るくなる。

 ステージの2階には、ミサキとほかの子供たちが集まっていた。

 

 アコヤ「あの時、そんなことがあったなんてね」

 

 ミサキの隣に立つアコヤちゃんが、おちこむミサキを見ていた。

 

 コウタ「ミナトセンパイは⋯⋯?」

 ミサキ「お姉さまは――」

 

 ミサキが階段を降りはじめると同時に、ステージの照明が暗くなって、ミサキを照らすスポットライトだけになる。

 ミサキが1階に降りてから、2階の中央にはももえ教官が立った。

 

 ミサキ「ももえ先生。 お姉さまは大丈夫なんですか!?」

 ももえ「命に別状は無いわ。 ケガもひどくはないし、2週間ほど入院すれば、また復帰できる」

 

 ももえ教官からミナトさんの様子を聞かされ、安心するミサキ。

 

 ももえ「ミナトさんはヘヴリングの自爆を至近距離で受けたけど、あなたのおかげで助かったのよ?」

 ミサキ「わたくしのおかげ⋯⋯?」

 

 ももえ教官の言葉に、ミサキは首をかしげる。

 

 ももえ「あなた、とっさに自分のベゼルを投げたでしょ? その時にベゼルのオートガードが発動して、バリアがミナトさんを守ったの」

 ミサキ「ヘヴリングを止めようとして投げただけなのに⋯⋯」

 ももえ「でも、あなたがいなかったらミナトさんは⋯⋯」

 

 ももえ教官を照らしていたスポットライトが消えて、2階の下手に集まるアコヤちゃんたちを照らす。

 

 アコヤ「ミナトさんが離脱しちゃったけど、サードレギオンはどうなるの?」

 マドノ「ミナト様が抜けたら、メンバーは4人になっちゃうよね?」

 コウタ「少ない人数で戦っていたチームだから、ミナトセンパイが抜けた穴は大きい」

 

 ミサキたちが2階の中心に移動しながら話している間に、1階にはももえ教官やサードレギオンのメンバーが集まる。

 

 ももえ「サードレギオンは4人になってしまったけど、これからどうするの?」

 シキシマ「これまで通り戦うだけだ。 代わりのメンバーはアカデミーか他の基地で見つけるしかない」

 

 ももえ教官とアーガスが話していると、2階の上手と下手に、ドラゴンのヘルメットをしたふたりのヒトが現れた。


 バーソルフ「ミナトの代わりとしてサードレギオンに参加させるメンバーは、シキシマに選ばせるつもりだ」

 カルフーン「そんなことをしていいんですか?」


 上手に立つ男のヒトは、バーソルフ。

 下手に立つ男のヒトは、バーソルフの弟のカルフーン。


 バーソルフ「高い能力を持った人をチームに加えるだけでは、サードレギオンは成長しないからな」

 カルフーン「なるほど」


 バーソルフとカルフーンは、それぞれ海の森コーストガードの司令と副司令をつとめている。

 

 シキシマ「オレたちは、まだ正体を明かすことができない。 それは理解しているだろう」

 ももえ「それでも、他のチームに協力を要請するべきよ」

 

 話しながら、シキシマとももえ教官はサードレギオンが集まる上手側へ歩いていく。


 ミサキ「お姉さまでも話せないことがあった、サードレギオン。 なぜ、あんなにも秘密主義なんでしょう」

 アコヤ「あたしたちにだってやれることはあるはずなのに」

 ミサキ「でも、ひとつだけ確かなことはありますわ」


 ミサキたちは段差を降りて1階に移動して、ステージの中心でミサキとシキシマが並んだ。

 

 シキシマ「コーストガードは、ラーンと戦い、世界を守る存在」

 ミサキ「コーストガードは街と人を守る最後の砦」


 きっかけも無く、だけど決められた通りに話し出すシキシマとミサキ。


 シキシマ「立ち止まることは許されない」

 ミサキ「わたくしたちが止まったら、だれがラーンと戦うの?」


 舞台上では、このふたりは同じ場所にいないはず。

 でも、交互にセリフを言っていた。


 シキシマ「だから、なにがあっても――」

 ミサキ「だから、どんなことがあっても――」

 

 ステージ全体の決められたポジションに、キャストたちが立つ。

 ここでやっと、舞台のプロローグが終わって――

 

 シキシマ「――オレたちは、絶対に退かない!」

 ミサキ「――わたくしたちは、絶対に負けませんわ!」

 

 ――ふたりのセリフを合図に、オープニングが始まったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る