「大海原の激闘」
下から凄まじい力でアーケオは水しぶきとともに空中に投げ出された。飛ばされる寸前でアーケオは剣を構えて、衝撃に備えた。
「うわあああ!」
「アーケオ様!」
マシュロの悲鳴を置いていくくらい高く飛ばされた。そして、そのまま海面に向かって、落下し始めた。その中、ロギスタが縦に大きく口を開いた。彼を飲み込もうとしているのだ。黄ばんだ鋭い牙と目頭が痛くなるような強烈な悪臭が伝わってくる。
アーケオは即座に剣を構えて、斬りかかる態勢に変えた。すると身の危険を感じたのか、ロギスタが海の中に潜った。
アーケオは態勢を垂直にして、なるべく体に負担がかかりにくい状態で着水した。凄まじい勢いで水中に入ったため、周囲が泡で包まれる。視界が遮られている状態のため、何もできない。
アーケオは辺りを見渡すとロギスタが巨大な口を開けて、真下からやって来たのだ。驚きのあまり、口から泡を吹きながら剣を構えた。剣に力を込めて、黄金に光らせる。
斬撃が口元に見事、直撃した。ロギスタが口と頭部から血を流しながら、再び潜水していった。アーケオは今のうちに海面に浮上した。
「アーケオ様!」
マシュロがアーケオに気づいて、慌てた様子でロープを投げて来た。捕まろうとした時、背後から凄まじい水飛沫と水面から何かが飛び出す音が聞こえた。
「グアアアアア!」
斬撃で額から血を流したロギスタが水面から飛び上がってアーケオに襲いかかろうとしていたのだ。その時、ロギスタの両目から血が吹き出た。
「我が主人に手を出すな! 痴れ者が!」
マシュロが投げたナイフがロギスタの両目を突き刺したのだ。
「グオオオ!」
右目を負傷したロギスタが叫び声を上げながら、泳ぎながらのたうち回っている。アーケオはロギスタの元まで急いで、泳いだ。
その時、ロギスタの体が徐々に深海の方へ向いている事に気づいた。
「させるか!」
「アーケオ様! お辞めください! 危険です!」
マシュロの忠告を無視してアーケオは潜水寸前のロギスタの左目に刺さっていたナイフを掴んだ。そして、そのまま、潜水を始めた。凄まじい勢いで水面から離れていく。
水流の強さで何度も引き剥がされそうになったが、必死に食らいついた。アーケオの狙いは動きが緩やかなになった瞬間に斬撃をもう一度、斬撃を打ち込むことだ。もしくは脳天にこの剣を突き立てるかの二点だ。
どちらにしろ早くしなければ彼の息が持たない。アーケオは手に持ったナイフに力を入れて、押し込んだ。ロギスタの泳ぐ速度が上がった。同時に体を不規則に動かし始めた。おそらく邪魔者であるアーケオを振るい落とそうとしているのだ。
アーケオは動けずにいた。動こうとしても水流があまりに強すぎて、引き剥がされる恐れがあるのだ。
アーケオの作戦はどちらも現状、不可能に近いものだ。酸素が薄くなってきた彼の頭にとある案が浮かんだ。
もしこれが出来れば、今の状態でこの怪物を討伐出来る。
アーケオは賭けに出ることにした。手に持っているマシュロのナイフに力を込めた。
するとマシュロのナイフが黄金に輝き始めたのだ。アーケオの考えはマシュロのナイフを勇者の武器に変えてしまおうというものだった。
「オオオオオオオオオオ!」
脳と目を負傷したロギスタが水中で血を噴き出しながら低いうめき声を上げた。アーケオは力を込めて、抵抗するロギスタに抗っていく。
アーケオはさらに力を込めて、ナイフを押し込んだ。ロギスタが叫び声を上げて、全身を小刻みに震わせた後、動かなくなった。
勝利を確信した後、アーケオの意識が遠くなり始めた。ロギスタの勝利で体の力が緩んで息が苦しいことを忘れていたのだ。浮上しようにもそんな体力は残っていなかった。
薄れゆく視界の中、誰かがこちらに泳いできたのが分かったが、確認する前に意識が闇に落ちた。
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