6
1週間後という字幕のあと、ステージが明るくなる。
ステージの2階には、ミサキとほかの子供たちが集まっていた。
アコヤ「あの時、そんなことがあったなんてね」
ミサキの隣に立つアコヤちゃんが、おちこむミサキを見ていた。
コウタ「ミナトセンパイは⋯⋯?」
ミサキ「お姉さまは――」
ミサキが階段を降りはじめると同時に、ステージの照明が暗くなって、ミサキを照らすスポットライトだけになる。
ミサキが1階に降りてから、2階の中央にはももえ教官が立った。
ミサキ「ももえ先生。 お姉さまは大丈夫なんですか!?」
ももえ「命に別状は無いわ。 ケガもひどくはないし、2週間ほど入院すれば、また復帰できる」
ももえ教官からミナトさんの様子を聞かされ、安心するミサキ。
ももえ「ミナトさんはヘヴリングの自爆を至近距離で受けたけど、あなたのおかげで助かったのよ?」
ミサキ「わたくしのおかげ⋯⋯?」
ももえ教官の言葉に、ミサキは首をかしげる。
ももえ「あなた、とっさに自分のベゼルを投げたでしょ? その時にベゼルのオートガードが発動して、バリアがミナトさんを守ったの」
ミサキ「ヘヴリングを止めようとして投げただけなのに⋯⋯」
ももえ「でも、あなたがいなかったらミナトさんは⋯⋯」
ももえ教官を照らしていたスポットライトが消えて、2階の下手に集まるアコヤちゃんたちを照らす。
アコヤ「ミナトさんが離脱しちゃったけど、サードレギオンはどうなるの?」
マドノ「ミナト様が抜けたら、メンバーは4人になっちゃうよね?」
コウタ「少ない人数で戦っていたチームだから、ミナトセンパイが抜けた穴は大きい」
ミサキたちが2階の中心に移動しながら話している間に、1階にはももえ教官やサードレギオンのメンバーが集まる。
ももえ「サードレギオンは4人になってしまったけど、これからどうするの?」
シキシマ「これまで通り戦うだけだ。 代わりのメンバーはアカデミーか他の基地で見つけるしかない」
ももえ教官とアーガスが話していると、2階の上手と下手に、ドラゴンのヘルメットをしたふたりのヒトが現れた。
バーソルフ「ミナトの代わりとしてサードレギオンに参加させるメンバーは、シキシマに選ばせるつもりだ」
カルフーン「そんなことをしていいんですか?」
上手に立つ男のヒトは、バーソルフ。
下手に立つ男のヒトは、バーソルフの弟のカルフーン。
バーソルフ「高い能力を持った人をチームに加えるだけでは、サードレギオンは成長しないからな」
カルフーン「なるほど」
バーソルフとカルフーンは、それぞれ海の森コーストガードの司令と副司令をつとめている。
シキシマ「オレたちは、まだ正体を明かすことができない。 それは理解しているだろう」
ももえ「それでも、他のチームに協力を要請するべきよ」
話しながら、シキシマとももえ教官はサードレギオンが集まる上手側へ歩いていく。
ミサキ「お姉さまでも話せないことがあった、サードレギオン。 なぜ、あんなにも秘密主義なんでしょう」
アコヤ「あたしたちにだってやれることはあるはずなのに」
ミサキ「でも、ひとつだけ確かなことはありますわ」
ミサキたちは段差を降りて1階に移動して、ステージの中心でミサキとシキシマが並んだ。
シキシマ「コーストガードは、ラーンと戦い、世界を守る存在」
ミサキ「コーストガードは街と人を守る最後の砦」
きっかけも無く、だけど決められた通りに話し出すシキシマとミサキ。
シキシマ「立ち止まることは許されない」
ミサキ「わたくしたちが止まったら、だれがラーンと戦うの?」
舞台上では、このふたりは同じ場所にいないはず。
でも、交互にセリフを言っていた。
シキシマ「だから、なにがあっても――」
ミサキ「だから、どんなことがあっても――」
ステージ全体の決められたポジションに、キャストたちが立つ。
ここでやっと、舞台のプロローグが終わって――
シキシマ「――オレたちは、絶対に退かない!」
ミサキ「――わたくしたちは、絶対に負けませんわ!」
――ふたりのセリフを合図に、オープニングが始まったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます